僕はかつての想い人と話をした
三国凪は小学から中学時代当初、誰も怒った顔を見たことが無いくらい、大人しい性格の女の子だったらしい。友達は少ないが家族を大切にする、明るい髪色以外は少し人より口数が少なくて、少し人より真面目なくらいが特徴の。
しかし、学年が上がるにつれ彼女を取り巻く状況は徐々に変化していく。
成長と共に彼女の容姿は花開くように人目を引くものになり、彼女の成績は学年で一番を連続で取るほどになった。
一時、彼女は人気者になったらしい。教えを乞う人が現れたり、あるいは多くの男子生徒から告白されたり。
その時の彼女が余りにもまっすぐな性格をしていたことが、彼女にとって不幸なことだったのかはもう分からない。
勉強を教えて欲しいという人には、もっと真面目に勉強して、と真顔で返し。
彼女を美しい、好きだ、という人には、自分は好きじゃない、あなたは私を顔で判断したんですか、とやはり真顔で返事をして。
やがて彼女はお高く留まっている、周りを馬鹿にしていると噂されるようになった。
それでも男子からの告白は絶えなかったから、同性からも男に媚びているとひんしゅくを買た。
かくして彼女は孤立した。
そして自分の何が悪いのか分からない、と言いたげな無表情を貫いた彼女の孤立がいじめに発展するのに、さほど時間はかからなかったらしい。
いじめは中学を卒業するまで続いた。
その結果なのかは分からないが。
高校生になった彼女はガラリと別人のように性格を変えた。
元から薄かった人間関係は、一層他者に興味を示さなくなることで最初から孤立し。
告白して来る相手には一切の期待を持たせないよう、徹底的に振る。
そして同性異性関わらず、自分に対して敵意を見せた他者を絶対に許さない。
それが彼女なりの処世術なのかもしれない。
これらが僕がかつて突然入部してきた、一年生の中でもぶっちぎりの有名人について、彼女の過去を知る人達の話を聞いて回った結果、得られた情報だ。
勿論、これは余り褒められた行動じゃないことは分かっているけど。
当時部活は僕と竜一の二人だけで、しかもそれでそれなりにうまく回っていたから、彼女が僕達の学校での唯一の居場所を破壊する人間でないかどうか判断するのは、僕達にとって死活問題だったということは断っておきたい。
そして彼女の過去と人となりについて聞いたことで、僕達の懸念はより一層強まっていたと言わざるを得ない。
しかし、結果は違った。
彼女は僕たちの部室に、良く馴染んだ。
静かで、感情を滅多に顔に出さない。だから、何を考えているのか分かりづらい。沈黙を不得手としないのかいつまでも黙っている時もしばしばある。
でも、別にそれだけだった。
表情も分かりにくいけれど、喜怒哀楽が無いわけではなく、よく見ればわずかに口元が綻んでいたり、ムッとしていたりするのが分かったし、言葉をよく吟味する癖があるのか、じっと待っていると基本的に会話自体が嫌いな訳ではないようだった。
そんな態度は、僕たちの目にはむしろ、好ましくさえ映った。
彼女に対する僕の印象を一言で表すなら――臆病な猫、だろうか。
傷つけられるのを怖がって、決して懐こうとしない猫。
前話の四十四話について、感想欄にてご指摘頂いた通り、一部の表現に不適切な部分がありました。現在は修正済みです。申し訳ありません。また、誤字脱字の報告をして下さる方々、いつもありがとうございます。
また内容についても複数の方から感想を頂きましたが、今後の展開に関わってくる部分でもあるので、感想の返信は簡単なもので済まさせて頂きます。
ですがどれも本当に貴重な感想で、非常に有難く、今後の参考にさせて頂きます。
自分の力量の無さを痛感させられることも多く、今後読んで下さる方々にとって、納得頂けるような内容が書けるかはわかりません。
ただ、自分は自分の書きたいものを、読みたいものを精一杯書かせていただきます。それだけは、よろしくお願いいたします。
何度も更新が止まってしまったこの物語ですが、今なお多くの方に読んで頂いていること、本当に感謝しています。物語の終わりまでまだ少し、付き合って頂けると幸いです。




