55 あの人への気持ち
「「いってきます」」
その後は特にな何もなく普段通り朝の支度をし、二人はいつも通りに家を出た。
「あ、おはようございます。柊…くんと…
花音さんっ」
玄関の扉を開けて少し進んだところには千年に一人の美少女がいた。彼女は透明感のある銀色の髪をなびかせ、紫色の綺麗な目でこちらを覗いている。
「おはようございます、佳奈美ちゃん♪」
そしてこの隣で美少女に笑顔で挨拶をした彼女もまたとんでもないほどの美少女だ。こちらの少女は見た目もそうだし、大人っぽいところも一つの魅力である。
でもまあ、こちらからすればそれは全く魅力には見えないんだけど。それは単純にこの美少女が姉であるからという理由である。こちらは毎日のように愛を囁かれいてすごく迷惑しているというのに、彼女は呑気に笑ってやがる。それには流石に不満を覚えたため、姉にはジト目を向けておく。
「なんで姉さんはそんなに嬉しそうなんだよ…」
「ふふ♡それは内緒ですよっ♡」
多分この人、すごく嫌なこと考えてるぞ?これはあくまで予想だが、花音はこちらの恋心をおちょくっている。
あ、そうそう。ちなみにだが、この柊という少年は目の前にいる佳奈美に恋をしている。それを花音は知っているから、今こうやって対面した時にニコニコと笑ってやがるのだろう。
(このヤロ…後で説教してやる…)
こちらの恋心も遊びではないため、それを弄ぼうとしている人はちゃんとわからせないとな。というわけで花音への説教は確定したわけだが、ちょうどその頃に佳奈美がこちらに近づいてきた。
「柊くん…?顔赤いけど大丈夫…?」
「え!?あ、ああ…!大丈夫大丈夫…!!ちょっと暑すぎて赤くなってんのかもなぁ…」
「そっか。まあ最近日差し強いからね。日焼け対策ちゃんとしておかないと真っ黒になっちゃいそう」
「そ、そうだな…!ちゃんと対策しておかねぇと…!」
(ああもう…!全然目見て話せねぇ…!!こんなんじゃバレバレじゃねぇか!!)
佳奈美が近くにいるというだけで胸が高鳴る。そして気づけば目は明後日を向いていて、それを佳奈美の方に戻すので精一杯だった。それでも明らかに挙動不審だったので、佳奈美に様子がおかしいことを勘づかれそうになった。でもそれはなんとか回避したため、頑張って心を落ち着けるように努めた。
(静かにしろ心臓…!マジで聞こえるだろうが!!)
柊からして、心臓の音はもはやスピーカーから爆音で流された音楽のように響いていて、近くにいる好きな人に聞かれないか心配になる。
「え〜?私真っ黒にはなりたくないですよ〜」
「似合いそうだと思ったんですけどね〜。でも仕方ありませんね。それだと柊が困ってしまいますし」
よし、とりあえずバレてはなさそうだな。ならいいんだ。これならこの場は凌そう__
「え…????」
ちょっと待て。今、なんて言った?
(俺が困る…?一体どういう__)
柊は言葉の意味に気づいてしまった。
「おい待て待て待て待て!!何言ってんだよ!!??」
「あら♡柊にとっての目の保__」
「口を塞げ!!!!」
「ど、どういうことなの…?」
「佳奈美さんは気にしなくていいからな!!ただやっぱり佳奈美さんは白くて綺麗な肌が似合うなっていうだけだから!!」
「…そ、そうなんだ…」
ん?あれ?なんか自爆してね?
だってさ、結果的に佳奈美の頬を赤くしてしまったんだから。
(え???今俺なんて言った…???)
なんか、口が勝手か佳奈美のことを褒めていた気がするんだが…。これが好きという感情なんだろうか?って、そんな場合じゃないな。
とりあえずこの雰囲気をどうにかしないと、下手をすれば気持ちに気づかれそうだから急いで話を変える。
「そんなことより!!早く学校行くぞ!!じゃないと遅刻しそうだし!!」
「う、うん…!!そうだね!!」
「まだ時間的には大丈__」
「よし行こう!今すぐ行こう!!」
とりあえず花音は黙らそう!!本当に暴露されそうだから!!
「さあ、今日は何があるかな〜〜!」
「柊くんは元気だね…」
「そりゃもう、俺の取り柄だからな!!」
もうなんでもいい。この雰囲気を脱却できるなら。なので柊は早足で歩き始め、二人の話題を強制的にこちらに向けさせた。
「行くぞ〜!」
「ちょ、まって〜!」
「ふふ♡柊はいつも通りですね♡」
胸の高鳴る鼓動を内に秘め、赤く染まる顔を見られないように先頭を歩いた。




