空中戦列艦
エリシア達は、空を飛ぶ城――もとい空中戦列艦とやらに乗り込んだ。
どうやら水夫達は乗らない様で、彼等は船で自国に帰るそうだ。
「流石にこんなもので、帝国領に近づくわけにはいかないし、ここに停泊させといたのよ」
確かにミスラの言う通りだ。こんなもので他国の都市近くまで侵入したら何かと騒ぎになるだろう。
「にしても、三千年前の産物がよく動きますね……」
エリシアは辺りを見渡す。外装こそ当時のままだろうが、内装は新しく改装されており、まるで本物の城内にいる気分になる。
「まさか発掘した時、動くとは思わなかったわね。動力源は生きてたから修復できたけど……兎も角、客室に案内するわ」
ミスラはそう言い、城内の客室まで案内する。
その部屋は、エリシアの知る美的様式とはまた違った豪勢な部屋で、素人目で見ても質が良いと分かるベットが並んでいた。
「ウェタル市国まで、三日もあればつくわ」
「船とは比べ物にならないくらい早いですね」
エリシアは窓から身体を覗かせる。
海の匂いを含んだ涼しい風が、エリシアの肌を通っていった。
ここからではわからないが、かなりの高速で移動しているはずだ。
少なくとも帆船の数倍以上だ。
他にも調理場や浴室、食堂、その他数多の部屋など生活していく分には何不自由がないだろう。
「にしても、これを兵器に使用したりはしないんですか? 中々に有用性はありそうですが」
「対魔法障壁を展開する装置が壊れててね。爆裂系魔法の使い手にはカモ……そう判断されて戦力化はされてないわ」
確かにこれほど大きく、尚且つ脆そうな材質で造られているのだ。
魔法攻撃の的になるのは容易に想像できる。
ミスラ曰く、魔法を使えるモンスターも多く襲撃してきているため、尚更兵器として使うのは難しいらしい。
兎も角、エリシアの予想よりもずっと楽な旅になりそうだ。




