第15話(3)
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数日後ーーーー
一クラス分のノートを抱えながら、歌穂は教室へ戻る途中だった。
渡り廊下を歩いていると、中庭の方から聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。何気なく目を向けると、要が腹を抱えて大笑いをしている。その隣には、背の低い男子生徒が一人と、身体付きのしっかりした男子生徒が二人居て、要同様、手を叩いて笑っていた。
歌穂は立ち止まったまま、ぽかん口を開けて、その光景を眺めた。
要たちは一通り笑い終えると、再び何かを話して笑い出した。
「カナちゃんが、大笑いしてる……?」
歌穂は信じられないとでも言うように、頭を横に振り、訝しむように眉間に皺を寄せた。
要がどこかで喧嘩をしてきて以来、要の周りには数人の男子が一緒にいることが多くなった。今まで、一匹狼のように一人で行動し、ことある事にクラスメイトと喧嘩をし、孤立していた要が、だ。誰も寄せ付けない空気を漂わせていた、あの要が、どういう風の吹き回しか、同級生と上手くやっている。それは、とても喜ばしいことではあったが、一体何があり要に心の変化をもたらしたのか、歌穂には分からなかった。
要が大笑いをしている姿を見た、その放課後。歌穂は再び渡り廊下を歩いていると、前から要と背の低い男子生徒が歩いてきた。
「あ、」と歌穂が小さく呟くと、要は前から来る歌穂に気がついた。今まで学校では見せたことのない穏やかな表情で微笑むと、歌穂に軽く手を挙げた。歌穂が口を開こうとすると、要は立ち止まろうともせず、何も言わずに歌穂の脇を通り過ぎていった。歌穂が立ち止まり振り向くと、背の低い男子生徒が「知り合い?」と訊ねていた。要は「そ、幼なじみ」と返事をしていた。要は振り向くことなく立ち去った。
初めてのことだった。
中学の頃から、廊下ですれ違っても、挨拶をするのは歌穂の方からで、要はそれを無視して立ち去っていた。家に行くと、要は決まってこう言った。
「学校で話しかけるな。お前まで無視されるぞ」
別に構わないし、気にしないと言っても、「俺が気にするから」と言って、顔を歪めた。そう言っていた要が、声はかけないものの、手を挙げて挨拶をしてきたのだ。その事実が、歌穂には嬉しくてたまらなかった。
その日の夕方、歌穂は要の家へ行き、夕飯の支度をしながら、一緒にいた男子生徒が誰だったのかを訊ねた。要は「二戸神だよ。前の席で、すっげえ良い奴」と答えた。
それから何度か要が楽しげに会話をしている所を見かけるようになった。要が大嫌いな体育の授業でも、どこか楽しげで、日に日に要の周りの空気が優しいものに変わっているように感じた。それは、最近よく一緒にいる二戸神という男子生徒が持っている穏やかな空気に似ている。
遠目から少し観察しただけでも、彼の人の良さが窺える。二戸神の周りには、常に人が居た。彼は誰に対しても平等に対応しているように見える。要が人を誉めることは無い。むしろ、人間嫌いとも思えるほどの彼が、一緒にいると言うことは、本当に「良い奴」なのだろうと、歌穂は思った。
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