第16話(1)
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いつの間にかソファの上で眠っていた要は、玄関のチャイムで目を覚ました。
インターフォンを覗きこむと、カメラに向かって手を振っている歌穂が映っている。
要は「なに?」と欠伸をしながら言うと、歌穂は「ごはん、作りにきた」と、買い物袋を持ち上げた。
「今日、ばあちゃんが来るはずだったと思ったけど?」
「お祖母様、今日は演劇鑑賞だって」
要は「ああ、そういえば言ってたな」と呟き、再び画面を見て「今日は何?」と訊ねた。
「野菜たっぷりラーメン」
「よし、出入りを許可する」
「なにそれ」歌穂は笑いながら画面から消えた。
要は玄関の鍵を開けると再びリビングに戻り、ソファの上に寝そべり、目を閉じた。
しばらくして、玄関のドアが開く音が聞こえ、部屋に入ってきた歌穂が、部屋の電気を付ける。蛍光灯の青白い光りに、要は顔をしかめた。
「はい」
近くに聞こえる声に要が顔を上げると、いつの間にか歌穂が目の前に立っていた。白い封筒を手に持ち、要に差し出している。要は「なにこれ」と言いながら受け取ると、瞬時に顔を顰めた。
「今日、うちのお母さんがカナちゃんちに行ったんだって。それで、おばさんから手紙預かってきたんだって」
「あっそ」
要は面倒臭そうに言うと、封を開けずにテーブルに投げ置いた。それを見ていた歌穂は「ちゃんと読みなさいよ」と言いながら台所へ向かう。要は歌穂に聞こえるか聞こえないかというほど小さな声で「うるせえ」と呟いた。
台所から水の流れる音が聞こえてくる。次に、規則正しいリズミカルな音が部屋に響く。野菜を切る音に合わせて、歌穂のか細い鼻歌が混じって聞こえる。
要はカウンターキッチンに立つ歌穂を振り向いた。
歌穂は勝手知ったる他人の家、と言わんばかりに、流れるように動いている。道具の在処も食器の在処も調味料の在処も、全て分かっているため、動きが止まることはない。全ての動きに無駄が無く、まるでダンスをするように、くるくると動く。
要は、ふと、いつからここへ歌穂が料理をしに来るようになったのかを思い出していた。
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