第10話(1)
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祐介は焼却炉に辿り着くと、大きく息を吸い込んだ。
「外は空気が良い」
要はその言葉には同意しなかった。正確には同意できなかった。
その場は、焼却炉から香る焦げ臭さの方が強く、お世辞にも空気がいいとは言い難かった。離れた別の場所であれば、同意したかもしれない。雲はあるものの、天気はいい。
要は祐介の背中を見つめたまま、黙って観察をしていた。先ほどすれ違った際には、確かに感じていた「怒り」は、今は全く感じない。要は自分が身構えているのを感じていた。知り合って二ヶ月。祐介の人となりに、好感を持っては居たが、まだ完全には警戒心を解いたわけではなかった。祐介の周りには、常に人が集まる。誰もが、彼の穏やかな性格に惹かれるのだろう。まるで癒しを求めるかのように、何を話すわけでもなく、ただ側に寄ってくる者もいた。そういう時は、当然、要は側に寄らない。遠巻きでそれを眺めるか、大抵は屋上へ行ってしまう。
祐介は誰隔てなく、同じ態度を取っていた。来る者を拒まず、去る者は追わず。だが、彼から誰かに近寄ることはなかった。接し始めて二週間目で、要はその事に気がついた。そんな彼が、こうして誰かを呼び出し、連れ出すことは、要の知る限り、初めての行為だった。
祐介はくるりと振り向くと、にっこりと愛嬌のある笑顔を見せた。要はその笑顔には答えず、黙って見返しているだけ。祐介は、要の凝り固まった表情を見て、困ったように微笑んだ。
「僕はね、自分の友達が嫌な思いをしているのを見るのが、本当に嫌なんだ。まあ、普通の人なら、誰でもそうだろうけどね」
祐介はゆっくりと、話しを始めた。普段から穏やかな話し方をする奴だ、と要は思っていたが、今日の祐介は、やけに噛み締めるように、ゆっくりと話しをしている。
「さっきは、本当に腹が立った。藤森が怒るのは当たり前だ。みんなだって、藤森のこと分かってるくせに、なんであんな態度を取るのか、僕にはさっぱり意味が分からない」
そう言うと、祐介はブレザーのポケットから先ほどノートから切り取った数枚の紙と、ペンを二本取り出した。
「さ、藤森も一緒に書こう」と言って、要に紙とペンを差し出した。
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