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20 生徒会長


あれから数時間後、ようやく昼休みを迎えた教室内はかなりの騒がしさに包まれていて、友達がほとんどいない(しゅう)はどことなくいたたまれなさを感じていた。


だがしかし、そういうところにも気づいてくれる多数少ない友人が隣の席に座っているため、彼女は優しい目つきでこちらに話しかけてくれる。


「ねぇ、良かったらお弁当一緒に食べない?」


昨日仲良くなったばかりの佳奈美(かなみ)は楽しそうな目つきでこちらを見ていて、柊は心底それに応えたいと思った。


でも申し訳ないが、佳奈美の気持ちに応えることはできない。


「ごめん…実は姉さんと約束してて…」


本当に心が締め付けられる思いでそう言い放ったのだが、佳奈美は思いの外笑みを向けてくれて。


「ううん、大丈夫だよ。花音(かのん)さんとの時間を楽しんでねっ」


ここでこちらを捕まえられなかったら自分だって一人で昼食をとることになる可能性があるだろうに、彼女はニコニコとこちらの背中を押してくれる。


それを見るとさらに申し訳なさが加速していくのだが、ここで柊はあることを思い出した。


「あ、そういえばさ、佳奈美さんって生徒会に入ったんだよな?」

「うん、そうだね」

「じゃあもし良かったらなんだけど、今から生徒会室に行かないか?実は姉さんとそこで約束してて」

「え…?」


先程断ってしまった手前少し気まずいが、柊はちゃんと断った理由も含めて説明を始めた。


「昨日突然姉さんに生徒会の人と三人で話さないかって言われて…。だから今日は申し訳ないけど断ろうって思ったんだけど、よくよく考えてみれば佳奈美さんも生徒会役員だからそこにいても問題ないかなって思って」

「そうなんだ…」


佳奈美はまだ状況をあまり理解できていない様子であったが、それでも可愛らしい笑を作って頷いてくれた。


「うん、わかった。一緒に行こっか」

「ああ」


柊と佳奈美は弁当を持って教室を出て、共に生徒会室に向かった。


そして生徒会室に着くなりノックをし、ちゃんと許可を得てから中に入った。


「「失礼します」」

「あら、佳奈美ちゃんも来たんですね」

「すいません突然…」

「全然大丈夫ですよ!ご飯はみんなで食べた方が美味しいですから!」

「いや今日そういう話じゃないだろ?とりあえず、俺と佳奈美さんに説明してもらってもいいか?」


柊は姉にそう発言をした後、奥の席に座っている美しい女性に目を向けた。


「こんにちは、香賀(かが)さん、柊くん」

「こんにちは」

四宮(しのみや)さん…?」


佳奈美は彼女を見るなりすぐに目を見開き、その人物がなぜいるのかという疑問を抱いた。


「どうしてここに?」

「まあ話せば長くなるのだけれど、簡単に言うと花音に頼まれて柊くんに生徒会について教えてあげてほしいって頼まれたの。それで今日お昼休みに時間をもらってお話ししようということになったのよ」


その四宮という女性は淡々とした目で佳奈美に説明をし、直後にこちらに目を向けて小さな笑みを浮かべた。


「ほら、早く座ってちょうだい?でないとお昼休みが終わってしまうわ」

「あ、そうですね。では失礼します」

「香賀さんも、こちらにどうぞ」

「は、はい…!」


佳奈美はどこか緊張している様子で席についたのだが、それには大きな理由がある。


それはこの四宮麗沙(れいさ)という女性が、佳奈美の直属の上司であるということだ。


もっと簡単に言えば彼女は生徒会長で、佳奈美はその下で働く書記であるということ。


だから佳奈美が緊張しているのは当然のことでありるが、だからといってどうというわけでもない。


と思っていたのだが、そういうのを無視できない性格の花音は場を和ませるために佳奈美に話しかけ始めた。


「ふふ、佳奈美ちゃん、緊張してます?」

「あ、はい…四宮さんとは、あまり話したことがないので…」

「麗沙ちゃんは優しくていい子ですから大丈夫ですよ?」

「はい…。あとその、もう一つにかなることがあって」


どうやら佳奈美には緊張している理由が他にもあるらしく、かなり自信なさげな目つきで麗沙の方を向いた。


「私、本当にここにいても大丈夫なんですか?本当なら三人で話す予定だったんですよね?」

「なるほど、そういうことね…」


質問を受けた麗沙は少し頭を悩ませた直後、佳奈美に目を向けて説明し始めた。


「まあ話すなら三人でと言い出したのは私だったけれど、人数は多いに越したことはないからあなたがいてくれた方が有難いわ。それに、ここはあなたの居場所でもあるから好きにしていいのよ?」

「麗沙ちゃんは柊と佳奈美ちゃんが仲良しなのを知らなかっただけなので気にしないでください」


佳奈美は自分だけ仲間外れにされたのかを心配している様子だったが、この三人がそのようなことをするはずがない。


佳奈美もそれはわかっていたようだが、柊が関わってくるとどうしても気持ちを抑えきれなくなっている。


だがそんなことに柊たちが気づくはずもなく、佳奈美はそれを隠すようにニコニコと笑った。


「そうですよね。ありがとうございます。じゃあ、何から話しましょうか?」

「そうですね…まずは柊の素晴らしさを麗沙ちゃんに__」

「んなことしなくていいだろ!?今日はそんなんじゃないだろ」

「わかってますよ。じゃあ、まずは生徒会の説明を…」


花音は柊を生徒会に勧誘するために、まずは仕事内容について話し始めた。


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