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男女比があべこべな社会で生き抜く 〜僕は女の子に振り回される  作者: わんた
題名未定

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24/38

24話

 お見合いの日程が決まってから開催されるまでのあいだ、女性側からお見合いを断った事例は一軒もない……いや、もしかしたら、時間をかけて詳しく調べればあるかもしれないけど、少なくとも一般常識的として女性から断らない。そう思われている。


 それに社会的に過剰に保護され、女性から蝶よ花よと育てられた男性は、挫折の経験が少ない。いや「ない」と言っても過言ではないだろう。だからこそ、女性から断られたとなると、肥大化した自尊心がひどく傷つき、相手を逆恨みする可能性は非常に高い。


 そんなことはわかりきっている。それでも、さおりさんは僕の近くにいて欲しいんだ。


 しおりさんのお母さんには、しおりさんが僕のハーレムに入ることに同意してもらわないといけないし、お見合いをキャンセルしてもらうことにも同意してもらわなければならない。中間テストが終わったばかりだというのに、やることが山積みだ。


「それで、お見合いの話ってどこまで進んでいるの?」


 ソファーに座ってジュースを飲み、さおりさんの気持ちが落ち着くのを待ってから質問をした。


「お見合い相手はシンガポールの人らしいの。年齢は30歳の専業主夫だったかな?」


「30歳……。年齢はそこまで離れていませんね」


 楓さんのいう通り、二倍程度であれば驚くほどでもない。子作り可能な年齢だし、お見合い相手としては問題はないだろう。


「そうなんですが、身長が150cmで体重が100kgを超えているんです……。一日四食の生活を続けているようで、将来はもっと太るかもしれません……。」


「「うぁ……」」


 みんな思わず言葉を失ってしまった。これは、さすがにない。


 女性が勝手に集まってくる、男性にとって入れ食い状態の世界だったとしても、体型が極端に偏った人は、敬遠されることが多い。それに、女性を癒す内助の功を目指す男性であれば体型にはこだわる。どんなに鍛えても、前世のようにマッチョと呼ばれるほど筋肉がつくことはないけど、腹筋がうっすらと割れる程度の筋肉はつくし、それが理想とされている。


 一日四食といった暴食から、彼の性格が透けて見えてくる。


 断片的な情報からの思い込みかもしれないけど、己の欲望に忠実で、外で働く女性を癒すという男性の役割を放棄している人。そう感じられずにはいられない。


「それでハーレムの女性たちは、よく許しているね」


 だから、自然とそんな言葉が口から出てしまった。相手は人間だ。思いやりの精神が欠けた関係は、長く続くことはない。


「さすがに向こうの状況はわからないけど、子どもは二人いるらしいから、子育てを頑張っているのかも……あ! 子育てはベビーシッターに任せているって、言ってたかも」


「シンガポールでは、子育てをベビーシッターに任せる人も多いみたいだし、相手が言っているのであれば間違いないだろうね」


 この世界のベビーシッターは、幼児教育もできる育児のプロとして雇う場合が多い。特に海外の裕福層であれば、住み込みで働いてもらうケースもあり、幼児教育から炊事洗濯といった様々な業務を取り扱うこととなる。ベビーシッターとは、専門職であり資格が必要な職業だ。


 育児のプロとも言えるベビーシッターを雇っているのであれば、「仕事も子育てもせずに、専業主夫は何をしているのか?」という、一つの疑問が生じる。みんな同じようなことを思ったみたいで「その男性、家でなにしているんだろうねー!」と、専業主夫の仕事を予想し合っている。


「ベビーシッターを一時的に利用するのであれば、いくつか考えられるよ。例えば、下の子を病院に連れて行く時に、上の子の面倒を見てもらう。風邪を引いたから子どもの面倒を見てもらう。ハーレムの女性とデートをするから面倒を見てもらう。とか、かな」


 でも、そんなケースは多くない。なぜなら、男性がいれば国から補助金が出るので共働きをする必要はない。ハーレムが義務付けられているので、体調を崩しても代わりになる人は必ずいる。お金を払ってまで、一時的に子どもの面倒を見てもらう必要性がない。


「でも、専業主夫をしているのであれば、この使い方はしていないと思う。多分、ベビーシッターには、住み込みで働いてもらっていると思うよ」


「働かず、子育てはベビーシッターに丸投げ。彼は家で、何をしているのですか?」


 ここまで話して、最初の疑問に戻ってしまった。


「遊んでるとか……?」

「……」


 この場で話し合っても結論が出ないので、みんな黙ってしまった。


「そういえば! お見合いはいつするの?」


 少し気まずい雰囲気を変えるためなのか、彩瀬さんが質問をした。


「本当は来月の予定だったんだけど、相手の来日する予定が急遽変わって、一週間後になったの。だからお母さんも驚いちゃって、慌てて準備しているところなんだ」


 お見合いをするのであれば、男性をもてなすために、それ相応の場所を用意しなければならない。普通であればすぐに予約ができるはずもないので、色々な場所に頼み込んで会場を確保しようとしているはずだ。さらに、さおりさんのお母さんはお見合いにすべてをかけていた。相当、力を入れているはずだ。


「そこで僕が登場したら、さらに混乱しちゃうだろうね」


 そんな状況で「娘さんをください!」と言いに行くのだから、どういう反応をするのか想像できない。


「やっぱり、さっきの話はなしにする? 私に気を使わなくても……大丈夫だよ」


 今後のことを想像してか、もう一度考え直していいと言ってくれたけど、先ほどの決意を変えるつもりはない。この問題を片付けて三人と仲良く暮らす。そう決めたんだから諦めるわけにはいかない。


「ううん。誰かに渡すつもりはないよ」


 揺るぎない意志を伝えるために、さおりさんの目をしっかり見て返事をした。


「本当に……ありがとう」


 まだ、涙目になりながらお礼を言ってくれた。


「まずは慌てて準備しているという、さおりさんのお母さんに挨拶とご説明をしようか」


◆◆◆


 あの後すぐに、さおりさんのお母さんに電話をして、僕が行くことだけは伝えていて家で待ってもらっている。時刻は16:00。すぐに車で移動して都内にあるマンションに到着した。この最上階に、さおりさんの部屋があり案内をしてもらっている。


「ここが私のお家だよ。準備は大丈夫かな?」

「まかせて。ちゃんとお母さんを説得するよ」

「うん。期待しているね」


 そういってチャイムを鳴らしてから、さおりさんがドアを開ける。廊下の奥にあるドアは閉まっていて、中の様子は伺えないようになっていた。


「ただいま。お母さんいる?」


 奥からドタドタと足音が聞こえたかと思うと、リビングにあるドアが勢い良く開いて、一人の女性が玄関に来る。見た目は30代後半から40代前半で、年齢を感じさせない艶やかな髪は、肩甲骨あたりまで伸びている。さおりさんと同じ優しい目をしていた。


「さおり! 男性を連れてくるって本当!? いまだに信じられないんだけど!」

「お母さん落ち着いて! 私の隣にいるでしょ!」

「うわ! 本当にいる! あ、握手してもらってもいいかな?」

「は、はい」

「もう、手を洗わない!」


 ……似ているのは見た目だけで、性格はだいぶ違いそうだ。さおりさんみたいに落ち着いた人だと思っていたけど、予想と反して活発的なようだ。前向きに表現するのであれば、この世界の女性らしい性格をしていると言えるかな。


「みんなごめんね……。私のお母さんは、男性に会ったことがほとんどないから、なんだか一人で盛り上がっているみたい……」


「あ、そのごめんなさい。男性に会ったのが嬉しくてつい……」


 親娘そろって先ほどの行動が恥ずかしくなったようで、顔を赤くしながら謝罪をした。そのせいで少し変な空気がなってしまったので、彩瀬さんを使ってその空気を変えるべく発言をする。


「大丈夫だよ。なんとなく、彩瀬さんに似ているね」

「確かにそうですね」

「性格は似ている」

「そうかも?」


 彩瀬さんは「全然、似てないよ!」と抗議すると、この場にいる全員から笑い声が出て、さっきまでの空気が一変した。これで仕切り直しができた。彩瀬さんありがとう。


 その後、簡単な挨拶を一通りしてから、リビングにまで案内してもらった。リビングの壁にはテレビがかけられている。下には淡い赤色のラグとガラスのローテーブルとソファーがあり、絵美さんを除く全員がローテーブルを囲うように座っている。


「突然の訪問にもかかわらず、お会いしていただきありがとうございます」


 そういってから、僕の方から話し始め頭を下げる。


「ううん。さおりのお友達であればいつでも来てください。それで、ご用件とはなんでしょうか? さおりからは、ユキトさんからお話があるとしか聞いていません」


 ここで時間をかけても仕方がない。用件をそのまま伝えることにした。


「単刀直入に申し上げます。さおりさんを、私のハーレムに加えさせてもらえないでしょうか?」


「……本気ですか? 最近流行りのハーレム詐欺ですか?」


 ハーレム詐欺なんてあるんだ……。結婚詐欺みたいなものかな?


「他の男性はわかりませんが、僕は本気で言っています。私の母に確認をとりますか?」


「いえ、気が動転して言ってしまっただけなので大丈夫です……本気なんですよね?」


 母親からすれば信じられないのも無理がない。でも、信じてもらわなければいけないので、さおりさんのお母さん――涼さんを見つめて、はっきりと返事をする。


「本気です。ハーレムに入ってもらい性格が合うようでしたら、その先まで考えています」


「……そこまで覚悟を決めていらっしゃるんですね……さおりから、お見合いの話は聞いていますか?」


 僕の気持ちが伝わったのだろうか、納得してくれた。

 お見合いは開催=結婚の図式がなりたっているため、キャンセルしてもらうしかない。


「聞いています。できればお見合いをキャンセルしたいと思うのですが、大丈夫でしょうか?」


 涼さんは一瞬考えるような仕草をしていたけど、すぐに答えが出たようでお見合いのキャンセルについて話し出した。


「普通ならできないと思うのですが、男性の都合で予定が変わってしまったため、お見合いの会場が決まっていません。それを理由に断ることは可能だと思います」


 今回は相手の都合で日程を変更しているからこそ使える方法だ。これで相手が納得してくれるのであれば、男性のプライドはそこまで傷つかないだろう。今、取れる手段としてはベストな判断だ。


「ずっとお見合いさせたがってたのに、お母さんいいの?」


 そこまで話を聞いて、さおりさんが質問をする。小さい頃から「お見合いをして結婚しなさい」と言っていた母親が、あっさりとお見合いをキャンセルすることに同意したことに、疑問を感じたのだろう。


「さおり。私は、恋愛結婚に憧れてお見合いをせずに男性を探していた。でも、どんなに頑張っても、男性を見かけることはあっても話すことすらできなかった。それはすごく悲しくて寂しことだったの。あなたには、そんな思いをして欲しくなかった。同じ失敗をして欲しくなかった。だから、小さい頃からお見合い相手を探していただけ。あなたを求める男性が出てきた時点で、お見合いなんてする必要はないのよ」


 母親の話を聞いたさおりさんは抱きつき、泣き出した。最近出会った僕たちにはわからない、いろいろな想いがよぎったのだろう。


「お母さん……そうだったんだ」

「ごめんね。私の気持ちを押し付けちゃったみたい」

「ううん。私のことを考えてくれて嬉しい」


 この二人に迷惑をかけている自覚はある。だからこそ、これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。相手の男性がゴネるようであれば、敵意を僕の方に向けてもらおう。


「相手の男性が文句を言うようでしたら、他の男性のハーレムに入ることが決まったと伝えてもらっていいですか?」


「ありがたいお話ですけど、そうすると矛先はユキトさんに行ってしまいますよ?」


「それが目的です。さおりさんをハーレムに加えると決めた時に、面倒ごとを引き受ける覚悟もしました」


 僕の覚悟を感じ取ったのか、抱き合っていいたさおりさんを離し、僕の方を向く。そしてしばらくしてから、頭を下げてくれた。


「ありがとうございます。そう言ってもらえると助かります」


 お見合いの相手には明日連絡するそうで、これ以上、堅い話をする必要もなくなった。

 夕食の時間も近かったこともあり、今日は飯島家でご馳走され、その代わりにさおりさんの出会いから今日までの経緯を一通り話すこととなった。


「いつも家族二人で食事をしていたから、今日はにぎやかで嬉しい」


 食事中にさおりさんがふと漏らした一言。僕もこのにぎやかな生活がずっと続くといいなと、心の中でひっそりと同意していた。


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