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僕は顔合わせをした

 お待たせしました……!

「それでは、このメンバーで今年の祭りを盛り上げていきましょう! 二つの商店街での合同夏祭り、初めてのことで中々上手く行かないこともあるでしょうが、協力して乗り越えていきましょう、よろしくお願いします!」


 パチパチパチ! と拍手が聞こえてくる。商店街に自分の店を持つ人達、それと町内会の人達が集まった公民館の会議室は、やる気と活気に満ちているようにだった。


 僕はそれを隣の小会議室で聞いていた。子供はこっちの部屋に集まるみたいだ。小会議室と言っても、学校の教室と同じくらいの大きさはある。前に机が一つと、後は長机が列を作っている。僕は部屋の真ん中より少し後ろの長机の、端の方に座っていた。今のところ、この部屋にいるのは僕と数人の小学生だけだ。ちょっと来るのが早かったかな。


 暫くスマホを見ながら待っていると、いつの間にか小学生が増えていて、中学生が数人連れ立って入って来た。そしてその後ろから、仏頂面の真っ赤な髪の女の子が歩いて来る。彼女は僕と目が合うと一瞬驚いた顔をした後、にこにことしながらこちらに寄って来た。


「やぁ、こんな所で会うなんて奇遇だね。いやこれも、運命の導きかな。ならここでボク達が会ったことにも、世界にとってきっと意味のあることなんだと思うね。君もそう思うだろう?」


「霞、こういうの参加する方だったっけ」


 僕が隣のパイプ椅子を引くと、彼女はありがとうと言って座った。


「何、母さんに言われてね。仕方なく来たのさ。全く、ボクは暇ではないと言うのに。……君こそ、どうしてここに?」


「僕は父さんに誘われて、面白そうだと思ったから」


「一人で来たのかい?」


「え、うん」


「! そうかそうか!」


 なんでそんなことを聞くんだろうと思ったけど、言われてみれば確かにこういうのは友達と参加するのが普通なのかもしれない。

 そんな風に何故か嬉しそうな霞と話しながら待っていると、ギリギリに数人の中学生が駆け込んできたりしつつ、集合時間になったんだけど。


「…………誰も来ないね」


「ふむ、ボク達は何をするのか説明もされていないし、監督の大人が来ると踏んでいたのだがね」


 多分皆同じ認識だったのか、他の子供たちからも大人を待っているような雰囲気が出ていた。その時前の扉が開いて、入ってくる人に部屋中の視線が集まる。


「……………」


 入って来たのは大人じゃなく、男の子だった。丸ぶちの眼鏡を掛けた男の子だ。その男子は自分に注目が集まっていることに気づいたのか、無言でそそくさと会議室の最後列の机まで行って一人で座った。


 違ったね、と霞と小声でやり取りしつつ、僕は彼のことを横目で観察した。

 彼はつまらなそうな顔でポケットから取り出したスマホを見ていた。高校生だとしたら、多分僕と彼だけになる。せっかくだし、仲良くなれるといいけどな。


 そんなことを考えていると、扉が再び開いて今度は間違いなく大人が入ってくる。


「うーす。全員揃っているみたいだな。俺は平岡(ひらおか)。この商店街で八百屋ひらおかをやってる。と言っても店は兄がやってるから、俺は何もしてないんだけど」


 平岡と名乗ったその男の人は特に遅れて来たことに対しては何も言わず、それだけ言ってこちらの反応を伺った。……もしかして、笑うところだったのかな。僕はちょっと申し訳なく思ったけど、平岡さんは特に気にしなかったようだ。軽く肩を竦めると話を続ける。


「ここにいる皆は、これから一緒に色んな物を作ったりすることになる仲間だ。まずは、お互いのことを知る為に、自己紹介からやっていこう。じゃあ、そっちの君から」


「あ、ぼ、ぼくですか? え、えと、なにいえばいいですか」


「ん、そうだな……。じゃあ立って名前と学年と、好きなものを言ってもらおうかな」


 自己紹介が始まると、平岡さんは机に持って来た帳簿みたいなものを広げて何か作業を始めた。時折顔を上げては、子供たちの自己紹介に、おー、拍手-、と呟いている。


 ……ふんふん。

 集まった子供たちの話を聞く限り、ここにいる大半は小学生みたいだ。中学生は数人いる。多分、霞みたいに商店街の店の子なのかな。高校生らしい人はほとんどいなかった。考えてみれば、中学や高校でお祭りの手伝いをしたって話を聞いたことはなかった。


 そんなことを考えていると、僕達にも自己紹介の番が回ってきた。まず霞が立ち上がって話始める。


相良霞(さがらかすみ)。中学二年生、好きなものは相対性理論とカオス理論……と言うと、どうにもかっこつけている感じがするね。それはボクの望むことじゃない。だから訂正しよう、好きなものは……そうだね、ゲーム、かな。君たちとよろしくするつもりはそんなにないが……まぁ、適当に頼むよ」


 椅子に座り直す霞に、そこはよろしくしなよ、と僕は言ったのだけど彼女は肩を竦めて答えた。周りの反応も案の定微妙な感じで、平岡さんは困り顔。眼鏡の男子の方を見ると、


「共感性羞恥……!」


 何か呟きながら顔を手で隠して椅子の上でうずくまっていた。一体どうしたんだろう。あ。それより、次は僕の番か。


「桐山冬二です。高校二年生で、好きなことは食べること。美味しい物を知ってたら是非教えてください。このお祭りを通して、皆さんと仲良くなれたらいいなって思ってます。良いお祭りにしましょう、よろしくお願いします」


 言い終えて座ると、まばらな拍手が起きる。最後に部屋の最後方に座っていた彼が立ち上がった。


「僕は御手洗吉彦(みたらいよしひこ)、高校二年生。好きなものは特になし。よろしくお願いします」


 御手洗君、というのか。ちょっと自己紹介が素っ気無い気がしたけど、同学年だったし、話してみたいな。全員の自己紹介が終わったことを確認した平岡さんは走らせていた手を止めて、顔を上げた。


「あー、みんなありがとう。皆さんにはこれから、お祭りの準備をしてもらいます、皆さんの力で、このお祭りを成功させましょう、えいえい、おー!」


 小学生は平岡さんに合わせて、おー! とやっていた。中学生はやらずに互いに目を見合わせてくすくす笑っていた。僕は一応腕を上げたけど、霞も肩を竦めただけだった。後ろを振り返ると、御手洗君は真顔で黙っていた。



---



 その後、準備では子供は飾りつけを担当することを聞いた。国旗やキラキラのモールに小学生がはしゃいでいたので、去年の残りだという画用紙を貰ってきて霞と二人でハサミでちょきちょきする。


「全く、なんでボク達がこんなことをしなければならないんだ」


「まぁまぁ。これはこれで面白いよ」


 霞と話しながら周りを見ると、皆それぞれ複数人で集まって作業をしている。その中で御手洗君が一人で折り紙を折っているのを見つけた。


「やぁ」


 僕と霞が彼の近くに行って声を掛けるまで、彼は顔を上げずに黙々と紙を折っていた。凄い集中力だなぁ。


「あ…………どうも」


 彼がペコリと軽く会釈してくれて、僕達も頷いて近くの席に座った。


「高校生は僕達二人だけみたいだったね」


「…………そっすね」


「はは、敬語は要らないでしょ、僕も高二だから」


「あ、そっか……さっき言ってたな」


「覚えててくれたんだ。僕は桐山、こっちのは相良」


「……御手洗っす」


「よろしくね。ところで自己紹介の時言ってたけど、好きなものがないって本当?」


「や…………なんていうか、ああいう場で言えるような好きなものがないってだけで。……普段は、アニメとかが好きかな」


 彼が最後にぽつりと呟いた言葉を拾い上げる。


「へぇ、どんなの見るの?」


「…………あー、仏滅の刃とか柔術廻戦」


「うん。他には?」


 何となく彼の好きなものはまだある気がして、もう少し聞いてみる。


「………………まだマギとかデロマスとか」


 うぅん。僕の勘違いだったかな。もう少しだけ。


「じゃあ、今季のアニメなら?」


「…………………………今期期待してるのは、強キャラと有職転生」


 あ、多分これだ。これまで彼はずっと低いトーンで話していたけど、今だけほんのちょっと声が高くなった。


「それ、僕も見る予定だよ。確か、霞がおすすめしてくれたんだったよね?」


 アニメが好きな霞に話を振ってみると、彼女はふっと口元を歪めた。


「そうだね。まぁ有職転生の方は、ボクとしてはWEB小説の金字塔的な作品だけに、果たしてアニメでどこまでやってくれるか、と憂慮せずにはいられないんだけど」


 すると御手洗君の目が輝き始めた。彼は椅子ごとぐい、とこちらに身体を寄せてくる。


「おっ、相良はなかなか分かってるな。強キャラの方も人気作ながらアニメ化が比較的遅かった、その分満を持したアニメ化ってことで原作一巻発売当時から追ってるオタクとしては当然期待せざるを得ない作品ではあるが、満を持したアニメ化って点においてはやはり有職転生は相当感慨深いものがある。最早異世界モノに慣れた視聴者も多いことや、長編であるが故のアニメ映えのしにくさからハードルは高いように感じられるが、期待しないなんてことは到底出来ない。PVも良かったから放送を全力で待つ次第だ」



---



 それからしばらくして、平岡さんの声で子供たちの初めての集まりは終了になった。


 僕と霞は帰り支度をして、御手洗君に挨拶をして小会議室を出る。

 彼とは途中からはそれなりに打ち解けられたんじゃないかと思う。霞も普段アニメの話を僕以外とすることがないのか楽しそうにしていたと思うし、そんなに悪くない滑り出しなんじゃないかな。


 公民館の出口まで来たところで、玄関で立ち話をしている大人たちの声が耳に入ってきた。平岡さんの声も混じっている。


「…………すると、今年は服屋はどこも店出さないのか?」


「まだ迷ってるみたいだけどな。最近あんまり景気が良くねぇみたいだから、それもあるのかも」


 へぇ、商店街でも祭りに参加しない店もあるのか。ちょっと寂しい気分になったけど、考えてみればどこの店が参加するのかもよく知らないや。……次の集まりの時にでも聞いてみよう。





 残念なお知らせです。最近特にリアルの方が忙しく、ここ二週間ほどが山となる見込みです。自分の満足できるものを書きたいというのもあるので、今日から二週間ほどは二日に一度ほどの更新となるかもしれません。楽しみにして頂いていた方がいましたら、本当に申し訳ありません。必ず完結させますので、お待ちいただけたら嬉しいです。

 また、感想の方もすべて目を通させて貰ってます。励みになります、本当にありがとうございます。時間が出来次第返信させて頂きます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 弱キャラは今日放送ですね。 自分も読んでます。御手洗君すごくわかりみが深い。 このぐらい話せる友達が欲しい人生でした。
[良い点] 無理せず頑張って下さい(≧∇≦)b次回も楽しみに待ってます( *´艸`)
[良い点] 面白い [一言] 更新のんびり待ってます!リアル頑張って!
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