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アール・ブレイド ~メルビアンの老騎士と姫君~  作者: 秋原かざや


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20/22

エピローグ ◆辺境のバーの片隅で

 からんと氷が解け、崩れた音が響いた。

 ここは辺境のとあるバー。

 眼鏡を掛けた青年と、いかつい体つきの青年が飲み明かしていた。

「その男、いいやつじゃないですか。先生」

「ちっとも良くないですよ、ザムダ」

 そういって先生は、酒の入ったグラスを手に取る。

「憎しみの連鎖は、そう断ち切れるものではありません。それに」

 ごくりと酒を飲み干し、先生はグラスをテーブルに置いた。

「人を殺すことは良いことではありませんよ。たとえ悪人でも、です」

 だがザムダはそのことに不服そうな表情を浮かべる。

「けどさ、それだけぶっ殺したら、逆に誰が殺したかわかんねえんじゃないのか? まあ、あの事件があの『アール』が絡んでるって聞けば、まあ納得できるしな。アイツは色んな意味で規格外みてえなもんだしな」

「そうですね、私もそう思います。まあ……昔の話ですよ」

 先生は思わず、胸のロケットに手を伸ばした。蓋をあけて中を見る。

 そこには、先生と若い金髪の女性、それに愛らしい赤ちゃんの写真が収まっていた。

 ぱちんと閉めて、先生は顔を上げる。

「はあ……でも、ザムダに話したら、少し楽になったような気がします」

「だろうな、すっげー長い話につき合わされた俺の気持ちも分かって欲しいけどな」

「すみません、ちょっと飲みすぎました」

 くすくすと笑いあう二人の耳に、ある声が届く。

『臨時ニュースをお伝えします』

 傍にあったテレビから、突然ニュースが映し出されたのだ。

『ミラノセイア地区にて、新たな指導者が誕生しました』

 興奮するアナウンサーの声と共に現れたのは。

「えっ!?」

「おいおい、まさか」

 先生とザムダが声を失う。

 赤毛の青年が、片腕を力強く掲げて声援に応えている。その横には『ジョイ・イノセンテ』というテロップが流れていた。

『正直、どこまで出来るかわかりません。だけど、やれるところまでやりたい。俺に道を教えてくれた人や、俺に希望を託してくれた人達の為に』

 そういう彼の笑顔が、先生の瞳に眩しく映った。

「ザムダ」

「ん、何だ、先生」

「もうちょっと付き合ってもらえませんか? 先日、出稼ぎしたんで、懐は暖かいですし」

 先生の顔に、先程までの暗い表情はなかった。先生はにこりと笑って、酒を誘う。

「おっ、もう少しやるか!! 俺ももうちょっとだけ、飲みてえと思ったんだ……あっと、その前に」

 ザムダは急に立ち上がったかと思うと、床に両手をつけて、土下座し始める。ぺこぺこと何度も頭を下げて。

「先生、この通りだっ!! 俺の家内のオルゴール、直してくれねぇかっ!!」

「はあ? オルゴール?」

 突然の申し出に、先生も驚きを通り越して、呆れている。

「家内の大事なもんらしいんだ。それを知らずにこう、ばきんとやっちまってさ、動かなくなってしまってだな、その……ちょっと、な……」

 その困り果てた姿のザムダに、先生は答えた。

「いいですよ」

「マジかっ!!」

「漢に二言はありません」

「ありがたいっ!! 感謝するぜ、先生!! じゃあ、今日は祝いだ祝い酒だ!!」

 とたんに機嫌を良くするザムダに、先生は優しく瞳を細めた。

「後でうちのガレージに持ってきてくださいね。ちゃんと直してあげますから」

「ああ、ああ、頼むぜ先生!! ついでに酒も!!」

「調子良すぎます」

 ぺちりと軽くザムダの頭を叩くと、先生は楽しげに口元を緩める。

「けれど……こういうのも、悪くはありませんね」

 と、二人の前に新たな酒が置かれた。二人はそれを受け取り、笑い合い、そして、グラスがぶつかる音を響かせる。

「今日という日に」

「「乾杯っ!!」」




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