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休息



翌日。



エリシア達は、ウェタル市国を散策していた。


辺りを木々に覆われ、空中からははっきりとは分からなかったが、森の中にはしっかりと町があった。



木造の家々が、木の間から溢れ日を反射して幻想的な光景を作り出していた。



「思ったより発展してますね。上から見た時は少ししか建物が見えませんでしたが」



エリシアは辺りを見渡す。


そこに住むのはやはりエルフ達だが、そこに混じって若干の獣人の姿があった。


エルフ達は、エリシア達に怪訝な視線を向けてくる。人間や魔族はどうやら珍しいようだ。



「そもそも群れる事を嫌うエルフがどうして国なんて作れたんですかねぇ……」



リアは不思議そうに辺りを見わたした。


本能的に大規模に群れる事を苦手とするエルフは集落単位で生活しており、小国とは言えどこれ程の人数が集まっているのは不思議な事だ。



「そうせざるをえなかったからですよ」



エリシアがかつて読んだ本の知識では、迫害を受けたエルフ達がまだ未開の地であったこの場所に移り住んだそうだ。


それに続くように、他に迫害を受けていた獣人や差別を受けていた人間達が移民していった。


それ故に種族単位で小国が形成され、他種族を嫌う傾向があるそうだ。



エリシアはそのような事を思いながら、歩みを進めた。



「人間と魔族がいるなんて珍しいな」



その時だった。正面から獣人の――身なりのいい服に身を纏った女性と、男が話しかけてきた。



「ええ、仕事の関係で此方まで来ています」


「こんな時期にか? この地が置かれている事情を知っているだろうに」



獣人の女――レレカは心配そうに、と言うかあり得ないと言ったニュアンスのだろうか。



「それ関係の仕事ですよ」


「あー、現地への取材と言った具合か……だったらこの国はハズレだぞ。ここのエルフは傲慢でな、モンスター如きに負けるなど思ってない。例えいくつ国が滅んでも考え方は変わらんし」



レレカはそう言い、深い溜息を吐いた。


確かに、議会でもモンスターの事を気にしている者などほとんど居なかった。もしかしたら国民も同じなのかもしれない。


そうすると、ミスラはこの国基準で言えば相当変わった人物なのだろう。



「とは言え、私達もその国の上層部に用があるんだがな。兎も角、良い反応が見たいならウル市国にでもよれば良い……訳あって大混乱中だからな」



レレカはそう言い残すと、エリシア達の元を去って言った。



「一体あの人達は?」


「唯の商人と言うには、異質すぎますね。何より身なりが良すぎます……」



彼らがなんだったのか予想もつかないが、国の上層部に用があると言っていた。もしかしたら市議会で再会する事になるかもしれない。

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