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86 胸囲の集中力


「触りたいのか…?」


 二人ともが肌を露出し至近距離に迫った今、佳奈美(かなみ)は興味津々な目で(しゅう)の上半身を眺めていた。


「うん…!どんな感触なのか気になって」

「…そうか」


 いや、なんて言うのが正解なんだ!?


 せっかく佳奈美に頼まれたのだから、できるだけそれに応えてあげたいとは思う。でもだからといってすぐにはいどうぞと言える状況でもない。

 二人は今、人が大勢いるビーチで遊んでいるのだから。柊が気を遣って端の方に来たからといって、人目を無視することなど到底できない状況である。


 つまり、佳奈美に触れさせるわけにはいかない。

 というのは心ではわかっている。でもなぜか、首を横に振ることができない。


(いや流石にここで触らせるわけにもいかないから断るべきだよな…?)


 それはわかっているのだが、なぜか申し訳なさの方が心に強く現れていて。


(でも…断れねぇ…)


 佳奈美からは期待の視線が向けられているため、彼女に好意を抱いている柊が断れるはずがなく。


「ダメ、かな…?」

「っ……ああ…わかったよ…」

「ホント!?」

「ん…」


 そんな泣きそうな目を向けられて断れるわけないだろ!!


 そんなわけで柊は首を縦に振ってしまい、佳奈美に身体を触る許可を出した。すると彼女は嬉しそうに笑い、早速手をこちらに出してきた。


「じゃあ早速…」


 まずは腕に触れてきた。


「お〜…意外と柔らかいんだね。もっと硬いのかと思ってたよ」

「まあ…力入れてない時はそこそこ柔らかいな」

「そうなんだ。じゃあ力入れてもらってもいいかな?」

「まあいいけど…」


 興味津々な佳奈美の指示に従い、腕に力を入れてみた。すると彼女はより嬉しそうに触り始め、腕の根本から手の先までペタペタ触り始めた。


「すごい…!柔らかかったのがこんなに硬くなって…しかも大きい…!」


 なぜか嬉しそうな佳奈美であるが、こちらからすれば心臓が破裂しそうな思いである。なぜなら、彼女の白くて柔らかい指がこちらに触れていて、さらに少しだけ佳奈美の水着の布の部分が当たっているから。


(なんだこの状況!?どんなご褒美だよ!?…いやそうじゃなくて!!どんな罰ゲームだよ!!)


 けしからん。実にけしからん!!


 公衆の面前でこんな辱めを受けるなんて…屈辱だ…!!


 でも本音は??


(…やっぱ最高だなコレ)


 佳奈美のお山付近を見ながらそう考える。いやだって当たってるんだもん!佳奈美の水着で隠されているけれども全然隠しきれていない大きい胸部が当たってるんだもん!


 そんなの健全な男子高校生が見ないわけがないだろ!?だから見るんだ。


 決して佳奈美のことをそういう目で見ているとかではない!!


(なんか、頭回らなくなってきた…)


 そういう目で見ているとかではない。


(ヤバい、変な妄想してしまいそう…)


 見ているとかでは…


【柊…?ここが気になるの…?】


 佳奈美が水着の紐を持ってチラチラと動かしながらそう言う。妄想をする。


(あぁいかん!!このままじゃマジでヤバい!!公衆の面前で大変なことになってしまう!!)


 よく考えてみなくても、ここは人が大勢いるビーチだ。そんなところで変な妄想をするなんて、流石に恥ずかしすぎる。いやもうすでにこの状況が恥ずかしいんだけど。でもこれ以上の恥を味わうと流石に脳がオーバーヒートしてしまいそうであるため、ここは奥の手を使って__


「柊って胸大きいね」


(いやアンタがね)


 気づけば佳奈美は腕から胸付近に手を動かしていて、そこを凝視しながら呟いた。でもここで一つだけ言わせてもらいたい。


 アンタには叶わないよ。


 この距離で見るとよりわかる。佳奈美の胸は高校生とは思えないくらい大きい。普段の制服姿からでもわかっていたことだが、水着姿だとより迫力を感じられる。


 そうやってこちらの胸を触ってくるのなら、こっちだってその大きな山を(殴。


「へ〜…男の子でもこんなに大きくなるんだね」

「……」

「私の胸は多分筋肉ないから…やっぱりすごいね」

「……」


 もしかしてわざとやってる?さっきから滅茶苦茶視線誘導してくるじゃん。そんなに見て欲しいのか?

 いや、流石の佳奈美でも人前でそんなことさせようとするはずがない。花音(かのん)じゃあるまいし。


「腹筋もすごいね…綺麗に割れててすごくカッコいいね」

「…なあ」

「ん…?今いいところなんだけど」

「そろそろやめないか?」

「え〜?なんで?」

「だって…」


 今滅茶苦茶見られてるんだもん!!!


 それを佳奈美に伝えるためにわざとらしく周りに目を向けていると、そこで彼女もようやく気づく。


「っ!!?ご、ごめんっ!!」

「いや、別にいいけど…」


 なんか、もう遊ぶっていう感じじゃなくなってきたな。水を掛け合ったりしてイチャイチャしたかったが、まあそれ以上の収穫があったからよしとしよう。

 それより今は、早くこの場から逃げ出したい。


「テント、戻るか」

「そ、そうだね…」


 というわけで二人は人目から避けられるテントに逃げ帰った。


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