第12話
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
今回は分割せずいつもより、少し長めです。
祐介が教室へ戻った頃には、要はすでにいなかった。
「あいつ、早いよ」
そう呟くと、祐介は急いで帰り支度をした。
「珍しいな。二戸神が慌ててる姿って」
祐介はちらりと目を上げると、背の高い男子生徒が目の前に立っていた。クラスメイトの堀田だ。
堀田は八重歯を見せて笑った。しかしその笑顔は、祐介の顔をまじまじと見るや否や、訝しげな表情に変わった。
「何かあったかよ。顔色、悪いぞ?」
「堀田……」
祐介は堀田の顔をじっと見つめた。真っ直ぐに見つめられた堀田は、切れ長で猫のような目を瞬きさせ、戸惑ったように祐介を見つめかえす。
「なに?どうしたんだよ。なんか、顔についてるか?」そう言って、自分の頬に大きな手を当てた。
「堀田って、武道やってたよね?」
「へ?あ、ああ。剣道だけど。それが何?」
「強い?」
「まあ、それなりに?」
「じゃあ、手伝って」
「何を?」
「藤森奪還」
「はあ?」
祐介から手短に説明を受けた堀田が起こした次の行動は、とても早かった。相手が五人ならば、こちらも同等の人数でなければフェアじゃないと言って、直ぐさま教室に残っていた数名の男子生徒に声をかけた。人望のある堀田の声に、腕に自信のある生徒が近寄ってきた。喧嘩と聞いて、ぽきぽきと手の骨を鳴らし、にやつく生徒もいたが、そういった生徒は誘わず、同じ剣道部の生徒一名と、がたいの良いラグビー部員を連れ出した。
「場所がどこだか分かるのか?」
剣道部の部室へ立ちより、竹刀を持った堀田の顔つきは、教室で見せるお調子者の顔つきではなかった。切れ長な目が、いかにも武道家らしく見える。
「武器、持って行くの?」
祐介は心なしか心配そうな顔で言った。
「相手が使えば、こちらも使う」
「手荒なことは避けたいなあ」
「奪還となると、そうそう優しくないぞ?」
堀田はにやりと笑うと、背の低い祐介の頭をポンポンと軽く叩いた。
「みんな……ごめんな、なんか。ありがとう」
「礼なんかいらねぇよ。それに、まだ助けてねぇしな」
堀田は気持ちの良い笑い声を上げた。
「でも、なんで……」
祐介は頼んだものの、みんなが協力してくれるとは思いもせず、内心驚いていた。堀田の呼びかけで集まった男子生徒を見回す。
「そりゃあ、今日のお前の演説聴いたらなぁ」と、堀田が笑みを浮かべながら言うと、ほかの生徒もはにかみながら頷いた。
「俺らだって、あいつが嫌いなわけじゃないしな」
「そっか」
「こんな和んでる場合じゃないな。急ごう」
そう言うと、堀田が先頭を切って走り出した。
「ところで、場所はどこだよ?」
走りながら、ラグビー部の川崎という生徒が訊いてきた。
「わからない」
「知らないで、俺たちはどこに向かって走ってんだよ」同じくラグビー部の田川という生徒が声を上げた。
「がたいの良い生徒って言ってたよな?」
堀田が横目で祐介を見て言った。
「そう。先輩っぽかった」
「と、なれば。廃部寸前、名前だけ柔道部の部員だろ」
堀田が言うと、すかさず剣道部の中村という生徒が言った。
「あいつらが行きそうな場所と言えば、市民体育館裏だな」
「ああ、あそこは柔道部の溜まり場だ」と安永が頷いた。
「そう言うことだ」
堀田が力強く言うと、四人は走る速度を上げた。それに合わせて、祐介も速度を上げて走った。
間に合ってくれ、と心の中で祈りながら。
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