第15話(2)
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五人は顔を見合わせると、祐介が頷いた。
「たまたま、あいつらの話し聞いたんだ。僕、今日、理科室の掃除当番でさ。ゴミ捨てに行くとき、体育館裏で話ししてるの、たまたま聞いたんだ。ゴミ捨て終わって教室戻ったら、もうホームルーム終わってて。要も居なかったし。それで、慌てて追いかけようとしたら、堀田が声をかけてくれたんだ」
「普段、落ち着いてる奴が、血相変えてやけに慌ててる。こりゃ、何かあったな、と思ってね。そしたら、お前が上級生に襲われるって。しかも相手は何人もいるって、二戸神が言うからさ。俺、そういうアンフェアなの嫌いなんだよ」
堀田は苦い食べ物でも口にしたかのように顔を歪ませる。
「それで、堀田が川崎たちに声かけてくれたんだ。本当に助かったよ。僕一人じゃ、七人も相手に出来なかった」
祐介はいつもの穏やかな表情で要を見た。
「そう言うことで、礼なら二戸神に言えよ。俺らは、お前の為じゃなくて、二戸神のために行ったようなもんだ。まさか、こんなひ弱そうに見える二戸神くんが、強いとは思いもしなかったしな」
そう言うと、堀田は八重歯を見せて笑う。口では憎まれ口とも取れるような言い方をしていたが、堀田を含め、川崎も中村も田川も、穏やかな表情で要に向けており、悪態の混ざる様な心の声は一切、聞こえては来なかった。
「ありがとう」
要は俯き、小さな声で言った。だが、その「ありがとう」は心がこもった、暖かい声だった。
祐介達は顔を見合わせ微笑む。
「さあ、早く帰ろう」と、祐介の優しい声が響く。
「そうだな。さっさと戻って、藤森はシャワー浴びろ。何をかけられたんだか知らねえけど、えらい臭ぇぞ」
堀田が大きな声で言うと、竹刀を要に向けた。
「ほら、掴めよ。自力で歩けないなら、俺が引っ張ってやるぜ?」
要は竹刀の先を見つめると、徐々に笑みを浮かべ、最終的には満面な笑みを浮かべた。要が竹刀の先を掴むと、堀田は前を向いて力強く歩き出す。だらけるように歩く要に「藤森、おまえ、見た目より重いな」と堀田は笑いながら文句を言った。
みんなが笑い声を上げ、要もそれに合わせて、声を出して笑った。今まで味わったことのない暖かな気持ちに、先ほどまでの気持ち悪さはいつの間にか消えている。初めての感覚。名前も知らない感情が、要の心を満たしていく気がした。
要は祐介をちらりと見た。何かの思い違いだったのだと思えるほど、隣を歩く祐介からは、なんの不快も感じない。楽しげに笑う祐介の笑い声は、先ほど見えたヴィジョンをどこか遠くへ追いやった。
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