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78 えっちですねっ♡


 結局海は一週間後の平日に行くことになった。別に三人は夏休みだから平日でも休みだし、休日だと混むと予想したから。そんなわけでみんな仲良く来週海に行くことが決定したわけだが、それで話は終わりではなかった。


 今現在、佳奈美(かなみ)花音(かのん)は大型ショッピングモールを訪れていた。


「さて、海は来週に控えていますが、ここが私たちの第一の戦場です」

「…はいっ」


 二人は前線に赴いた兵士のように目をギラつかせ、歩みを進めて行った。そして早速入店したのは、このショッピングモールでも一番大きい水着ショップだった。


「おお〜、たくさんありますね」

「これなら選び甲斐がありますねっ。さあ、(しゅう)をメロメロにする水着を選びましょうっ!!」

「は、はいっ!!」


 花音は相変わらず柊のことをメロメロにするつもりである。でもそんなことをされてしまうとこちらに目を向けられなくなってしまう可能性があるため、気合を入れて柊に満足してもらえるような水着を選ぶことに決めた。


 そして最初に向かったのは、セクシーな水着が並んでいるコーナー。そこにはやはりスタイルのいい女性たちが沢山いて、佳奈美はつい一歩後ろに下がってしまう。

 でも花音はなぜか対抗心を燃やされたように一歩一歩と前に進んで行っている。


「ん〜…これなら露出が多くて柊の目線を…いや、こちらの方が柊は好みなのでは…?」


 花音は布面積の少なめの水着を見つめながら柊の理想とする物を吟味している。


(えぇ〜!?花音さんそんなえっちな水着で行くつもりなの〜!?)


 今花音が見ている水着はセクシーというよりもえっち寄りな水着に見えた。でも彼女はそんなに気にしていない様子で見ているので、彼女に負けたという気を抱いてしまう。


(確かに花音さんのスタイルならああいうのも似合うだろうけど…私なんかじゃ…うう〜〜っ!!)


 佳奈美は自分のことをあまり理解していないのでこういうことを考えているが、彼女も十分抜群のスタイルをしている。でもやはり自分よりも花音のことを見ているのでそのことには気づかず、ただ花音の身体を見ながら劣等感を抱いている。


(いや…!ここで花音さんにあんな水着を着られると私が普通の水着を着ても見劣りしちゃうよね!!だから私もセクシーな水着に挑戦しないと…!)


 そこでなんとか対抗心を取り戻し、花音の近くにあるセクシーな水着を見て回った。そしてそこで佳奈美が感じたのは、圧倒的な羞恥心であった。


(無理無理無理…!!こんな恥ずかしい水着柊の前じゃ着れないよ〜っ!!)


 今までの人生で一人以外の男の人に肌なんて全然見せたことがないから、こんなほぼ裸の水着なんて恥ずかしいに決まっている。しかもそれを好きな人に見せると考えると、頭が爆発してしまいそうになる。


 でもそこで、佳奈美は前世の記憶を思い出した。


(そういえば…リオにはたくさん水着見せてあげてたよね…毎年の飽きずに数ある中から一つだけ選んで、それを海で見せてあげて…リオ、毎回すごく喜んでくれてたなぁ)


 その記憶は、前世で最愛の人に喜んでもらいたくて水着を選んだものと、それを見せてあげてたくさん喜んでもらったもの。そのどちらもが佳奈美にとってかけがえのない記憶で、そして今の自分を勇気づける材料になった。


(だから多分…柊も喜んでくれるよね…!!そもそもリオにはその、裸だって…たくさん見られてるわけだから…。だからこんなの、それに比べたら全然恥ずかしくなんてないよ!!)


 かなり極端な考え方で自分を説得したが、結果的にそれで水着選びが捗り始めたのだから問題はない。


 そして何個か良さそうな水着をピックアップし、花音と共に試着室に向かった。先に佳奈美が中に入り、服を脱いで、水着を着ていく。


(大丈夫…だよね?花音さんならきっといいって言ってくれるよね…?)


 今来ているのは、赤を基調とした布面積の少ないセクシーな水着。これなら柊の心を掴むことができると考え、佳奈美は期待を胸にこの水着を試着した。


 そしてまずは第一関門、花音にいいと言ってもらうという試練のため、カーテンを開いた。すると花音と近くに居た試着待ちなどの女性たちが一気にこちらに目を向け、心臓が大きく跳ねるのがわかった。

 でも問題はない。柊に喜んでもらえると考えたら、こんな一瞬の恥ずかしさなんてきっと乗り越えられ__


「えっちな水着ですねっ♡」

「…………」

「まさか佳奈美ちゃんがそこまで大胆だとは思いませんでした♡」

「……………………」


 もう普通の水着を選ぼうと思った。


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