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21 話は聞こう


「__というのが生徒会のお仕事になりますかね」


生徒会の説明に半ば強制的に連れてこられた(しゅう)花音(かのん)の話を聞いてなんとなく頷いてみるのだが、やはり心の中ではあまりピンと来ていない。


「へー、結構楽しそうじゃん」

「思ってないですよね?」

「いや、やりがいがあってとても素晴らしい仕事だと思うけど__」

「思ってないですよね?」

「……ああ」


なんで普通に心を読んでくるんだ。それは流石に姉の領分を超えているぞ。まあだからと言ってこちらにはどうすることもできないため、諦めて正直な感想を伝える。


「まあ正直、やりがいどうこうよりもめんどくさそうっていうのが勝ってるな。多分やってみれば考えが変わるんだろうけど、そもそもやる気が起きないというか」


柊は花音や今この場にいる生徒会役員二人に正直な感想を述べ、それについて生徒会長が深く頷いた。


「その気持ちはすごくわかるわ。私も今はこうして生徒会長を任されているけれど、生徒会に入ったばかり時は面倒だと思うこともよくあったから」

「え、そうなんですか?」


麗沙(れいさ)のすごく意外な話を聞いて驚きを表したのは今年生徒会に入ったばかりの佳奈美(かなみ)であり、彼女に対して花音が説明を付け加えた。


「麗沙ちゃんは元々先生にお願いされて生徒会に入りましたからね。なので当時はあまり自分の意思はなかったんですよ」

「そうだったわね…。先生に頼まれて嫌々入ったと言った方がわかりやすいかしら」

「ふふ、あの頃の麗沙ちゃんは結構目が死んでましたよね」

「ちょ__後輩の前でそれはやめてっ!!」

「へ〜、目が死んでる四宮(しのみや)さんですか…。想像できないですね」

「確かに」

「もぉ…花音…!」


威厳のある先輩を見せつけようとしていたらしい麗沙は突然の暴露によって一気に威厳が薄れていって、花音から可愛らしいものを見る目で見られるようになってしまった。


「ふふ、ごめんなさい。でも今日は生徒会について話すんですから、こういう先輩の経験談とかもちゃんと話した方がいいかなと思いまして」

「っ…それは、そうね…」


麗沙はあまりに強すぎる友人に敗北し、眉間にシワを寄せて悔しがることしかできなくなる。それを見た花音はなぜか嬉しそうにニコニコしていたのだが、直後に何かを思いついたように声を上げた。


「あ!そうですよ!経験談ですよ!」

「ん?それがどうした?」


花音の突発的な大声に少し戸惑いつつも質問を投げてみたのだが、花音はそれにしっかりと答えてくれる。


「こういう生徒会のしんどい部分だけでなく楽しい経験談も話さないとですよ!じゃないと少なくとも佳奈美ちゃんが怯えてしまいますよ!!」

「確かにそうね…ごめんなさい香賀(かが)さん。こんな話ばかりされてもモチベーションが下がる一方よね。生徒会には楽しいこともたくさんあるから、よければ話を聞いてくれると嬉しいわ」

「わかってますよっ。花音さんが楽しそうにお話ししてくれましたので」

「ふふ、相変わらずね。花音は」

「事実を話しただけです」


花音は自信満々に胸を張っていて、まるで子供のように誇らしげにしていた。だがその経験談を散々聞かされてもう何も感じなくなってきている柊にとっては、花音の話など割とどうでもよくて。


「で、聞かせてくれますか?生徒会で楽しかった話」

「ええ、もちろんよ」

「任せてください!!」

「姉さんには訊いてない」

「なんでですか!?」

「だってアンタの話聞き飽きたから」

「ガーン…!!」


ま、ブラコンの姉が弟にこんなこと言われたらそうなるわな。それをわかってやっているんだけれども。

普段やられている分のお返しだと思えばかなり爽快感があるのだが、柊も鬼ではないため少し心を痛めつつ…。


なわけないだろ。


「姉さんの話はどうでもいい。四宮さん、ぜひあなたの話を」

「ふふ、花音に容赦ないのね」

「それはもちろん。姉さんだって容赦ないから当然です」


柊は心の底から感じていることを真顔で話し、麗沙や佳奈美に花音という人間の残酷さを理解させようとした。すると佳奈美は少し考え込むような目つきをしながらそれに反応を示してきた。


「なんか…姉弟だねぇ…」

「…?どういうことだ?」

「ああいや、別に深い意味はなくて。なんていうかその、私一人っ子だからそういう姉弟の絡みとかに憧れあって」

「へぇ…」


柊は佳奈美の言葉を聞き、そしてそれに正直な意見を飛ばした。


「やめといた方がいい。ストレスが溜まるだけだ」

「がーん…」

「そ、そうなんだ…」

「柊くん…?そろそろやめておいた方が…」


花音の覇気のない悲しみ方をみた麗沙は柊の口を止めにかかったのだが、柊はなぜかこのタイミングで普段の不満を爆発させた。


「家にいても毎秒絡んでくるしその内容も俺を子供扱いするような内容ばっかりだし。俺はもう高校生だって言っても全然話聞かないしたまに心読んできてプライバシーはないのかって思うし気づいたら俺の部屋に__」

「……」

「あ…もう言葉も出なくなっちゃいましたね…」

「とりあえず、柊くんを止めましょうか」


花音よ、これが弟の意見だ。それを真摯に受け止めてこれからはこちらの意見もちゃんと聞き入れるように。


でないと、マジで泣いちゃう。


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