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腹が減っては戦はできヌ  作者: 結野セキ
第三章:成長期

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勇気を出す時

「アリアお願い、付いて来てほしい」


 初めての運転ではあったものの、何とかクラリネに到着した。アリアに会い、行きここでもみんなと同じ説明をする。アリアにはどんな反応をされるだろう、リユンのように、とそんなことを想像しドキドキしていたがアリアは俺の顔をじっと見つめて見透かしたように言う。


「まぁ、ここまでいろいろあったみたいね。それでもここに居るって事は、それだけ覚悟してって事ね?」

「うん」


 アリアには何もかもがお見通しか。少し考えたアリアは「分かった」と頷いた。商品を棚にしまい終わると急いで部屋に向かう。


「準備するから少し時間を頂戴」

「ありがとう!」

「ジュリちゃん、頼みたい事たくさんあるから一緒に来て」

「はい!」


 元気に返事をしたジュリは、アリアと共に中へ入って行った。


「ブロードさんってどこに居るか分かる?」

「呼べば来るわよ」

「いや、そんな訳……」


 冗談交じりに言ったアリアは、大きな声で「ブロードー!」と呼んだ。


「少し待ってれば来るわ、じゃあ!」

「えぇ……」


 アリアとジュリが手を振りながら部屋に入って行って数分。ガチャっと店のドアが開いた。まさかと思い振り向くと、店の中を見渡し、呼んだ相手を探しているブロードさんが居た。


「まじですか、すげぇ」


 心の片隅で少し恐怖も覚えながら、ブロードさんに手を振った。


「アグリ君かぁ、久しぶり」

「お久しぶりです」


 軽く挨拶をしてから本題に入る。

 まずはみんなに言ったように、土砂崩れについて説明した。話し終わると、いつもは見ることの出来ない真剣な顔つきに変わっていた。


「それで、国からの支援が出来ないかと思ってたんですが……」

「なるほどね。正直、支援は難しいだろう」

「そんな! どうして」


 落ち着いた表情でブロードさんの説明が始まった。


「この国、トランはサンドリンを昔から認知はしていた。ただ、サンドリンは独立したの村と自分たちで決定し、納める物も納めていない。そのため当時の国王は、サンドリンをトランの正式な村とは認める事は出来なかったんだ」

「なるほど」


 支援出来ない理由が分かった。ただここまでは想定していた事だ。子供の頃父から教わっていた税の制度、それがあるならもしかしてと考えていた。

 ブロードさんは丁寧に頭を下げてきた。


「すまない……。今の僕には何も」


 国からの支援は期待できない。でもここで諦めてしまってはすべての約束は果たせない。

 それならと、ここで俺はここに来るまでの計画を実行する事に決めた。ごめん、ブロードさん。今からいう言葉は嫌味や脅しに聞こえるだろう。でもこれはブロードさんにしか出来ないし、ブロードさんを信頼しているからなんだ。許してください。俺は、ブロードさんをじっと見て言った。


「ブロードさん、俺の母が死んだ時、あなたは勇気が出ないと何もしなかった」

「え、あ、アグリ君……?」


 ブロードさんは顔を上げ、戸惑いの表情を浮かべている。


「今、勇気を出して、動き出す時じゃないんですか!?」

「僕は……」


 ブロードさんは額に溜まった汗を拭った。こんなに動揺しいているのは初めて見たかもしれない。もしかしたら本人が一番気にしていた所だったりするのかもしれない。

 怒っても無理はない、今ここで逃げ出してもブロードさんは悪くない。それでも椅子から立ち上がる事はなかった。


「何をすればいいんだい……?」


 俺は静かに昨夜考えた案を、ブロードさんに話していく。それを聞くと驚いたように大きく後ろにのけぞり椅子が倒れてしまいそうになった。


「無理無理無理! 無理だよ絶対! おじいちゃんにも父さんも説得しないといけない。トランの地図が変わっちゃう!」

「お願いします!」


 俺は椅子から立ち上がり、床に正座をして深々と頭を下げた。頼む、ブロードさん!!!

 しばらく2人の間に会話はなく、時間が過ぎていく。アリアとジュリの会話だけがかすかに聞こえてくる。


「――分かった」


 静かに呟くブロードさん。


「本当ですか!?」


 勢いよく頭を上げて、ブロードさんを見る。少しの照れくささの中には、心に決めた覚悟が見えた。それを見る事が出来て、何故かは分からないが安心できた。これで計画が進む。


「でも確定ではないからね、失敗するかも」

「大丈夫です。その時はまた考えます」


 ブロードさんとより密な話し合いをしていると、準備が終わったアリアとジュリが出てきた。仕事の引継ぎが終わったみたいだ。

 それからブロードさんは医者を2人捕まえてもらう事に成功し、またブロードさんの権限内の物資も貰う事が出来た。さらに追加でジュリにお願いをする。


「ルツか魔法使いのシャウラさんが来たら、この手紙を渡してほしい」

「分かったわ」

「よろしく頼む」


 その後ブロードさんは家に戻り準備を始める。俺たちはジュリを店に残し、アリアと途中で医者二人を拾って、ジンさんの元へと馬車を進めた。コバトさんにも声を掛けたが、体調が思わしくなく断念することになったが、余っている調理器具を貸してもらえた。

 ブロードさんはサンドリンにて合流となる。支援物資を持って何人でサンドリンに来るのか、俺は楽しみで仕方なかった。

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