決戦-2
モンスターの焼死体があちこちに転がり、辺り一面燃え盛る中、エルフの兵士達が突撃していく。
突然の出来事に殆どのモンスターは死滅し、生き残った少数の個体も混乱の中で逃亡、及びエルフの兵士に殲滅されていった。
以下に身体能力が優れていようと、孤立し集団で囲まれてしまえば、流石に不利というものだ。
「グオォ!」
乱戦の中で、一体のトロールがリーンデバイトに飛びかかった。
「ふんっ!」
リーンデバイトはその瞬間、大剣を腰から抜き、瞬時にトロールを真っ二つに切り裂いた。
リーンデバイトはエルフでは珍しく体格が大きい男で、精霊術と組み合わせる事で、その身体能力は人間の域を脱していた。
小柄な人程度の大きさはある大剣を木の棒に振るう姿は、まるで人外の様に見えるだろう。
「隊長、敵が撤退を始めました」
そう声をかけてきたのは、同騎士隊の副隊長であるゼーア・ミハイルである。
彼は本来一体しか精霊と契約できない筈なのだが、その制約を突破して四体と契約を結んでいる才能の塊の様な男だ。
いずれはリーンデバイトすらも超えて、それ以上の強者になる事だろう。
「そうらしいな。にしてもこの大魔法は、なんなんだ……幾らなんでも強力すぎる」
「この魔法の詠唱者は、大罪悪魔の一柱らしいですね」
「大罪悪魔が人類の味方をするとは、にわかに信じがたいがな……」
「ええ、私も未だに信用しきれませんから」
その様な話しをしていると、二人の正面から、燃え盛る炎と黒煙を切り裂いて、2体のモンスターが現れた。
それは、他のゴブリンやトロールよりも遥かに体格も良く、一目で普通の個体ではないと察せられる筈だ。
「ニンゲン、殺ス! 仲間、仇! 仇!」
「グオォ!」
そのモンスター達は、リーンデバイトとゼーアを眼中に取られた様だ。
彼らの身体や腕には血液が付着しており、既に何人かの兵士は殺されてしまった様だ。
「あれは、一筋縄では行かないな」
「そうですね」
二人の精霊騎士は武器を構えた。




