第8話(3)
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「もし、腹の立つことがあって、人に話すとしよう。話したら、自分はすっきりするかも知れない。でも、それを聞いた相手は、とても気分が悪くなるんだ。言葉には『毒』が混ざることがあるんだ。その『毒』を、気づかずに、腹が立ったこと全部を人に話してしまうと、時間が経って、再び自分も気分が悪くなるんだ」
「話して、すっきりしたのに?」
「そう。副作用があるんだよ。『毒』を吐き出すと言うことには、大きなリスクを伴う。話せば話すほど、腹が立ってくるという、副作用がね」
「どうしたら、気持ち悪くならなくなるの?」
「腹の立ったことを、紙に書く。自分が思ったこと、人に言われて嫌だったこと、全部だ」
「全部?」
「そう。全部。書く順番なんてきにしなくていい。ちゃんとした文章じゃなくても良いんだよ。思いの丈を書ききるんだ。暴言でもなんでも」
「書いたら、どうするの?」
「燃やす」
「燃やすの?」
「そう。燃やすと、心がすっきりする。完全に燃えたら、水で綺麗に流す。そうすると、心が綺麗になって、腹が立っていたことが嘘みたいにすっきりする」
「でも、お父さん。火を使うのは危ないよ」
その言葉に、養父は、もっともだ、と言わんばかりに頷き、声を上げて笑った。
「そうだな。今はまだ危ないから、祐介が大きくなるまで、燃やすときはお母さんに付き合ってもらうと良い。お父さんも付き合うぞ」
「そうだね。そうする」
「万が一、それでも心が晴れなかったら、もう一つ手がある」
「なに?」
「大声で叫べ」
「なんて?」
そう訊ねると、養父は突然立ち上がり、大きく息を吸い込むと、大声で「うおおお」と叫んだ。
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以来、祐介は燃やさないまでも、紙に書いて破いて捨てるようにしていた。それだけでも、書いているうちに心が冷静さを取り戻し、落ち着き始める。どうしようもない時は、燃やしてみて、それでも駄目な時は、とことん、相手と話し合うようにしている。とは言っても、そこまでになったことは、殆ど無い。大抵が、燃やす、止まりだ。それだけで、十分、心が晴れる。
そして、心が晴れる要素の一つに、養父の雄叫びが祐介を助けているのかも知れない。紙に思いの丈を書いていると、必ずと言っていいほど、養父が大声を出したときの様子を思い出した。
突然の叫び声、拳を作った両腕を天に高く突き上げ、顔をくしゃくしゃに叫んだ姿だ。
普段、穏やかで怒ることもない養父の豹変振りに、祐介は大いに驚いた。そして、養父は「な?すっきりして気持ち良いだろ?」と、叫んでいない祐介に満面な笑顔を見せた。それが、何ともおかしかったのだ。思いの丈を書ききる頃、必ずその時の笑顔が頭に浮かんだ。
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