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40 大人と高校生


 二人は少し道を歩いて行き、数分後には目的地であるカフェに到着した。


「いらっしゃいま…柊くん!?それにこの前の女の子!」

「こ、こんにちは…」


 もしかしたらまた気まずそうな目を向けられるのではと考えていたがその予想は完全に外れてしまい、隣にいる佳奈美(かなみ)も意外そうな目で店員さんを見ていた。


「また、来ました」

「嬉しい〜!ありがとう!」


 美少女が好きな店員さんはマジで嬉しそうにテンションを上げて両手を叩き、直後に軽い足取りで席を案内してくれた。そこに二人は腰をかけてゆっくりしようとしたのだが、店員さんがここぞとばかりに話しかけてくる。


「そういえば、まだ名前を訊いてなかったよね?お名前、教えてくれないかな?」

「えと…香賀(かが)佳奈美と言います。よろしくお願いします」

「佳奈美ちゃんかぁ。いい名前だね。よろしく〜」


 店員さんはそれはもういい笑顔を見せていて、佳奈美も心の中の緊張が解けたように打ち解けて行く。


「あの、店員さんおすすめはありますか?」

「あるよ〜。私はね、ブラックコーヒーを飲みながら甘いロールケーキを食べるのが好きなの♪だから、私のおすすめはそれね♪」

「え…?」


 なかなかいい感じで打ち解けていけそうだったのに、店員さんの発言によって佳奈美の目からは困惑の二文字が浮かんでいた。でもそれもそのはずで、普通に考えて女子高校生がブラックのコーヒーなどおすすめされても飲むはずがない。JKといえば甘い食べ物には甘い飲み物!みたいなのが定番(なの?)であるため、佳奈美からしてみても店員さんのおすすめはかなり理解し難いものがあるようだった。


「えっと…それはとても良さそうな組み合わせですね…。でもその、私にはブラックは早いですかね…もう少し甘いものがよさそうです」

「え〜、そうなの?でもそうね、女子高校生がブラックなんて飲まないわよね」

「はい…」

「なら煎茶とかはどうかしら?これがまたケーキの美味しさを引き立ててくれていいのよね〜。あ、ちなみにこの組み合わせは秘密にしているんだけど、今回は特別に佳奈美ちゃんに教えてあげるね」

「は、はい…」


 なんでさっきから苦い系しか行かないの?甘い飲み物だって言ってんだろ。と言ってやりたいところであるが、そんなことをすれば拗ねられてしまいそうなのでそんなことはしない。それよりももっと単純な解決方法を柊はとっくに思い付いていて、佳奈美にメニューを見せながら話しかける。


「佳奈美さん。多分だけど、佳奈美さんはミルクティーとかココアとかそういうやつの方が好きなんじゃないか?」

「え?まあ…うん。そうだね」

「俺のおすすめでよければなんだけど、ミルクティーはどうかな?前にココア飲んでだと思うんだけど、ミルクティーはまた全然違う美味しさがあってケーキによく合うんだ」

「へ〜、ミルクティーかぁ…」


 佳奈美は顎に手を当てて思考を巡らせ、数秒後に店員さんの方を向いて口を開いた。


「じゃあ、ミルクティーをお願いします」


 柊の言葉に乗っかってミルクティーを頼むと、店員さんはあからさまに表情を曇らせた。


「…うん。そうだよね。私のおすすめなんか興味ないよね。ごめんねおばさんの好みに付き合わせて。高校生がこんな苦いもの飲まないよね…」


 その通りです!!ようやく気づいたか!!

 柊が姉の花音(かのん)と共に初めてここに来た時も同じようなものをおすすめされて結構困ったりしたのだが、これでようやく被害者がいなくなるのか。それはとても素晴らしいな。というか、この店員さんまだ二十代後半とかのはずなのに好みが結構特殊なんだよな…。その年齢の女性ならまだまだ甘いものばかり飲んでそうなイメージがあるけど。

 でもそんなのはあくまで柊のイメージにすぎないからたまたま彼女に当てはまらなかっただけで、別に悪いとかそういうわけではない。ただそれを美少女を見つけるたびにおすすめするのはやめた方がいいと思う。と言えたらいいのだが、そんなことをすればマジで無理やり好みを変え始めそうだからやめておいて。とりあえずこの微妙な空気をどうにかするためにも柊は佳奈美に提案をした。


「じゃあその…おすすめのロールケーキをいただけばいいんじゃないか?」

「あ、そうだ!ロールケーキお願いしてもいいですか!?」

「え!いいの!?」

「はい!」

「…」


 単純すぎない?いい加減感情の変化が激しすぎて風邪ひきそうなんだが。でもなぜか佳奈美の方は大丈夫なようで、店員さんとニコニコと笑みを交わしている。


「柊くんはどうする?」

「あー…俺はいつものヤツで」

「はーい♪」

「それだけで通じるんだ…常連さんだね…」

「まあ、結構通ってるしな」

「そうなんだ…」


 なぜか佳奈美は何かを期待しているようにもじもじしているが、一体何を考えているのかはよくわからなかった。でもこの後何も言わなくて少しだけ拗ねたように頬を膨らませられたのはなんでだろうか。そんなの、鈍い柊がわかるはずがなかった。


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