リアの覚悟
エリシアがウェレスに呼ばれて、帝城へと向かっている頃。
リアは、ソファの上に寝っ転がっていた。
「んー、エリシアさんが居ないと暇ですねー」
「君は一体、どれだけエリシアが好きなのさ」
そう問いかけて来たのは、対面するソファに腰をかけていたアラストルだった。
「それは勿論、大好きですよ、大好き」
「そこまで執着するのは、ボクにはわかりかねるねぇ」
「そう言ってるアラストルも、エリシアさんに執着してるじゃないですか」
「んー、契約だからねぇ。ボクがこの世界で居られ続けるね。"まぁ理由はもう一つ"あるんだけどさ」
「理由……ですか」
「まぁ、エリシアにも君にも、レーマにも言うつもりは無いよ。話すと、ボクの昔話になるからねぇ」
アラストルはそう言った、リア的にはアラストルに大した興味は無いが、エリシアとなんの関係性があるのかはとても興味がある。
「まぁ、良いですけど。でも、エリシアさんは私のものですからね!」
「あー、うん。エリシアは君の好きにすればいいさ」
その様な、話を続けている時だった。
「ぐぅ……」
突如、魔法陣が姿を現し、そこからボロボロの姿のレーマが現れた。
「レ、レーマ……一体どうしたんですか?」
「レーマがボロボロになるなんて珍しいねぇ」
リアがレーマに近づくと、酷い有り様なのがよく分かった。
転移から暫くして、床に血溜まりが形成されていく、それ程の怪我だ。悪魔だから死なないだろうが、人間だったら死んでいた。
「レーマ、何があったのさ」
アラストルはレーマに問いかける。
「此方に向かってくる異常な魔力の持ち主を感知し、接触、その末に応戦になりました……」
「んで、負けたんだ」
「……申し訳、ありません……」
「まぁ、どうでもいいけど、それでそいつは今ど――」
アラストルが話してる最中だった。
一瞬、魔法陣が現れ、そこから何者かが飛び出して来た。
「ぐふぅ!」
それは、瀕死のレーマの上に飛び乗った。
「全く、君の部下は礼儀がなってないな」
それは、白銀の髪を持つ魔族の少女らしき人物だ。
「わざわざ会いに来て、ボクの眷属を半殺しにするなんて、ムカつくねぇ」
「急に襲って来たのは、そっちなんだけど……まぁ、擦り傷一つ負わなかったし、いいけどさ」
リアはその人物に思い当たりがあった。
かつて、一度だけ父の元へと訪れている時に、一瞥したのだ。
全ての魔族が畏怖と畏敬する者。
最優の魔族、蠱毒で生き残った怪物、人外の領域に踏み入った者。
人類にとっての害悪、魔族にとっての象徴。
彼女こそが、全ての魔族をすべる存在にして、現魔王。
フレイア・エルシオンであると。




