第47話(2)
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
昨日投稿した第47話(1)に編集誤りがあり、投稿し直しております。読んで頂いている皆さま、申し訳ございません。前話から読んで頂けると幸いです。
ご迷惑をお掛けし、すみません。
「触らないでも、相手の目を見ただけで、考えてることが分かったんだ。頭で考えてることが、俺の目に映るっていうかさ。今は、そんな力ないけど。多分、そん時が一番ピークだったかも」
「TVに出てた頃は?」
祐介の質問に、要は小さく首を振った。
「あの時は、良いのも悪いのも、考えを聞き取ることは出来たけど、考えてる映像は、その人に触らないと見えなくなってた」
「そうなんだ。でも、考えが聞こえるだけでも大変だったんじゃない?色々」
祐介は要の横顔を見ながら言った。要は真っ直ぐ前を向いたまま小さく顎を引く。
「一番大変だったのは、テストの時。自分が考える前に、他人が考えた答えが次々聞こえてくるから、自分の答えが書けなかった。苦肉の策として、一番最後の問題から解くようになった。それでも、中間辺りに来ると、またかち合うんだよ。だから、今度は一番最初の問題を解いて、最後に中間の問題を解いた。それでも、幾つかの問題は、自分が考えるよりも先に、他人の答えを覚えててさ。自分が解いたんじゃないから、答えを書けなくて。もし俺が、要領が良くてずる賢くて、負けず嫌いじゃなかったら、大いに自分の力を活用しただろうけど。さすがにね。子供ながら、自分のプライドが許さなかったから、それは出来なかった。だから、毎回成績はぐだぐだ。それでも、小五辺りから聞こえ無くなり始めて、中学二年くらいには、増悪の声以外は聞こえなくなった。どういう訳か、それだけは未だに治らない。時々気が狂いそうになる。人の悪口ばっか聞こえてくるって、結構、辛いぜ。悪口とかってさ、他の思いに比べてエネルギー量が違うって言うか……。まあ、喜びの声も、その思いが強いときには聞こえる。ごく、たまにだけど」
苦笑する要に、祐介はどう答えたらいいのか分からず、ただ頷いた。
「で、まあ……。子供の話に戻すけど。そいつと遊んでたら、男の人がそこの入り口に立って、ずっとこっちを見てたんだ。その人は、心の中で、俺の息子かって、言ったんだよ」
「その子のお父さんだったんだ」
「ああ。でも、その子は違うと答えた。知らない人だって。嘘じゃなかった。心の中でも、なんで俺がそんなことを言うのか不思議がってたし。でも、その人が本当にその子の親だったらいいのにって、思ったんだ」
「なんで?」
祐介の質問に、要は一瞬顔を歪めた。
「その子は、虐待を受けていたから」
突然、蝉がけたたましい鳴き声を響かせた。
祐介は顔を上げ、自分達が座るベンチに日陰を作っている木の枝を見上げた。幹のどこかにいるのだろう。どこからか飛んできた蝉の鳴き声は、さほどうるさくなかった公園内を、一気に賑やかにした。
虐待という言葉と蝉の鳴き声が、どういう訳か、祐介の心に鈍い痛みを与えた。何とも言えない不安感に襲われ、無意識に自分の胸元辺りを掴んだ。未だに思い出せない、自分の過去。だが、父親と祖父の告白で、自分の幼少期を知った今、要が話している子供が、自分と同じ環境にいた子供だと思い、胸が苦しくなった。
「僕と、同じだね」
祐介が囁くように言ったが、その言葉に要は何の返事もしなかった。
「男の人は確かに、息子、と言ったんだ。泣きそうな顔で。子供ながら、あの男の人は信頼できる大人だと感じたんだ。だから、あの子の親だったらいいのにって、思ったんだ。男の人とすれ違い際、その子供と一緒に住んでいないことが分かった。ああ、あの子の言うとおり、親じゃないのかって、なんでか残念に思った」
要はその時のことを思い出したのか、悲しげな目をして薄っすらと微笑んだ。
「……その子の頭の中はさ、幻想で溢れかえっていて、現実が何も見えなかった。でも、あの人は親かと聞いたとき、一瞬、大人から暴力を振るわれているヴィジョンを見たんだ。それも、すぐに消えてしまったけど……。でも、身体中の痣を見れば、誰かから、殴られているんだって事くらい、子供でも分かった。あの頃は俺も子供だったし、何をしてやれる訳じゃなかったんだけど、ずっと気になっていた。後々、俺は自分でその子を助けたかったんだって、自分の心に気がついたよ。あの日、約束したのに公園へ来なかったのは、来られない理由があったんだって。あの子供を救えなかった事が、どこかでトラウマみたいになってた」
蝉の声が、ぱたりと止んだ。
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