僕は泣いた
「…………死にたい」
僕は自分の家の扉を開けると、靴も脱がずにその場にへたり込んだ。
あれからどうやって家まで帰って来たか、全然覚えていなかった。
「……ぁぁ……………うっ、うう……」
声と共に、今まで我慢していた涙が零れる。
「おかえり~……って、どうしたのお兄ちゃん!?」
リビングからひょいと顔を出した妹が、僕の様子を見て慌ててこちらに近寄ってきた。
この時間はいつも両親はまだ仕事で、家にいるのは僕か妹だけだ。
「なにかあったの!? どこか怪我した!?」
「……うぅ……ご、ごめん千夏。ヒック。こ、これは、そういうんじゃ、ないんだ」
「じゃあどういうの!?」
「ちょっと…………その、女の子に振られたんだけど。少し、きついこと言われてさ。はは」
言い辛かったけど、僕が正直にそんなかっこ悪いことを言うと、
「――――何それ。どこのなんて人? 教えてよお兄ちゃん」
妹は何故か急にスッと雰囲気を変えて、据わった眼をした。
怒ってくれているのかもしれない。僕は鼻をずずっと吸って首を振った。
「いや、いいんだ。別に、悪いのは僕なんだから」
彼女は僕を騙していたんじゃない。ただ、僕を男として見てくれてなかったってだけ。
あ、考えたらまた泣けてきた……。
「でも、お兄ちゃんを泣かせたんでしょ!? ありえない! お兄ちゃんの魅力を分かってないなんて、ありえないよ!」
「うぅ……ありがとう、千夏……」
背中をさすってそう励ましてくれる妹に、さらに涙が溢れてくる。
これはさっきとは違う涙だ。
こんな僕にも、優しくしてくれる人がいるんだっていう涙。
「千夏、僕、お前が居てくれてよかったよ……」
「え!? う、うん! 千夏もだよ!!」
そう言って照れたように笑う、二個下で中学三年生の我が妹。
本当に、僕にはもったいない最高の兄妹だ。
「ありがとう、少し元気出たよ」
「ほんと!? 良かった!!」
幸いにして、今日から夏休みだ。
今日告白して上手くいったら、彼女とラブラブな夏休みを過ごそうと思っていたんだけど………………ともかく、次に彼女と顔を合わせるのは夏休み明けだろう。
「取り敢えず今日はもう寝よう……」




