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85 その角度は素晴らしいですね


 そんなこんなあって現在佳奈美(かなみ)と二人きりで海に入っているわけだが、当然全く落ち着かない。なぜなら、好きな人が目の前で素晴らしい水着をもう一度披露しようとしているから。


「えと…ここでならコレ、脱いでもいい…?」


 コレ、というのは(しゅう)が佳奈美に貸している上着のことである。彼女の水着姿は魅力的すぎるあまり、つい反射的に隠すように言ってしまったのだ。

 でもこの日を楽しみにしていた彼女からすると、やはり水着姿で遊びたくなるのだろう。


(まぁ…ここでなら大丈夫か…)


 できるだけ佳奈美の意見に応えたいので周りを見渡して大丈夫かどうか確認し、彼女に目を向けてグッドサインを送った。


「ああ。大丈夫だぞ」

「そう?なら…」


 佳奈美はゆっくりとファスナーを下ろしていく。


 そして少しずつ胸部の素晴らしい谷__可愛らしい水着が姿を現した。


 いや、流石にエッッッ


「ど、どうかな…?」


 この世界で最も素晴らしい光景を見つめながらこの世で最も素晴らしい妄想に想いを馳せそうになったが、感想を求める彼女に意識を戻されてしまう。


 そして一瞬で冷静さを取り戻し、彼女の水着を全力で褒め称えた。


「あ、ああ…!!えっと…滅茶苦茶似合ってると思う…。マジでその、可愛いと思う…」

「っ…そう…?ありがとう…」


 自分でも上手く褒められている自信がない。だって目の前に好きな人の水着姿があるんだぞ?この状況で動揺しない奴なんて男じゃないだろ。

 で、ちゃんと男である柊は当然ドキドキしまくっているので、あまり深く考えることもできずに会話をしている。


「…もっとちゃんと褒められたらいいんだけどな…っ。でもなんか、佳奈美が綺麗すぎて言葉が浮かんでこないわ」

「!!!そ、そうなんだ…?」

「ああ…」


 ん、なんかさりげなく褒めれたな。おかげで佳奈美はかなり照れているようだ。


 そして彼女はそのままこちらに目を向け、モジモジしながら上目遣いをしてくる。


「それよりも…柊は脱がないの…?」

「え??」


 いや、それはもはや誘って__


「私だけ脱いでるの…不公平じゃない…?」

「……」


 その言葉は誤解を生む可能性が高すぎるな。いやまあ事実ではあるんだが。

 柊も今日は上着を着ていて、佳奈美はそれを脱いで肌を晒しあおうと言ってきているわけだ。まあ多分自分だけ脱がされて恥ずかしいのだろう。これって行為中とかによく言われる__


「まあ、そうかもな…。じゃあ俺も脱ぐよ」


 佳奈美の言われるがままに上着を脱いで上半身を晒す。するとなぜか佳奈美は恥ずかしそうにチラチラとこちらを見てきて。


「〜〜っ!!し、柊って…結構筋肉すごいんだね…」

「そうか?まあ多少は鍛えてるけど、男なら普通じゃないか?」


 なわけあるか。柊の筋肉は間違いなく普通ではない。まあ強豪野球部みたいにガチムチではないが、そこら辺の同世代には絶対負けないぐらいの筋肉はある。


 そしてそのことを佳奈美も理解していて、頬を赤くしつつも驚きながらこちらの上半身を見回してくる。


「普通じゃないと思うよ…?胸とかお腹の筋肉とか、こんなにある人中々いないだろうし…というか、柊ってそんなに鍛えてたんだ…」


 多分彼女も柊が身体を動かすことが趣味なことぐらいは知っていただろう。でも流石にこの筋肉の前では驚きを隠しきれない様子だった。


「意外…もうちょっと細身なのかと思ってたよ…」

「まあ着痩せするタイプだからな。姉さんにもよく言われる」


 この着痩せのおかげで多分クラスで柊の筋肉に気づいている人はいないだろう。でもここに第一号が誕生してしまい、彼女は驚きながらこちらに近づいてくる。


「へぇ…うわっ、ここもすごいね…」

「っ…」


 佳奈美は楽しそうにこちらの筋肉を近くで観察し始めた。いや、そんなに近づいて身体を前に乗り出されたら…お山と谷が綺麗に見えて__


(なんだよこの状況!!流石におかしいだろ!?てか近すぎだろ!!恥ずかしくないのか!?)


 うん、まあ明らかに普通ではないよね。


 目の前に大好きな美少女がいて、彼女は水着姿だから肌を露出させている。今までに見たことのない部分が多く見えて、自然と柊の心臓の鼓動も早くなっていく。そしてさらに、こちらをドキッとさせる一言を放ってくる。


「やっぱり柊って…すごくカッコいいよねっ」

「っ!?そ、そうか…?」

「うん。本当に、同級生とは思えないぐらいカッコいいよ?」

「そうか…ありがとな…」


 いやなんで平然とそんなことが言えるの!?


 普通なら滅茶苦茶恥ずかしいだろ。いや、この状況が普通じゃないから大丈夫なのか?

 なわけない。流石の佳奈美でもここまで嬉しそうに褒めまくってくるのはおかしい。だから多分、彼女は半分くらいぐらい暴走して__


「ねぇ…ちょっと触ってもいい…?」

「え…???」


 興味津々な目を向けてくる彼女は、とうとうこちらに触れることを決意したようだ。


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