【第41話:待ち合わせには早すぎる】
そう言えば、俺はレナとハルルのどっちが好きなんだろう?
レナはこの世界で嫌われ者だったユーマ・ツアイトにも、きちんと接してくれていた。
それに俺が悪いヤツじゃないと、最初に受け入れてくれたのがレナだ。
真面目で献身的な性格も好感が持てる。
そしてとても整ったモデルのような美人。
普通ならこんな素敵な女性、好きになってしまうだろう。
だけどあまりに美人で高嶺の花すぎるせいで、異性として好きかと言うと正直わからない。
一方のハルルは明るくて親しみやすいキャラ。
色々と誤解を受けて攻撃を受けたりした。だけどあっけらかんと明るい彼女のキャラもあって、今ではまったく気にならない。
そしてトップアイドルのような可愛さ。
こちらも普通に考えたら、とても魅力的な女の子だ。
事実男子から大人気だし、男として好きになって当たり前の女子。
だけどレナと同じく、今現在異性として好きなのかと問われると、違う気がする。
二人とも人として大好きだ。だけど俺は今まで恋をしたこともないし、異性を好きという感覚がイマイチわからない。
だから……
「どちらも選べない」
「二股!? お兄ちゃんって、そんな男だったの?」
違う。
妹よ。そんなにあきれた顔をしないでくれ。
「そういう意味じゃない。俺にとっては二人とも異性として好きとかじゃなくて、大事な友達という感覚なんだ」
「そっか……じゃあどちらともうまく距離を取って関わらないといけないよね」
「うまく距離を取るって、どうしたらいいんだ?」
「お兄ちゃん! ご武運を! それじゃああたし、もう寝るから!」
ご武運って……俺、戦地に向かうのかよっ?
って言うか逃げられた。
うーむ……仕方ない。
ケーキ食べに行く時にはユイカのアドバイス通り、二人ともに適度な距離を取って、どちらか一方と仲良くし過ぎないように気をつけよう。
***
なんやかんやバタバタしてるうちに、美女二人とケーキを食べに行く日を迎えた。
待ち合わせ場所は繁華街の近くにある広場の噴水前。
女子を待たせてはいけないと思って、約束よりも30分くらい早く着いた。
彼女たちを待つのが暇だったら、ひたすら噴水の水を無心で見つめていればいい。
そう考えていたのだが──
現地に着いたら噴水に向いて、微動だにせず立っている女子がいた。
すらりと高い背、ピシっと伸びた背筋。艶やかで長い赤い髪。
思わず見とれてしまう美しい立ち姿。
あれはレナ・キュールだ。
……って、めちゃくちゃ早いな!
待ち合わせ時間の30分前だぞ。
とにかく声をかけよう。
「あ、ども。こんにちは」
あああ、しまった。
なんと言えばいいかわからずに、不審者みたいなたどたどしい声かけになってしまった。
「ひゃっ……」
肩をすくめて小さく飛び上がるレナ。
脅かしてしまってごめん。
赤い髪の女の子は恐る恐る振り返る。俺と目が合った。
「あ、ツアイト君でしたか。早いですね」
「うん。遅れたらダメだと思うと落ち着かなくてね。早く来てしまった。レナこそ早いよね」
「私も同じです。緊張して落ち着かなくて、早く来すぎてしまいました」
「緊張? ケーキを食べに行くことに?」
レナは生まれて始めてケーキを食べに行くのだろうか。
そんなわけはあるまい。
「いえ。ツアイト君と二人でお出かけすることに、です」
「二人じゃなくて三人……だよね?」
「あ、そうでした」
えへ、というような表情を見せたレナ。
なんだこの可愛い生物は。
わざと間違えたのかな。
「でも早く来たおかげで、ハルルちゃんが来るまで、本当に二人でお出かけした気分になれますね」
「あ、うん。そうだね」
レナはもう、完全に俺への好意を隠さなくなってる。
ここまで好意を示してくれると嬉しくはある。
俺はやはり、レナのことが好きなのだろうか……
「ああーっ、もう二人とも来てるっ!!」
突然聞こえた声の方を見たら、口をあんぐり開けたハルルが俺たち二人を指差してた。
「なんでこんなに早いの? もしかして私、待ち合わせ時間を間違えた!?」
「いえ、まだ待ち合わせ時間の30分近く前ですよ」
「だよね。あー、安心した。……ってか、なんで二人ともこんなに早く来てるのよ?」
ここでハルルは何か思いついたような顔をした。
「あ……もしかして二人で示し合わせて、早く待ち合わせたとか?」
眉間にシワを寄せて、疑いの目を向ける。
「いいえ、そんなことありません。偶然ですよ」
「へぇ、ホントかなぁ……」
ちょっと待って。
レナとハルルの視線がぶつかって、火花が散ってるように見えるのは俺の気のせい?
まさか早くも修羅場ってヤツが訪れたとか?
俺別に何も悪いことしてないよね?
二人は元々仲の良い友達だったんだから、穏やかにいこうよ!
「はい、ホントですよ」
「そっか、わかったよ。じゃあ早速美味しいケーキのカフェにGOしよっか!」
「はい、行きましょう」
なんか二人とも急に明るい雰囲気になった。
さっき修羅場かと思ったのは、俺の勘違いだったのかな。それならありがたい。
──さあ、美味しいケーキを食うぞ。




