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80 恋敵


佳奈美(かなみ)ちゃんは(しゅう)のことをどう思ってるんですか?」


 二人が水着を購入した後、フードコートでの出来事。花音は興味本位で佳奈美にそう質問したのだが、彼女は思いの外冷静に対応してきた。


「ん〜…大切な友達ですかね」


 もっと焦りながら頬を赤くしたりすると思っていたが、彼女は余裕そうに笑みすら浮かべていた。つまり、彼女の発言は嘘である。

 そういう確信を胸に、佳奈美に訊き返した。


「そうなんですか…。他には何かありませんか?」

「他に、ですか?」

「はい」


 佳奈美はあくまで本音を言うつもりはないらしく、これはもう直接的に質問をして驚かせることが一番いいだろう。そう考えた花音は思い切って佳奈美に直接的な質問を投げた。


「佳奈美ちゃんは柊のことを好きなんですか?」

「っ!!??」


 作戦通り。彼女はビクッと身体を跳ねさせ、こちらの質問が図星であることを示してくれた。


「ま、まあその、友達として好きですよ…!!」


 でもまだ彼女は隠し通すつもりで、そういう見苦しい発言までしてきた。


 だがしかし、流石にもう遅い。こちらからすればほぼ確定していたものを完全に確定させただけなので佳奈美の言い訳は通用しない。


「ふ〜ん、そうなんですね♡」


 弟の話とはいえ、やはりこういう話を聞くとつい気分が上がってしまう。


「佳奈美ちゃんは柊のことが好きなんですね♡」

「はい…友達として…」

「異性として!♡」

「……」


 いい加減本人に認めさせようと強気に出ると、佳奈美はもうばれていることを察して頬を赤くし、最後には小さく頷いた。


「は、はい…」


 その瞬間、柊と佳奈美が両想いであることが確定した。


「あの…!絶対柊には言わないでくださいね…!!」

「ふふ、わかってますよ♡乙女の約束ですっ」


 多分言ったら柊は相当喜ぶだろうな。でもそんなことは元からするつもりはない。だって柊のことは絶対に渡したくないし、あとこの焦ったい関係を見ているのは楽しそうだし。

 そんなほぼ後半の理由だけのために柊に言うつもりはない花音はであるが、だからといって無条件でそんなことをしてあげるほどお人好しではない。


「でももちろん無条件というわけではないですよ?」

「え?」

「そうでないと私、つい口が滑ってしまうかもしれません…」

「!!っそれは困ります!!」


 自分でも悪い女だとは思う。けど、こういうことをしている時が二番目に楽しい!!


 あ、一番は柊とイチャイチャしている時ね。


「だったらほら、出すもの出してもらいましょうかね?」

「っ__な、何がお望みですか?」


 思いの外佳奈美はノッてきてくれたので、花音は迷わずに要求を投げかけた。


「ふふ。じゃあ、柊の好きなところを教えてください♡」

「……え?」

「あら、それではご不満ですか?なら申し訳ないのですが柊に言うしか__」

「言います!言いますから!!だから柊に私の気持ち言うのだけはやめてください!!」


 予想通り、佳奈美は結構単純だった。下手をすれば騙されることとかもありそうだが、そこは柊にどうにかさせるとして。それより今は、この単純さを利用させてもらおう。


「じゃあ早速。佳奈美ちゃんはいつ頃から柊のことが好きなんですか?」

「そ、れは…多分、出会った時から…?」

「え!?もしかして一目惚れですか!?」

「そうなのかもしれません…でも彼を好きだって気づいたのは、二ヶ月前ぐらいですね…」

「そ、そんなに前から…」


 てっきりキスをした時ぐらいだと思っていた。でも彼女はそれよりも前から柊のことを好きだったらしく、我が弟ながら何を待たせているんだという気持ちになった。


(というか、二ヶ月前…?あれ、もしかして柊と同じぐらい…?)


 思い出してみれば、柊が佳奈美のことを好きだと言い始めたのも二ヶ月ぐらい前だ。


「もしかして、その二ヶ月前に何かあったんですか?」


 自分の知らないところで二人が好意を寄せ合う原因となったことが発生していたのではと思い、咄嗟にそう質問をした。すると佳奈美は当時のことを思い出しながら少し上を向いて話し始めた。


「その、柊が私の家に来た日のことなんですけど…」

「!?その日って…」

「??どうかしましたか?」

「いえ、続けてください…」


 花音が反応したのには訳がある。


(確かその日って柊が自分の気持ちに気付いた日じゃ…)


 その理由とは、二人の共通点についてだ。佳奈美の言っていることが本当なら、二人は同じ日に自分の気持ちに気付いたということになる。そんな信じ難いほどロマンチックな展開、完全に予想していなかった…!


(これは…テンションが上がってきましたね!!)


「__そしてその時、お母さんに『異性として好きなの?』って訊かれて」

「なるほどなるほど!」

「…それで私はどう思ってるのかなって考えると…胸の奥が熱くなるような感じがして」

「!!なるほど!それで好きなんだって気付いたんですね!!」

「は、はい…」


 佳奈美はこちらが急にハイテンションになっていて少し驚いているが、そんなのはどうだっていい。


 なぜなら、恋敵となる相手が自分の腹の中を晒してくれているのだから!!


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