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腹が減っては戦はできヌ  作者: 結野セキ
第三章:成長期

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楽しい!

 作業を開始して30分程が経過した。思った以上に日差しが強く、喉がすぐに乾いてしまう。もう少しで村の田植えも始まるし、スポーツドリンクくらい欲しい頃だ。


「いやぁぁぁ!」

「どうしたサラ」


 ナスの苗を植えるため、耕していたサラが突然大きな悲鳴を上げた。近づいて見てみると、足元に大きなカエルが土から出てきていた。サラに起こされ、まだ寝ぼけている。土を頭に乗せながら何が起きたのかカエルも不思議そうだ。


「おぉ、立派なカエルだ。食べるか」

「絶対いや! そんな事するアグリ兄ちゃん嫌い!」

「ごめんって。サラの夕食に混ぜたりしないから」

「嫌いー!」


 ちょっとからかいすぎたのか、走ってライの方に逃げてしまった。

 春に畑を耕していると、よく冬眠中のカエルに出会う。土から出た時は寝ぼけていて、足取りがおぼつかなかったりする。そんなふらふらカエルは、早く二度寝するか目を覚ますかしないと……。


 バサッ!!!


「あっ」

「あぁー!」

「行ってしまわれた……」


 待ってましたと降りてくる鳥に持ってかれてしまうのだ。

 さっきのカエルを持って行った鳥は、満足そうに孤児院の屋根で食事を楽しんでいた。よく見ると、カエルの中から伸びる内臓も見えたりする。これも世界が回るのに必要な事だ。

 そんな様子を見てしまったサラは。結構落ち込んでいた。


「私のせいで……」


 サラのせいでない事は確実だが、これも一種の勉強だ。

 カエルは畑の虫を食べてくれる。そんなカエルを鳥が食べる。鳥が落としたフンは土の中の微生物が分解し栄養となる。人間はそれらを使わせてもらってるに過ぎないのだ。


「そっか……。じゃあ、感謝しないとね」

「そうだな!」


 サラはすぐに俺が言わんとしていた事を理解し、仕事を再開していった。


 次にアルタスを見ると、黙々と作業をしていた。アルタスは背が高いので、きゅうりのネットも張ってもらう。俺の畑では地面に這わせる方法を取ったが、ネットを掛けた方が確実にまっすぐなきゅうりが出来る。


「アグリさん。畝は高い方が良いですか?」


 耕し終わった後、苗を植える畝を作る作業に移ろうとしていた。きゅうりの根は浅く広く伸びていくため畝の高さはそれほど必要ない。そんな事も考えながら、10センチ程度の畝を作ってみた。


「上手くなったねアルタス」

「ありがとうございます」


 柔らかい土を上手く鍬に乗せて山を作る。それを両側からしてやれば、程よい高さの畝が完成した。用意したのは20株。一度畝に並べてみて、株間の均等を計る。実際に並べてみると、1つ余ってしまったので全体的に少し狭めた。大体40センチ弱ほどになった。少し狭いだろうか……。


「きゅうりって何か世話した方が良いですか?」

「うん、もう少し大きくなったら教えるけど、芽を摘んだりすると良いかな」


 その事については大きくなってから直接やってもらった方が早そうだ。少し狭い気もするが、管理をする気があるアルタスのお陰で行き届くことだろうしこのまま植えよう。

 植える前に水をかけてからきゅうりを丁寧に植えていく。さらに植え終わってからは、畝に藁を敷いた。


「アグリさん、これは?」

「土の乾燥を防ぐんだ。出来れば毎日土を見て乾かないように水をやってくれるか?」

「はい!」


 きゅうりはほぼ水分の野菜。よって水の管理は重要だ。昔はマルチシートがあった。それ敷けば、草も防げるし乾燥や泥跳ねも防げた。この世界にはもちろん存在しないが、藁がある。使える物はどんどん使おう。後はアルタスが打った杭にネットを掛ければ完成だ。少しアドバイスをしつつ、アルタスに任せた。


「ライ、楽しそうだな」

「アグリ君、楽しいです。みんなで出来るのが特に」

「そっか、良かった。手が空いたらまた手伝ってくれ」


 ライに頼んでいたのは、かぼちゃだ。畑を大きく使ってしまうかぼちゃ。地面に捕まることが出来るように藁をたくさん敷いてやるのだ。


「ライ、ちょっとしたことなんだが」


 耕してくれた場所に苗を植える印を付けた。そこから蔓が伸びていく方向へ少しだけ傾斜を付けるように土を動かす。


「これで、水たまりにならないからね」

「なるほど、やってみます」


 一度覚えた事をしっかり真似て出来るライ。向上心で満ちる姿が眩しかった。


「みんな、少し休憩しよう!」


 10時頃になったので、一度休憩を挟む。アルタスなんて声を掛けないと作業が止まらないので注意だ。水分を補給し少し体を休ませる。無理をするとすぐに腰が痛くなってしまう。それをほっとくと慢性的な腰痛となる。そんな経験をみんなにはしてほしくないのだ。


「思っていた以上に大変でした」

「そうですね、体に負担もかかりますし」

「私なんて、お兄ちゃんが軽々しくやってたから出来そうって思ったのに……」


 そんな事を話すのが聞こえた。それでも3人は汗を拭き、笑顔だった。


「楽しくない?」

「楽しい!!!」


 真上から降り注ぐ光よりも明るく、熱い返事が帰って来て安心だ。皆が一致した意見だったので嬉しかった。楽しい農業、これからも続けて行きたい。


 この日の作業は順調に進んで行った。ナス、きゅうり、かぼちゃが畑に並んだ。まだまだ小さい苗だが、子供たちの成長と共に大きく育っていく事だろう。

 さらに、みんなが手伝ってくれたおかげで俺も個人的に食べたかったものを植えられた。サラがナスを植えた場所の横に、ピーマンともう1つ。


「アグリさん、これは?」

「あぁ、これなぁ。分からん」

「えっ?」


 ピーマンの種は、父が作っていたピーマンの実の中から取って来たので確実だ。ただもう1種類の苗、葉はピーマンに似てしゅっとしていて細い。この種を入手した時、その実は朽ちていて何か分からなかったのだ。ただ、葉を見る限り、シシトウかとうがらしの可能性が高いと考えている。


「もしかしたら辛い奴ができるかもしれないな」

「楽しみですね」

「そうだな。これも農業の楽しみのひとつかもな」


 今日は誰にも怪我も無く仕事を楽しめた。明日はいよいよ去年から計画を立てていたアレを実行に移す。


「みんな、明日も手伝ってくれるか?」

「もちろん!!!」


Next:コンパニオンプランツ

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