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転生したゲーム世界で脇役キャラなのにヒロインに好かれた俺は、なぜか現実世界でもモテまくる  作者: 波瀾 紡


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【第37話:それでも手を繋ぐ八奈出さん】

【◇現実世界side◇】



 絡んできた男たちは無事に撃退できた。

 倒したわけじゃないけど、魔物相手じゃないんだから、追い払うだけで充分だろ。


「よしっ、作戦どおりだ」


 思わず小さく叫んだ。


「時任君。本当にすごい魔法でした。さすがです」

「え? 魔法?」

「はい。業火ごうかの魔法……でしたか」


 ──あ。夢中だったんで気にしてなかったけど、魔法の詠唱なんてやる男は気持ち悪いよな。うわっ、ハズい。


「ごめん。気持ち悪かったよね。あんなことマジでする高校生は普通いないよな」

「いいえ、全然気持ち悪くなんかないですよ。いかつい男たちを怯ませて、逃げ切れるようにする素晴らしい魔法でした。いつのまにあんな魔法を身に着けたのですか?」


 いたずらっぽく笑う八奈出さん。


「私、中学生の時に異世界物のイラストなんかも描いたことありますよ。有名な異世界アニメもたくさん知ってるし、魔法使いが主人公の作品も多いですよね」


 ああ、この人。『こっち側の人』だった。

 魔法世界とか異世界とか、全然普通に会話できるじゃん。よかった。


「えっと……実はこの前、異世界の魔法学園で魔法の勉強をしてさ。ダンジョンで魔物相手に魔法の実戦授業なんかもしたんだよ」


 実際に体験したことだけど、冗談に聞こえるように言ってみた。

 笑ってくれるかな八奈出さん。


「あ……なんかそれ、ぼんやりと知ってます」

「はい?」


 そう言えばなぜかゲーム世界の出来事が、現実世界の女の子達の記憶とリンクするんだった。


「あ、いえ。変なことを言ってごめんなさい。と、とにかく時任君、カッコよかったですよ」

「へ?」

「きゃうっ……いえ、なんでもありません」


 『きゃうっ』ってなに? めっちゃ可愛すぎるんだが。


「じゃあお買い物に行きましょうか」

「八奈出さん。失礼ながら、お店にちゃんと行ける? 行き方はわかる?」

「はうぅっ……そ、それは……」


 今度は『はうぅっ』が可愛い。

 さっきの不良相手でも凛とした態度を崩さなかった強気な人なのに。

 こんなリアクションを連発するなんて可愛すぎる。


 可愛いのはいいんだけど……やっぱり行き先がわからないんだ。


「お店の名前はわかるの?」

「はい。大型の雑貨屋さんで、グッズ・アンド・デザインってお店です」

「なるほど。えっとそれなら……こっちの方向だ。まったく反対方向に来てた」

「え? 時任君、お店の場所を知ってるんですか?」

「知らない。マップアプリで調べた」


 八奈出さんの道案内に頼っていたけど、初めからアプリで調べりゃよかった。


「マップアプリって?」

「使ったことないの?」


 そういや八奈出さんって、極度のデジタル音痴だった。


「地図のアプリだよ。八奈出さんのスマホにも入ってるはず。行き先を検索して、そこまでのルート案内を表示できるんだ」

「地下街のお店でも?」

「うん。地下街でもちゃんと道案内してくれるよ」

「す、すごいですっ!」


 八奈出さんは目をキラキラと輝かせている。

 マップアプリでこんだけ感動できるってピュアだよな。


「そうだね。地図アプリはすごいよね」

「違います。すごいのは時任君です」

「いや、すごいのはアプリであって俺じゃない」

「いいえ。さっきの魔法と言い、困った時に冷静に対処方法を考えた今と言い、時任君は凄すぎます」

「えっと……八奈出さん」

「はい?」

「そういうの、なんて言うか知ってる?」

「なんのことでしょう?」

「買い被りって言うんだ」

「そういう謙虚なところがまた素敵です」

「いやちょっと待って」


 お世辞も程度を超えると恥ずかしいだけになる。

 いやでも。八奈出さんは道に迷って迷惑をかけてしまった俺に、気を遣ってくれてるんだよな。

 だったらその気持ちを無下にしてはいけないな。


「ありがとう。八奈出さんみたいな人にそこまで言ってもらえたら嬉しいよ」

「八奈出さんみたいなって、どんな人ですか?」

「あ、いやそれは……」


 ──八奈出さんみたいな素敵な人。


 そういう意味だったのだけど、本人を目の前にしてはっきりと口にするのは恥ずかしい。


「どんな人ですか?」

「えっと……その……」

「どんな人ですか?」


 目をキラキラと輝かせて、覗きこむように見つめるのはやめて!

 尚更恥ずかしいのだけれども、ここまで期待のこもった視線を向けられたら言うしかない。


「八奈出さんみたいな……素敵な人です……」


 ああっ、最後の方は小さな声になってしまった。

 聞こえただろうか。


「ふひゃんっ!」


 今度は『ふひゃんっ』?

 今日の八奈出さんは奇声のオンパレードだ。

 大丈夫かな……


 でもちゃんと聞こえたみたいでよかった。


「時任君。最後の方が聞こえませんでした。もう一度言ってください」

「え? 聞こえたよね?」

「いいえ。聞こえませんでした」

「聞こえたよね」

「き・こ・え・ま・せ・ん・で・し・た!」


 こわっ。八奈出さんこっわ。

 学校で悪いヤツに注意している時くらい毅然と言い切るの、圧が強すぎるよ。

 これは言わざるを得ない。


「八奈出さんみたいに素敵な人です」

「そうですか。ありがとうございます」


 極めてクールに答えた八奈出さん。別に嬉しくないよって態度に見える。

 だけどさっき『ふひゃんっ』って言ったよね?

 今もぷるぷると肩震えてるし、ニヤけそうになるのをめっちゃ我慢してるし、もしかして結構喜んでない?


「じゃあ行きましょう」

「うん」


 あ、ごまかされたか。


 今度は俺が先導して歩く。

 ……えっ?


 いきなり後ろから手を握られた。

 振り向くと八奈出さんがさっきみたいに俺の手を握ってる。

 ここは別に人が多いわけじゃないから、手を握らなくてもはぐれることはないのに。


 ……って俺が怪訝な顔をしたからだろう。


「私はおっちょこちょいなので、知らない道では手を握っていないと、うっかり時任君を見失うかもしれませんので」


 ──そんなわけないだろっ!


 と心の中でツッコミを入れてしまったが。

 なんだか八奈出さんの行動、どんどん壊れていってないか?

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