表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】Memory lane 記憶の旅  作者: 星野木 佐ノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/113

第6話(4)

いつも読んで頂き、ありがとうございます。




 要は、自ら家を出て行くことを決意した。父親にその事を告げると、父親は猛反対をした。そして、普段滅多に触れることのない要の身体に触れ、怒りや悲しみやらで赤黒くなった顔を近づけた。


「いいか、要。どんなことがあっても、自分から命を絶っては駄目だ」


 どうして分かったのだろ、と思った。その時の父親の「心の声」は、悲鳴に近い声で、泣いていた。そして、家族が楽しく暮らしていた頃の父親の「過去の記憶」が、要の頭に流れ始めた。暖かい記憶で、涙が溢れた。


「お父さん、僕は大丈夫。僕は死なないよ。死なないから。でもね、僕は行かなきゃ。お父さんはお母さんと竜太を守ってあげて。僕は大丈夫。大丈夫だから」


 泣きながら何度も何度も説得をした。父親が納得するまで、何度も何度も。要の思いが通じると、父親は要専用のマンションを買い与えた。家から遠い場所ではない。マンションの自分の部屋から、家の屋根を見ることも出来た。なのに、要にとってはどこの世界よりも遠い場所に思えた。


「母さんが元気になるまで、しばらくの辛抱だ。毎日、父さんが行く。おばあちゃんにも来てもらう。ご飯の支度や掃除をしにね。要、私たちは、本当にお前を愛しているんだよ。お前は大事な家族だ」


 その時の父親の「心の声」を、要は今でもよく覚えている。口に出した言葉と、何一つ違うことのない、心の底から自分を愛してくれている、本当の言葉だった。

 この一年、憎しみと悲しみの声しか聞こえてこなかった父親の心。このたった一言で、要は生きていることを許された気がした。

 中学に上がると、TVに出る前まで過ごした小学校の頃の幼なじみだった佐伯歌穂(さえき かほ)と再会をした。歌穂は父親の出張で引っ越してきたのだと言った。要はあの地獄の日々を思い出し恐れたが、要の過去について歌穂は誰にも口外することはなかった。後に、歌穂を恐れていたことを言うと、歌穂は顔を赤くして怒った。


「私、一度だってカナちゃんを怖がったこと無いでしょう。それに、人が嫌だなと思ってることをしようと思うほど、暇じゃないの」


 その言葉を聞いて、よくよく思い返してみた。確かに、歌穂は一度も要を怖がったことがなかった。それどころか、学校中が敵に回っても歌穂だけがいつでも側にいてくれた。気がつけば、今でも側にいる。


 一人暮らしを始めて、今年で五年目になる。


 死のうと決意してから、五年。まだ生きている。自分を恐れずに側にいてくれる歌穂という存在、そして父親と可愛い弟。五年間まだ一度も会っていない母親も、今は元気だ。要の周りの空気が、少しずつ、幸せだった頃の空気に近づいている。このまま、静かに暮らしていくことが出来れば、他に何もいらない。そう、思っていた。




最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


同時進行でbooks & cafeが舞台の現代恋愛小説

『光の或る方へ』更新中!

https://book1.adouzi.eu.org/n0998hv/


「続きが気になる」という方はブックマークや☆など今後の励みになりますので、応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ