表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/92

84 海だ!!!


 可愛い女の子と海に来たらまず何をする?


 ジャンクフードを食べながら適当に話をする?それとも彼女たちが遊んでいる姿を遠くから観賞する?


 いや、違う。


 可愛い女の子と海に来た時にまずすること。

 それは__


「イヤッホ〜!!!!」


 女の子を放置して海にダイブだ!!!!


「ぷはぁっ!!やっぱ海最高だな!!」


 いや美女二人を差し置いてはしゃぐ男がどこにおんねん。


 ここにいます。


「二人も来いよ!気持ちいいぞ!!」

「あはは…すごく楽しそうですね…」


 柊が楽しそうにしているのを苦笑いで見ているのはアイドルさえも恐れ慄くほどの美少女、佳奈美(かなみ)である。

 そしてその隣には、弟のことを優しいまで見守る美少女がいた。


「ふふ、(しゅう)は毎年こうなんです。海を目の前にすると少年のようにはじゃぎ回って。本当に可愛らしいですよね♡」


 そう言いながらおよそ弟に向けるような視線ではないものを向けているのは、実の姉である花音(かのん)だ。彼女は弟のことについて語った後、自身も彼と同じようにテンションを上げた。


「でも今日は、私たちも少女のように遊び回らないとですねっ!!」

「そ、そうですね…っ!!」


 花音も露骨に楽しそうにしていて、本当に姉弟であることがよくわかる。


 でもここで、二人にある問題が飛びかかってくる。


「あ、でも…誰かが荷物を見ていないといけないんじゃ…」

「っ…そうですね」


 そこは花音も考えていなかったようで、少し考え込んでいる。そして佳奈美もその問題について頭を巡らせる。


(…?何話しててるんだ…?)


 そんな二人の姿を、柊は少し離れたところから見ていた。そして疑問に思った彼は、海から上がって二人の近くに向かった。


「どうかしたか?」

「あ、柊。実はその、一人は荷物を見る人が必要でして」

「あ〜…たしかに」


 花音の言う通り、貴重品などが入っている荷物を放置することはできない。だから一人はテントに残しておく必要があるのだが、これには問題点がある。


「でもできるだけ三人で行動したいんだよなぁ」

「どうしてですか?」

「だって…」


 海。美少女。水着。


 この三点が揃ったらどうなる?


「ナンパされまくるだろ」


 はい。そういうことです。

 どう考えたってこの二人から柊が離れたらナンパ地獄になる。だってもう既に数回はナンパされそうになったんだぞ?それはなんとか阻止したけど。

 でもこの二人から柊が離れてみろ。ナンパを防げる人間がいなくなるだろ?そうなったらどうなる?そう、ナンパ地獄になる。


「そんなことになりますかね?」


 なるわ。


「確かに私も佳奈美ちゃんもお淑やかで可愛いですけど、そんなに警戒すべきなんでしょうか?」


 どうやら花音は何も知らないらしい。これは全てを教えないとわからないだろう。


 というわけで、柊は今までの苦労の全てを話すことにした。


「はぁ…あのさぁ、俺が今までどれだけ頑張ってたと思ってるんだ?俺がいないと今頃二人とも男に囲まれてるぞ?」

「流石にそれは盛りすぎなので__」

「いいや全然盛ってない。今日で既に両手で数え切れるかわからなくなるぐらいの男にナンパされそうになったんだぞ?多分二人は気づいてないだろうけど」


 少しは苦労をわかってほしいので強めの口調で話してみると、二人は少しずつ理解を示し始めた。


「そ、そうなんですね…」

「全然気づかなかった…」

「まあ気づかないだろうな。それっぽい男が近寄らないように滅茶苦茶威嚇してたから」


 これはかなり苦労した。例年なら花音一人守れば良かったのが、今回は佳奈美も守らないといけなくなった。


 美少女が倍になれば、ナンパ男も倍になる。つまり、かなり地獄だった。


 柊はそのことを理解して欲しくて、疲れを見せつつ口を開く。


「だからまあ…もし一人で行動するってなったら結構警戒してほしいな」

「なるほど…わかりました。ちゃんと自分の身は自分で守りますね」

「私も警戒するようにするね」

「わかってくれたならいいよ」


 とりあえずはナンパが少し減ることを祈る。

 それよりも、今は目の前の問題に対応しよう。


「それより、結局どうする?俺が荷物見ようか?」

「「それはダメ(です)」」

「なんでぇ…」


 とりあえず女の子二人の方が多少は安心できるし、こちらは二人のことをずっと見守れるからかなりいい案だと思ったんだけどな…。


「じゃあどうする?順番に見張るか?」

「それが良さそうですね」

「じゃあ最初は私が見張ってましょうか?」


 まず最初に名乗りを上げたのは佳奈美だった。


「いえ、最初は私が残ります。二人で一緒に楽しんできてください」


 だがここで花音が謎の機転を効かせてくれ、柊はそれをありがたく受け取る。


「じゃあそうするか。佳奈美、行こうぜ」

「あ、うん。ありがとうございます」

「いいえ。楽しんでくださいねっ!」


 花音からアイコンタクトを送られる。この人、わざとやってるな?


 でもまあ、そこまで悪い気はしない。だって好きな人と海で二人きりになれるのだから。そんなの最高すぎるだろ?


 というわけで柊は佳奈美を連れて海に向かって歩いて行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ