第6話(2)
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クラス分け表を確認すると、歌穂は少し離れた位置にいた要の側に寄った。
「残念。今回は別々だわ。私がC組でカナちゃんはG組。クラスもだいぶ遠のいたわね」
「Gね。サンキュ。あ、俺の前後、誰だったか名前見た?」
「ええ。前がニコガミって読むのかな?漢数字の二に、戸棚の戸、神様の神って書いて。ニコガミユウスケくん。後ろが堀田くん」
「堀田か。あいつは一年の時、一緒だったから。まあ、大丈夫だな。問題はニコガミって奴か。良い奴だといいけど」
要が腕を組みながら深く息を吐き出すと、歌穂は小鳥が鳴くような高い綺麗な声で笑った。
「カナちゃんの言う、良い奴って、どんな意味で?」
要は口角を下げ、おどけるように両肩を軽く上げると「俺の言うことを聞く奴?」と言った。
その言葉に、歌穂は苦笑した。
「まあ、取り敢えずは、罵詈雑言を吐かない奴かな。目の前でそれやられると、鬱陶しくて授業に集中できないし。その点、後ろの堀田は酷くないのを知ってるから、安心」
「両脇の人は?」
歌穂の問に、要は顔を歪めながら「まあ、今のところ、目の前が一番キーかな」と答えた。
要には、誰にも知られたくない秘密があった。秘密なんてものは、生きていれば誰でも持っているものだが、要の秘密は、「本当に秘密事」だった。よく「誰にも言っちゃ駄目だよ?」と言いながら、自分の秘密をぺらぺら他人に話す人間もいるが、そんなことが出来るほど安い秘密ではなかった。
要には、他人の「心の声」を「聞き」、その人にとって誰にも知られたくない秘密や過去の記憶を「見る」事が出来た。
大抵は、要自身が他人に手で触れる、もしくは、他人が要の身体に触れるなどした時に、触れた人物の「心の声」や「過去の記憶」を見る。だが、「増悪」の「声」については別だった。身体に触れなくても、直接聞こえてくる。憎しみが強ければ強いほど、大声で。ちょっとした悪態程度であれば、囁くような声で聞こえてくる。
ちょっとでも触れれば、近い過去が見え、長く触れれば触れるほど、近い過去から順に、まるで走馬燈のように他人の記憶が要の頭の中に流れ込む。
手袋をはめているのは、少しでも人に触れないためだった。とはいえ、はめているからと言って遮断されるわけではない。単なる気休めだ。手袋をすることで、もしかしたら、見えにくくなるかもしれない、という願望も込められている。そして、他人にも自分になるべく触れさせないよう、「自分は異常なまでの潔癖性だ」と公言している。
しかし、これでも子供の頃に比べたら、力はだいぶ弱くなっていた。
子供の頃は、触れなくても何もかもが「聞こえて」いた。良いことも、悪いことも、全て。口を動かして話している声なのか、心の声なのか、区別が着かないほど、はっきりと聞こえてきていた。
一番強かったのは、小学一年生から四年生までの間だった。小学四年の頃、要は一度だけ、TVに出たことがあった。天才超能力少年として。おもしろ半分で親戚の叔父が、要をテレビ局に売ったのだ。両親も要自身も嫌がったが、TV局と叔父の言葉に、要の子供ながらに持っていた闘争心に火を付けた。
「なんだ、やはりデマですか」
「子供はすぐに嘘を平気でつきますからね」
自らTVに出ると言った要に、両親は不安の色を濃くした。今後、この子供の行く末を、心から案じていたのだ。両親はTV局に名前と顔は出すなと交渉をし、TVに出た要は「少年Kくん」として、顔にはモザイクがかけられていた。しかし、要の声だけはそのままだった。
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