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腹が減っては戦はできヌ  作者: 結野セキ
第三章:成長期

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視察

 ロットと別れ、1人でサンドリンに向かった。こっちから向かうのは初めてなので少し緊張する。話し相手も居ないのでちょっと寂しかったりもした。

 道中、前にも見たことがある場所を見つけさらに不信感が募った。


「ここも、削った跡があるな……」


 何のために誰が削ったのか、災害が起きてしまっている以上見つけたい。また他の場所で同じような事が起こってしまう事があるかもしれない。


 馬も休めつつ進んで行くと、サンドリンが見えてきた。懐かしいと感じてしまったのは何でだろうか。


 リユンやダリアさんに会う事を楽しみにしながら、サンドリンに入る。おそらく時間的には10時頃だと思っていたが、村には人っ子一人見えなかった。不思議に思いながらも、進んで行く。村の復興は確実に進んでいるように見える。仮設的に建てられた家が完成している。近づくと、話し声が聞こえ少し安心した。

 棚田の方もかなり進んでい事が分かった。どんなサイズ感で、何処に田んぼができるのか、大体の位置が目に見えて分かってくるほどだ。でも周りを見ながら進んでも、リユン達に会えない。ちょっと心のどこかに焦る気持ちが芽生えてしまった。


「こらぁぁぁ!」


 村の中心となっている小屋。俺たちが最初、拠点にしていた場所だ。そこに近づいた瞬間、中から大きな怒鳴り声が聞こえた。反射的に体が数センチ浮いてしまった。

 小屋の中を恐る恐る覗いてみると、中には見た事が無いおじさんを囲むリユン達、大工の皆さんが居た。


「あの人ってもしかして……」


 しばらく様子を見ていると、大工さんが一人、また一人と立ち上がる。会議は解散となったようだ。

 ぞろぞろと小屋を出て仕事に向かう大工さんを搔き分けて、リユンに声を掛けた。


「アグリ! 来てたのか」

「うん、今着いたところ。あの人は?」


 俺が目を向けたのは、さっきの会議の中心で何かを叫んでいた人だ。リユンは「あぁー」と気まずそうに声が漏れる。どっちにしろリユンとは話したいし場所を変える事にした。

 リユンと一緒にブロードさんのいる建物に移る。ブロードさんの近くにはダリアさんとベルナムも一緒だった。

 ブロードさんとダリアさんは少し疲れが溜まっている様子だった。


「いやー、案外やる事が多くてね。父にアドバイスを貰いに行ったのは初めてだったよ」


 これまで何度か会いに行っているそうだ。ある意味、外交みたいな感じになるのかもしれない。それもこれもブロードさんだったから出来たものなのかもしれないな。


「それで、リユン。あの人って?」

「あぁ、そうだった。親方だよ。建築家の」


 リユンが大工仕事を教えてもらった人だそうだ。名前はヨシノリと名乗っているそうだ。召喚された人で間違いなさそうだ。リユンの力を借りられているのも、間違いなくこの方のおかげだ。一言挨拶しないといけないだろう。

 俺はすぐに向かおうとすると、リユンとブロードさんに両手を引っ張られた。


「なになに、どうしたの?」

「悪い事は言わない。やめときな」

「僕もそう思うな。会わない方が良い」


 挨拶くらいで大げさな。必死で止める2人に理由を聞くと、その答えは単純で、相性が悪いという事らしい。


「アグリの考え方は効率よりも、安全だろ?」

「そうだな。それで多少遅くなっても構わないと思ってる」


 リユンによれば、その考え方がそもそも違うと言う。ヨシノリさんは技術があれば効率が良くなり、事故も起こらないと断言している。小屋の中で怒られていたのも効率が悪い、無駄な事をやっていないで高い技術を会得しろ。そんな事を言われてみんな仕事に出たそうだ。

 ヨシノリさんのすべての考えは分からない。仕事に励む姿、リユンを含め技術を教えようとしている姿はとても立派だ。でも、すべては健康な命あってこそだ。俺はその事を伝えるべくヨシノリさんの元へ向かう。


「待て待て待て」

「なに!?」


 何で2人とも止めるんだろうか。別に喧嘩をしに行くわけでもないのに。


「アグリ、現場をよく見てみな」

「そうだね。見た方が早そうだ」


 そう言われ、2人に連れられて現場に向かった。

 建設中の建物を指さす2人。中では5人程が大きな紙を囲んでいた。しばらく様子を見ていると、外に出て外観を確認する様子も見られた。はしごを使い屋根に登る前には、不備が無いか確認してから登って行った。


「どう? 問題ありそう?」

「いや、大丈夫そう」

「だろ? だから、無理して会って、全体の雰囲気を壊さない方が賢明かなと思ってさ」


 リユンの考えも一理ある。たまたま立ち寄った俺なんかが壊して良い雰囲気ではないだろう。それに仕事をしているみんなが、俺の考え方も師匠である親方のアドバイスも、バランスよく取り入れてくれている事が嬉しかった。現場はリユンやベルナムに任せている。信頼して委ねることにしよう。


 その後、ベルナム。棚田制作チームにも顔を出した。ベルナムも元気そうで安心した。威勢よく声を張って指示を出し始めている。


「ありがとう、アグリ。道具持って来てくれて」

「これくらいしか出来ないから。作業は順調?」

「あぁ。今の所、計画通りだね」


 怪我人も出る事なく順調に作業で来ているそうだ。

 棚田の正確な位置が確定して、大まかに土の移動が進められている。薄っすらとだが階段のような段差も見えてきた。しっかり畔を作って石を積んでいく。ゴールはまだまだ遠いが確実に進められているようだった。

 今回、ここに来た目的を果たすため田んぼ予定地に登った。


「何するんだ?」

「土が欲しくてね」

「土? またどうして」


 米を作る田んぼ。土の状態がどんなものか確認したいのだ。元は山だった土だ、肥えた土であることを願う。そのために、木箱も持ってきた。ベルナムに抑えてもらいながら土を詰め、帰りの馬車に積んだ。


 それからはブロードさんに国の状況や魔法使いたちの様子を聞いた。聞いただけだが、違和感もなく順調そのものだった。何かお手伝い出来ないかと聞いたが、自分の事に集中と怒られてしまった。すっかり一角の人物になってしまったみたいだ。


 その日はサンドリンで一夜を過ごす事にした。明日の朝、ダリアさんと一緒に降りる予定だ。ヨシノリさんと話せなかったのが残念だが、また話す機会があるかもしれいな。


Next:土

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