僕は幼馴染と親友に会った
翌朝。
「…………ふぁああ」
僕はリビングで目を覚ました。
「……すぅ……」
隣では千夏が静かに寝息を立てていた。
昨日はあれから結局、夜遅くまで勉強していたけど、いつの間にか二人とも寝てしまったみたいだ。
…………しばらく起きなさそうだし、朝ごはんにパンでも買ってこようかな。
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僕らの家の近くには商店街がある。この辺の高校生はここを頻繁に利用していて、僕も学校前にここでパンやお弁当を買って行ったり、放課後に寄ったりすることも多かった。
そしてその中に、僕の行きつけのパン屋もある。
「――――やぁ、いらっしゃい。待っていたよ」
「…………!」
店内に足を踏み入れた途端、レジの方から声を掛けられた。衝撃に足が止まる。
「ああ、君は驚いているね。けど、今日この日に君がここにやって来たのも、世界の導きだと考えることは出来ないかい? そう思えたなら、今ばかりは神に感謝すべきなんだろう。と言っても、ボクに祈るべき神なんていないのだけどね」
「髪、どうしたのそれ?」
「フッ、いきなりそれかい? ま、でも確かに人の見た目は結局、他人にとってのその人の重要な構成要素の一つであることは間違いない。でも、この髪はちょっとした遊びさ。そんなに驚くようなことじゃない」
「いや驚くよ、いきなり昔馴染みが髪を真っ赤に染めてたりしたら」
「そうかい?」
そう言ってやれやれと肩を竦めた女の子は霞と言う。特に理由もなく髪を赤く染めるような性格をした、このパン屋の一人娘だ。
「とにかく、久しぶりだね。今日は、あの人は一緒じゃないのかい?」
「千夏のこと? 千夏はまだ家で寝てるよ」
「へぇ。いやなに、君は休日にここに来る時、大抵あの人と一緒だったからね。…………それにしても、そうか。あの人にも人間らしいところがあったんだね」
「……千夏は、普通の女の子だよ」
僕自身、昨日再確認したところだけど。
ふむ、と目の前の中学二年生は手を顎の方に持っていく。
「確かに、この世に特別な人間なんていないのだからね……ボクも、真実を見つめなければ」
話をしながらパンを選んでレジまで持っていく。と、奥の工房から霞のお母さんが出て来た。
「あら! 久しぶりね冬二君こんにちは! 痩せたのね!? すっかりイケメンになっちゃって!」
「こんにちは、お久しぶりです。あはは、そんなことないですよ」
「えぇー!? そんなことあるってば! 霞もそう思うでしょ!?」
「言われてみれば。少し痩せたかい?」
「あ、うん」
「あーもう、この子ったら、人の見た目のこと気にしなさ過ぎなのよ。………あ、でもそうだ! ねぇねぇ聞いてよ冬二君、夏休み入ってから、君全然来てくれてなかったでしょう? この子、冬二はいつ来るのかって、ずっと寂しがってたんだから~」
「ちょ、ちょっと母さん。その話はやめてもらっていいかな?」
三人で話していたその時、店の入り口の扉が開いて、会話が止まる。入って来た人の気配に、僕はなんとなく予感をしつつ振り返ると、そこには。
「――――あぁ腹減った。うぃっすおばちゃん! 霞! 今日もパン買いに来たぜぇ!」
「…………竜一?」
『こっちからしたら逆になんで告白されたのかって感じなんですけど。はぁ……最低です。貴方と仲良くしてたのなんてそんなの、竜一君が居たからに決まってるじゃないですか』
「あ? …………って冬二じゃねぇか!? 久しぶりだなぁ、おい!」
店に入って来た男、沢村竜一はそう言って笑った。
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