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腹が減っては戦はできヌ  作者: 結野セキ
第三章:成長期

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電撃発表

 ジューと音を立てながら、甘く良い香りが部屋中に漂う。昨日準備した甘い牛乳に浸したパンもしっかり染みこみ、この時点で美味しそうだ。喜んでくれるかなとみんなの顔を想像さながら手を動かす。


「おはよー」


 サラがとぼとぼと俺の部屋から起きて来た。まだ眠そうに目を擦っている。


「良い匂い、なーにこれ」


 匂いにつられたのか、台所に来て並べてあるパンを眺める。


「フレンチトーストって言うんだよ。みんなで食べるから起こしてきて」


 始めてみる食べ物に目が覚めたのか「分かった!」と元気に頷き、部屋を出て行った。

 昨日、アルタスと卵を買いに行った時、たくさん買ったのはこのフレンチトーストを作るのに使うためだった。これならいつもの硬く不人気のパンも、柔らかくなるのではないかと考えたのだ。幸いはちみつもあるので期待大だ。


 ひとつずつ丁寧に焼き上げていくと、廊下からぞろぞろと子供たちが起きてきたのが分かった。前にも思ったが、作った物を提供するのは勇気がいるもんだ。母もこんな感じだったのだろう。子供だった俺たちの喜ぶ顔を想像していたのだろうか。


「おはよー。良い匂いするー」

「本当だ、甘い匂い」

「ほら、みんな座ってー。アルタスとリラヤは運ぶの手伝ってー」


 みんなに声を掛けて朝食の準備を始めた。

 みんなの前に並べられていくフレンチトースト。目の前に現れた物を興味津々に見つめる子供たち。それを微笑ましく眺めながら、準備が整った。


「お待たせ、食べようか。今日のご飯は、砂糖を入れた牛乳にパンを浸して、それを焼いた物で、フレンチトーストって名前。はちみつをかけて食べたらもっと甘くなるよ。熱いうちに食べてみて」


 そう言うと「いただきます」のかけ声の下、思い思いに食べ始めた。


「あまぁー」

「これいつものパン!?」

「全然違うね」

「ふわふわだよー!」


 良かった、喜んでくれてる。ありがとうなんて言葉はいらない。みんなが幸せで、笑顔を見ながらご飯を食べることが出来ていればそれでいい。そんな笑顔が原動力になりつつある事に気が付いた。子供の笑顔はすごい力があるみたいだ。サラに救われてきたのも事実。助けられてばっかりだ。

 俺も余ったトーストを頬張っていると、突然ちょんちょんと俺の腕を突かれた。隣に座る女の子『ラーリエ』だ。


「どうしたの?」

「今日行けなくなったって本当?」


 少し落ち込んだ様子で聞いてくる。そうだった、その事をみんなに伝えなくては。ラーリエの頭を撫でながら立ち上がった。


「みんな、今日予定してた事だけど、延期しようと思う。心から楽しめるようにみんなで行ける日にしようと思って、その日まで待ってくれるかな?」


 少しドキドキしながら聞いてみると、案外快くみんな手を上げてくれた。ありがとう。


「それと3つほどお知らせがあるから伝えるね」

「お知らせ?」

「なになに?」


 みんなが俺に注目する中、堂々発表し始める。食べる手を止めた子も居れば、食べ続けている子も居る。


「俺、アリアと婚約しました」

「えぇぇぇ!?」


 その場がひっくり返るほどの驚きと大きな声が響きわたった。小さな子は分からないみたいで、お兄さんお姉さんに「婚約って何?」と聞いていて時間差で驚いている。まぁ、そりゃそうだ。俺も驚いたから。

 そんな声が少し落ち着いてから、2つ目の発表を始める。


「次に、俺のコポーションを作る事になった。農業を中心とした仕事をするコポーションだ」


 俺は続けて、それに関連した3つ目の発表をする。


「そのコポーションが、将来的にこの孤児院を買う事になった。簡単に言うと俺がこの孤児院の持ち主となる」

「えぇぇぇ!?」


 また大きな驚きが部屋を埋めつくした。

 俺はその事の詳細を話して、みんなの今までの生活は変わらない事を伝えると少し安心したようだった。


「この中に、俺の下で働きたいって人が居たら後で教えてくれ、しっかり雇ってやる!」


 アルタスと同じように、働きたいのに働けないと心配する子は多いだろう。そんな子のために俺がしっかり居場所を用意したいのだ。

 そんな電撃発表が終わり、興奮冷めやらぬ内に後片付けをしていると、アルタスに連れられたメセデがやって来た。メセデは年長の1人で思うように足が動かせず、1人では歩くのも難しい子だ。基本はアルタスが傍に居てくれている。2人の間には言動から垣間見える信頼があった。

 何やらメセデから話がらるらしく、アルタスに連れてきてもらったそうだ。


「俺でも、こんな俺でも。仕事はありますか!」


 それを聞いた俺は待ってましたと言わんばかりにニッと笑い、メセデの肩に手を回した。


「何言ってるんだ。こんな俺、じゃないだろ? 俺はメセデに手伝ってもらいたいと思ってるんだけど……、どうだ?」

「はい! やりたいです!」


 その日、何人かが仕事をしたいと名乗りを上げてくれた。名前を書く前に、部屋の掃除、整理整頓や洗濯などをみんなで行い、ダリアさんの負担も少しは軽くなった。

 病気だった子たちも、フルーツなど栄養価が高い物を食べさせて順に元気を取り戻し始めた。



 そんな中イリヤとのお出かけの準備をしていると、アビヤから気になる話を聞いた。


「町にね、何人かお友達が居るんだけど、私より元気の無い子が居たり、怪我をしてる子が居るの」


 聞くと、両親はちゃんと働いている家族らしい。しかし見るたびに怪我の場所が違っていたりすると言う。アビヤから聞く話だけで推察するに、虐待の可能性があるだろう。何が出来るかは分からないが頭に入れておこう。ダリアさんも言っていた通り、多くの子供たちの助けになるため。この施設を有効に活用していきたい。

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