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明石レジイナ

今週末土日は一日1回投降、じゃなかった投稿にさせていただきます。降参してどうする俺。

「暗黒闘気術!」


 と叫び、巨大化した明石ジュスト。その構えた十字架状の大剣は


「それは剣というにはあまりにも巨大なものだった。」


 なんて言葉が浮かんでしまう代物だ。


「子狸め!死ねぇ!」


 と振るわれた剣を俺は回避した。うん。でかい分掛川城下の虎っぽい道場主の剣速よりは遅い。しかし俺の後ろで剣圧を受けた木々がバキバキと倒れていく!うわっ。恐ろしい。


「死ねぇ、死ねぇ!」


 と次々と繰り出される斬撃。お前は第四次川中島で武田信玄を襲った上杉謙信か。


「死ね!死ぬなら!死ぬとき!死ねば!死なない!なぜ死なぬ!」


 ……一応これまで虎っぽい人とか柳生とか色々な剣の達人に襲われてますから。

大部分は斬られて死んだ経験だけど。


「ぬううううう!!」


 と雄叫びを上げる明石ジュスト。そこに駆けつけたのは松平忠輝殿!


「貴様は?先程の狸の従者か?」

「徳川家康の六男、松平忠輝!」

「なにぃ、貴様も子狸か!今日は良い日ぞ!狸を狩りまくって夜は狸鍋だ!」


 お願いだから食べないで。


「狸どもめ、死ねぇ!」


 と横薙ぎにした斬撃の大剣に、松平忠輝殿がひょいっと飛び乗る。


「なに?」

「我秘剣受けてみよ!」


 と忠輝殿は大剣に乗ったままで明石に斬撃を加える!


 その一撃は見事に明石の胴にあたったが……逆に忠輝殿の刃が折れてしまった。


「なに?新刀ではないのだぞ!」


 と呻く忠輝殿。それを見ていた荒木又右衛門は後で


「てっきり新刀かと思っておりました。超常の力を相手にするには更に心構えを変えないと。」


 と述懐していた。


「わはははは。その様なボロな刃、デウス様の御加護を受けた我には通じぬ!」


 だから絶対その禍々しい姿デウス様じゃなくてルキフェルの御加護だろ。


「死ね!」


 と振りかぶったところをとっさに小太刀を抜いて防ぎ、さっと下がる忠輝様。巨体に見合わずものすごい俊敏さだ。


 そこに周りの敵を大方片付けた十兵衛と宮本武蔵が駆けつけた。


「明石全登……さすがの恐ろしさでありますな。」


 と十兵衛。


「勝ち筋が見えませんな。」


 と応えた武蔵殿の所に馬に乗った女人が駆け寄った。ジュストに従っている女人に似た美女であるが、少し年上のようだ。


「武蔵様!これをお使いください!」


 と銀に輝く剣を渡した。


「おお、これは……かたじけない!明石全登、行くぞ!」


 と行って斬りかかる。すると先程黒いもので膨れ上がった甲冑が、剣がみるみるまるで豆腐のように切れていくではないか!


「おお、この力は!」

「我が家が秘蔵していたゴアに安置されている聖フランシスコ・ザビエル様のご遺体で聖別した聖剣ザビエルにございます!」


「ぐあああああああ!」


 明石ジュスト全登は雄叫びを上げながらも武蔵に膾のように切り刻まれた……が先程の黒い物質でできた部分以外は無傷で、そのうちちょろちょろと黒いものが表面を動き回るような気持ち悪い姿の甲冑になった。


「あ、あなたは?」


 俺は聖剣を届けてくれた女性に名を聞いた。


「私はそこの明石ジュスト全登の娘、明石レジイナ。」

「おお、その美しさ、気丈夫さで大阪落城の時に襲われたものの貞操を守り抜いたレジイナ殿か。てっきりそこにいる明石全登に従っていた娘が貴方かと。」

「私は近江浅井家の血を引く三好直政殿と結ばれ、旗本の妻として平穏に暮らしております。忠長様、さすが浅井三姉妹江与様の血を引いているだけあって我が夫に面影が似ておりますな。」

「おお、レジイナよ、なぜ父に逆らうのだ……」


 と蠢く明石全登がいう。そこに横にいた娘が前に出てきて。


「父上、ここは一旦引きましょう。備前で一揆を扇動して岡山城を落とす計画はどうやら失敗です。」

「うぬぬぬぬ。こうなっては仕方ない。」

「父上、ここは私が引き受けますゆえ先にお引きください。」

「あいわかった!後で落ち合おうぞ!」


 と明石全登がいうと同時に一陣の生くさい風がぶわっと吹くと明石の姿が見えない。


「者ども!追え!」


 と十兵衛さんが声をかけたけど


「どうやら我々の包囲網をまたたく間にくぐり抜けたようでござる。」


 と生き返ってきた天さんが脇に立って言った。おう。天さんが生き返るぐらい長い間戦っていたのね。


「明石全登を父、と呼んでいたとなると。」

「そう、あの娘は我が姉、明石カタリナです!」


 とレジイナ殿が叫んだ。


「カタリナ殿……」

「そう、あれは我が『姉』カタリナに相違ありません。」

「姉上?しかしレジイナ殿よりも明らかに年下に見えますが……」


 と荒木又右衛門。


「そう。姉なのです。姉は野良仕事と木登りを愛する優しい姉でした……幼少の時に額をぶつけた傷すら愛嬌となり、皆に愛されていたのです。そしていいよってくる男達に蛇の抜け殻を投げて脅かしては笑うような純朴な女性でした……しかしある日、姉は『闇の魔力』を手に入れてしまいました。」

「父上ではなく、姉上が!?」

「そう、闇の魔力を操っているのは姉です!父はその力を借りているに過ぎません!」

「おほほほほほ。そう。レジイナよ。私が闇の魔力を操っているのよ。」

「カタリナよ、やめるのだ!」

「そう!優しい姉さんに戻ってください!」

「カタリナ……今の私の名はカタリナではないわ。新しい力を手に入れた私の名は『カテジナ!』」


 とカタリナあらためカテジナが勝ち誇ったような表情でいう。


「私は美しいレジイナの影で平穏に暮らしていたわ。しかし闇の魔力ですべてを手に入れたの!レジイナよりも美しい顔!レジイナよりも若い身体!そしてこの力!この力を持って京の魑魅魍魎共を呼び起こし、京を、大坂を、魔界とするのよ!」

「カテジナ!そのようなことはなさせん!」


 と武蔵が聖剣ザビエルで飛びかかる、しかしその次の瞬間、武蔵は弾かれてしまった!

カタリナ改めカテジナは白く光り輝き、白銀のような翼のようなものが着いた甲冑のような姿になっている!


「暗黒魔術礼装『ゴトラタン』ここに見参。」


 カテジナが言い放つ。


「忠長よ、ここは我らが力が足りぬゆえ我と我が父は引き下がる!しかしいずれ我らが真の神の力で狸の世を滅ぼしてくれよう……」


 と言いつつゴトラタンは激しく輝くと、眩しさに目を覆った俺達の前から消え去っていた。


「レジイナ様。」


 武蔵が問いかける。


「あれは父のように闇魔術の力だけではありませんね……一旦家に戻って姉や父がああなる前に遺した物にあたって研究してまいります。聖剣ザビエルは皆様がお使いください。」


 とレジイナ様は去っていった。


 こうして備前岡山での明石ジュスト全登の野望を打ち砕いた俺たちだったが、明石父子は取り逃がしてしまい、今後の戦いについても色々考えさせられる事になった。


「となりますと、秀頼がいる九州が目的になりますか。」


 と十兵衛さんが聞いてきたが、そこに宮本武蔵が


「あ、それならばその前に備後福山に寄るのが良いと思います。」


 と申し出た。


「福山は俺が前に仕えていた水野勝成様が治めておりますので。」

今週末はここまでです。よろしくお願いします。

レジイナ様はあの作品大ファンなのだが、調べたら史実で比較的丁重な扱いを受けて平穏な余生を送られ、子孫も続かれていたのでこう言う話になったのだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 新刀への熱い風評被害。 いや現代科学をもってしても古刀と同じものは作れないそうですからね。 仕方ないけど。 [一言] カテジナを名乗っても、所詮はPBYカタリナ。 どっかにいる剣豪カイ…
[気になる点] 天さんお得意の死に不意打ちが不発だと?! [一言] おかしいですよカテジナさん!、ちなみに武器はトンファー。
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