第48話
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
少し長いですが、分割せず投稿します。
宜しくお願いします。
生温い風が吹き抜け、要の柔らかい髪の毛が風に揺れる。
「俺はずっと、他人の事なんてどうでも良い、そう思って生きていた。触れて、そいつの過去が分かったところで、何が出来る訳じゃないし。その割に、曲がったことが嫌いなもんだから、見過ごすことが出来ない物を見てしまうと、つい言ってしまったりして。矛盾してるんだ……。たぶん、トラウマがそうさせているのかも知れないな」
「だから、僕のことにも協力してくれたの?」
要はベンチからゆっくり立ち上がると、「最初はね」と言い、ゆっくり振り向いた。
「でも、祐介の記憶を一緒に辿り始めて、考えが変わった。ここが……。この公園が、全ての始まりだ」
「え?」
「祐介と俺が、始めて遊んだ場所だ」
祐介は瞬きを繰り返した。大きな瞳が益々大きくなる。何かが脳裏を掠めた。光が走ったように、何かが蘇る。祐介は、自分の頭にそっと触れた。
要は祐介の様子に気づくことなく、苦笑した。
「本当は高校に行くとか外に出ること自体、嫌でさ。通信でって考えてた。でも、父親が猛反対してさ。お前はそうやって、一生外に出ないで生きていくつもりかって。この世で生きていく限り、良いことも悪いことも、誰にだってある。お前の体質が、いつか誰かの役に立つかも知れない。人と関わり合わずに生きる、そんな生き方は俺が許さん、とか言って。俺がこんな体質なのは、必ず何か意味があるんだから、お前を必要とする人達と出会うためにも、外に出てなくてはいけないんだってね。正直、最初は俺の気も知らないくせに、ふざけるなって思ったけど。何だかんだで、やっぱり外に出ることを俺は選んだ。そして、親父が言ったとおり、俺を必要としてくれてる人に出会えた」
「そうだ。……あの時、君が父さんを見て、悪い人じゃない、信用できるって言ったんだ」
要は祐介を見た。祐介は真っ直ぐ前を向いて、ゆっくりと何かを思い出すかのように、こめかみに手を当てたまま、言葉を続けた。
「子供の僕は、大人が怖かった。でも、一緒に遊んだ、名前も知らない君の言葉を、なぜだか僕は信じられた。あの時、君がああ言わなかったら、僕は父さんから逃げ出してた。こうやって、生きては居なかったかも知れない。あの時、君はちゃんと僕を助けてくれていたんだ……」
「祐介……?」
「……思い出したよ。あの、夏の日のこと」
ゆっくりと手を膝の上に下ろすと、祐介は穏やかな表情で要を見た。
「ありがとう、要」
驚きで、発する言葉が見つからず、取りあえず、微笑んで見せた。が、要の顔は、今にも泣き出しそうな、それと同時に嬉しそうでもあり、なんとも複雑な表情だった。それを見て、祐介は声を立てて笑った。
空を抜けるような祐介の笑い声が、公園に溢れ、釣られるように要も声を上げて笑ったが、頬には涙が零れ落ちた。
祐介の記憶が戻ったのは、ほんの一部だった。それも、要とあの公園で遊んだときのことのみ。それ以上、何かを思い出す気配はなかった。だが、この記憶を引き金に、もしかしたら、いつの日か全てを思い出すかも知れない。辛すぎる記憶だ。
要は祐介に記憶を消した方が良いのでは、と言った。宗介に頼めば、きっと消すことは可能だろう。だが、祐介は記憶を消そうとはしなかった。「どんな記憶も、自分にとっては大事なものだから」と、困ったように微笑んだ。
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