83 最高の瞬間!!
「おはよう」
「おはようございます」
「おはようございますっ!」
夏の強い日差しに当てられる中、三人は家の前で合流した。
「今日は暑いですね〜」
「そうですね〜。でもそっちの方が海を楽しめますよねっ!」
「確かにそうかもな」
今日は夏という名の通りかなり暑くて、海水浴をするにはもってこいの日だった。
「さて、では冷たくて気もいい海に向かって、出発しましょう!!」
「はいっ!!」
「ああ」
そこでテンション高めの花音が拳を大きく掲げ、それに続いて柊と佳奈美も拳を上げた。そして気合を入れた後、三人は海に向かって出発した。
電車に揺られ、近くの駅から汗をかきながら海水浴場まで歩いて行って。およそ一時間程度で目的地に到着する。
「着いた〜!!」
佳奈美が声を上げながら見つめる先には、一面に広がる青い海があった。その海面は太陽に照らされてキラキラと輝いていて、さらに空は海と同じように青くて壮大な景色が広がっていて。
それを見た瞬間、柊は今日を選んだことを喜んだ。
「いや〜、いい景色だな。いい天気だし海も綺麗だし、今日にしてよかったな」
「そうですねっ。これだけ綺麗だとテンション上がりますねっ!」
「確かに」
まああなたは毎年海来る時テンション高いけどね。
でも今年はなんか今まで以上にハイテンションな気がする。それは多分、佳奈美がいるからだろう。
「早く行きませんか!?私ずっと楽しみにしてたんですっ!!」
「ふふ、佳奈美ちゃんは元気ですね」
「まあそれが佳奈美の良いところだろ」
「ですね。じゃあ私達はあっちで着替えてきますね」
「ああ、出口付近で待ってる」
既に楽しそうな佳奈美に、花音は後ろからついて行った。それをある程度見届けた後柊は荷物を運びつつ場所取りをし、そこでこっそり服を脱いで水着姿になった。
「ふぅ、水着着てきて良かったな…。おかげで準備に集中できる」
ちょっとした準備だけでも滴ってくる汗を拭いつつそう呟く。その言葉の通り、柊は二人を待つ間に様々な準備に着手する。テントの設営、飲み物や荷物の確認、お財布の確認…。
そんなこんなしているとある程度時間が経っていて、花音との約束を忘れそうになってしまった。
「あヤベ。姉さん達迎えに行かないと」
でもそこでなんとか思い出し、作業を中止して彼女達のもとに向かった。するとそこでちょうど二人が着替えを終えてこちらにやってきて、美しい少女二人の水着とご対面することになった。
「あ、柊!」
「………」
まずは一言だけ。
(最高すぎる…ッ!!!!)
明らかに目の前の空間だけ輝いている。それは周りから見ても同じで、近くの全ての人間の視線が集約されている。
でもそれも無理はない。こんな絶級美少女が二人もいて、しかもとても可愛い水着姿を披露しているのだから。
「ふふ、この水着どうですか?♪」
「……」
「あら、似合いすぎて言葉も出なくなりましたか?」
「……」
花音の言う通り、柊はこの最高の光景を前に話すことを忘れてしまっていた。
二人の圧巻の水着姿。それはまるで天使が水着姿で降臨したかのようで、脳天を雷で撃たれた感覚だった。
「そ、そんなにジッと見られると恥ずかしいよ…」
「っ…!!そ、そうだな…」
そこで佳奈美が恥ずかしそうに身体をもじもじさせながら声を上げ、柊も自分が置かれた状況に気がついた。
「えと…二人とも滅茶苦茶可愛いよ。冗談抜きで見惚れるぐらいに」
「っ…!?」
「ふふ♡ありがとうございます♡」
柊の言っていることは本当のことである。本当に健全な男子高校生なら誰でも見惚れてしまうぐらいに、二人の水着姿は魅力的だった。可愛くて、美しくて、大人っぽくて。色っぽくてセクシーで、それから…。
これ以上考えるのはやめておこう。でも柊以外の人間も同じようなこと、あるいはその先まで考えている可能性が高いので、用意していた作戦を実行することにした。
「じゃあえと、二人ともとりあえずこれ着てくれ」
柊は焦る気持ちを隠しつつ二人に上着を渡した。でも二人はこちらの意図を理解してくれず、疑問そうな眼を向けてくる。
「??なぜ上着を?」
「だって…なぁ…」
他人からそう言う目で見られてしまってすごく嫌だからなんて言えない。そんな独占欲むき出しのヤツ、キモいだろ?
いやこれは独占欲ではないからセーフ。そう、ただの嫉妬だからセーフ。
「二人が可愛すぎるから周りから見られるんだよ…」
「っ!?」
「なるほど…つまり柊は私達の水着姿を独占したいんですね?」
「っ…いやそうじゃないけど」
見透かされてしまっていてすごく癪だが、まあこちらの意図を理解してくれて上着を着てくれるならそれで良い。
「ふふ♡まあそういうことにしておきましょうか♡せっかくですし、この水着姿は他の人が見えないところでじっくりと見せることにしましょうか♡」
「…」
いや別にわざわざ人がいないところで見せびらかさなくても良いんだよ?もう脳に焼き付けたから。
「佳奈美ちゃんもそれで良いですよね?♡」
「は、はい…」
「じゃあこの柊の上着、着ましょうか♡」
そうして二人は綺麗な水着を封印した。すると周囲の人間がガッカリしたように立ち去っていったので、効果覿面ということがわかった。
「んじゃ、とりあえず移動するか。ちょっと手伝ってほしいことあるから」
「はい!いきましょうか!」
「はいっ…!」
終始佳奈美は緊張しているが、褒めてもらえて嬉しそうでもあった。でもやはり肌を男に見せるのには抵抗がありそうだったので、上着を羽織らせたのは正解だった。
そんな我ながら天才とも言える判断にあぐらをかきつつ、既にとってある場所に二人を案内した。




