第7話(1)
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教室に入ると、一気に空気が変わった。さざ波のようにざわざわと囁き出す。
「もしかして、噂の……」
「潔癖性の人でしょう?」
「ちょっとでも触れると、怒るんだって。偶然ぶつかっても怒鳴られるのかな?怖くない?」
「ちょっと顔良いんだけどさあ、手袋までして、ちょっと異常だよね?」
「もったいない感じ?」
「一年の頃あいつに触って激怒されたあげく、秘密を暴露するって脅された奴がいたんだって」
「そいつの話によると、かなりやばい連中と付き合ってるらしいぜ」
「噂では、ヤクザ関係だって話だ」
「秘密なんかねえって言ったら、大声で恥ずかしいこと言われたって奴もいる」
「マジ、やばいよ。あいつ」
続いて聞こえてくるのは、中学でもお馴染みだった心の「言葉」たち。
『俺の前、または後ろの席じゃありませんように』
『面倒臭い奴が一緒のクラスか。ホント、めんどくせえ』
『来るな来るな、こっちへ来るな』
要は「誰がお前に近寄るか、ばあか。めんどくせえだ?そりゃあ、こっちの台詞だ、あほ」と心の中で毒づきながら、教卓の上に置かれていた座席表を確認すると、教室の一番後ろの席へ移動した。自分が触れないように気をつけなくても、相手から離れていくので一年の頃よりは楽だ。
席に座ると、教室中が何事もなかったように騒がしくなった。
要は自分の目の前の席を見つめた。まだニコガミくんは来ていない。どうせ、ここにいる全員と大して変わりない反応をするのだろう。
要は机の上にうつ伏せ、時が過ぎるのをじっと待った。
突然、机がガタリと動き、何かが当たり、驚いて顔を上げる。どうやら、前の席のニコガミくんが椅子を引いた拍子に要の机に当たったようだ。
「ごめん、起こしちゃったね」
申し訳なさそうに眉間に皺を寄せ謝る男を、要は上目遣いで睨み付けるように見つめた。
本当に申し訳ないとしか思っていない様子だった。
「いいよ、別に」
要は自分の机を少し後ろに引いた。
「ありがとう」
ニコガミくんは、穏やかな笑みを見せ、静かに椅子に座った。
今の遣り取りを、誰もが静かに見守っていた。運悪く、生け贄となったニコガミくんに同情でもするかのように、誰もが哀れみを帯びた目で彼を見ている。
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