第5話(3)
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彼等は口々に持論を言った。要を信じるというものもいれば、全くの詐欺師扱いに言うものを居た。そんな中、詐欺師はお前だ、と心の中で悪態をつく母の声が、誰よりも大きく聞こえてきた。その声に、要は小さく微笑んだ。その笑みが、一人の霊媒師の癇に障ったようだ。挑戦的な笑みにでも見えたのだろう。
「折角ですから、読んでいただきましょうよ。私たちの心の声」
と、左の口角を捻りあげるようにして笑みを作り言うと、要を一瞥した。
司会者の意見も聞かず、段取りも何も無視をし、一人の霊媒師が恵竜の目の前に立った。屈むこともせず、見下ろすと「じゃあ、あの俳優さんから見てごらん」と、ゲスト席に座った一人の男優を指差した。
指名された男優は自分を指差して驚いた顔をしてみせた。
「いやぁ、参ったな。別に、ばらされちゃ困ることは無いけどさぁ」
と苦笑いをした。
要は男優の前に来ると、「手をかしてください」と、聞こえるか聞こえなきかの小さな声で言った。
男優は「どっちがいいかな?」と言いながら、両方の手をテーブルの上に置いた。要は男優の左手の甲に手をあてた。
すぐさまヴィジョンが流れ出す。
彼が言った通り、見えてくるヴィジョンは特別、嫌なことはなかった。
「何が見えるかな?」男優の手は微かに震えている。
要は手を放すと、男優の顔をまっすぐに見つめた。
「昨日の夜のごはん。家族で食べているのが見えました。楽しそうでした。女の子が、トマトを嫌い、お父さんにあげると言って、お父さんの皿に置いたら、それを見たお母さんが、なっちゃん、ちゃんと食べないさいと、注意していました」
スタジオがざわついた。
「家族……?それは、何の話かな?」
男優は微かにほほを引き攣らせて訊ねた。
「あなたの、家族でしょう?」
要は不思議そうに男優を見上げた。男優は微かに目を開いた。
「え?でも、独身でいらっしゃいましたよね」と、隣に座る女優が言った。
その言葉に我に返ったかのように男優は「ええ」と、腹筋を使ったはっきりとした声で返事をした。
「あははは。僕は未婚だよ?家族どころか、子供もいないんだけどなぁ。あははは、何か、見間違えちゃったのかな?まあ、僕もいい年だからね。そう見られちゃってもおかしくないか。あははは」
男優は空笑いをしてテーブルの上に置いていた手を引っ込めた。彼の笑いに、周りもどこか安心したような声で笑った。
「なんだ、やっぱり子供の嘘か」
そんな声が、そこら中から聞こえてきた。
「見えたまま言ったんだ。嘘じゃない」
要は無表情で答えた。
「相手が僕でよかった。他の人だったら、君は大変なことになっていたかもしれないよ?」
男優からは、動揺が見えなくなった。完璧な演技をする事に徹したかのようだ。その割に、要には触れようとはしなかった。
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