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88 ダイエット


「毎度あり〜」


 仲良し姉弟は恋人繋ぎのままたこ焼きの購入に成功し、姉に至っては目を輝かせていた。


「お〜!おいしそうですね!!」

「そうだな…」


 だが弟の方はさほど楽しそうでもなかった。


 なぜなら…恋人繋ぎしてるから!!!


 一旦冷静になって欲しい!!姉弟で恋人繋ぎするなんてあり得ないだろ!

 と考えていたりするが、提案したのは弟くんからでしょ。


(ミスったな…もっと別の提案しとけばよかった)


 怒った姉を鎮めるために何か案を考えた結果が恋人繋ぎだったのだが、多分他のことでも許してくれただろうから後悔が襲ってくる。だって今めちゃくちゃ見られてるんだもん。


(はぁ…多分周りからはカップルだと思われてるんだろうな…)


 まあ男女二人で海に来て恋人繋ぎしている時点で恋人だと思うだろうな。誰も姉弟だなんて考えもしないだろうな!!


(もしこんな姿をクラスメイトとかに見られたりしたら…俺の人生は終わりだ…!!!)


 高校生にもなってお姉ちゃんと手を繋いで歩いている男子高校生なんて見るに堪えない。つまり、裏で陰口を言われまくって退学にまで追い込まれるということ…。


 というのは被害妄想が激しすぎる気もするが、実際知り合いなどに会いたくないのは事実。それはまあ、単純に恥ずかしいから。


(でも…今更なかったことにもできないよなぁ…)


 花音(かのん)はとても厄介な姉だ。さっきの発言を取り消させてなどと言おうものなら、さらに上のことを求められるだろう。すなわち、恋人繋ぎ以上のことになる。いや、そんなのできるわけないだろ。


 というわけで(しゅう)も諦めて彼女に従うことにし、恋人繋ぎを続行したまま食べ歩きを続ける。


「ん〜♪熱くておいひぃでふ…!」

「うまそうだな」

「柊も食べますか?」

「じゃあ一回いただくわ」

「はい、どうぞ」


 手を繋いでいない方の手でたこ焼きを差し出してきたので、爪楊枝を駆使してたこ焼きを一個いただく。


「ん〜…」

「あら、お口にあいませんでしたか?」

「いや?最高すぎて言葉が出なかっただけ」

「ふふ、それはよかったです♪もう一個食べます?」

「いただく」


 こんな感じで美味しいものを食べていると、恋人繋ぎしていることなんてどうでも良くなってくる。それぐらい柊は食べることが大好きだから。


「うん、素晴らしいな」

「相変わらず柊は食欲旺盛ですね♪結局私より楽しんでないですか?」

「そ、そんなことは…あるな」

「ですよね♪」


 食べ歩きしたいと言ったのは花音だったが、結局柊の方が楽しんでしまっている。まあそれが彼女にとって一番嬉しいことだろうから否定はしない。


「食べることは最高だからな。今日みたいな非日常を味わえるときは特に」

「わかります♪いつもとは違う場所で食べるのってとても気分が上がりますよね♪」

「しかもそういう時は大抵の食べ物がうまい」

「そうですよね!!」


 ん、なぜか結構食いついてきたな。まあ気にしなくていいか。


「なのでつい食べすぎてしまいますよね!!」

「あ、ああ…」

「つまり食べすぎて太っても仕方ないということですよね!?」

「っ……」


(いやめっちゃ根に持ってるじゃねぇか!!??)


 つい数分前花音に「食べすぎると太るぞ」的な発言をしてしまったことを引きずってきやがった。こっちからすればそれのせいで恋人繋ぎする羽目になったから思い出したくないのに…!

 流石の柊でもこの花音の言葉には何も返すことができなくなり、ただ苦笑いを返すことしかできなくなった。


「あ、あはは…」

「ふふ♪どうしたんですか?急に黙っちゃって♪」

「あ、あはは…」

「あ、ちなみにですけど、ダイエットには付き合ってもらいますからね?」

「…はい」


 結局アンタも太るつもりなのかよ。だったらさっきも許してくれてよかったのでは?


「あ、今(どうせ太るってわかってるなら俺の発言だって見逃してくれたってよかったんじゃないか?)と思いませんでしか?」

「…ノーコメントで」

「否定しないということは肯定ということですね。まったく、失礼な人ですね」


 頬を少し膨らませながら拗ねている。可愛い。


「私だって太りたくて太るわけじゃないんですよ?ただご飯が美味しいのがいけないんです。だから私は決して悪くないですし、重くもないですからね!!」

「あ、ああ…」


 かなり主張が激しい。それだけデリケートな話題なのだろう。そういうところに触れてしまったことは非常に申し訳なく思うが、それならわざわざ掘り返さないで欲しい。

 でもそんな簡単にいかないのがこの花音という存在で、彼女はいつも通りこちらのことを愛している。


「でももし仮に、万が一今日がきっかけで太ったりしても、柊が付き合ってくれるなら頑張れる気がしますっ」

「そうか…まあそれぐらいなら全然いいけど。どうせ俺毎日走ってるし。姉さんも俺と一緒に走り始めたら、きっとすぐに痩せるさ。だからまあ、今日ぐらいはたくさん食べてもいいんじゃないか?」

「そうですね!せっかくの機会ですから、ブタさんになるぐらい食べまくりましょう!」


 豚が太って見えるのは筋肉のせいで、実際彼らの体脂肪率はそこまで高くないということは言わないようにしておこう。じゃないと多分彼女のダイエットのモチベーションが下がるだろうから。


「ああ。食って食って食いまくるぞ!!」

「お〜!」


 柊が食いまくっているのはいつものことだが、今日はそれ以上に食べてやるつもりだ。


 でもそのせいで財布が空っぽになるということは、まだ予想もしていなかった。


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