帰宅
それから夜は更け、酒場すら静まり返る真夜中――。
エリシアとリアは、彼女ら専用の馬車に揺られて自宅まで戻ってきた。
「えへへ……エリシアさんがふたりもいますぅ」
「少し酔いすぎですよ? 全く……」
エリシアは酔い潰れたリアを持ち上げ、自宅の扉を叩く。
「どうやら、随分と楽しんだみたいだねぇ」
扉開けて姿を表したのはアラストルだった。
彼女は当然ながら此度の宴には非参加で自宅で待機していた。
「ボク達の噂は変に広まったみたいだけど?」
アラストルは裏庭の方を指を指す。
そこには、傭兵らしき者達で山が形成されていた。
一応、彼らは生きている様で呻き声を度々あげていた。
「この人達はなんですかね?」
「ボクを討伐するために、神官の奴らが雇った傭兵みたいだねー。まぁ話にもならなかったよ。それと、言われた通り誰も殺してないよ?」
そう言えば、アラストルには無闇に人を殺すなと伝えていた。しかし言われた通り、本当に誰も殺さなかったのは意外だ。
「なんだが、私達に目をつけられてますよね……」
「そうみたいだねー。ボク的には暇しなかったからいんだけどさ」
アラストルはそう言ってるが、突然傭兵やら冒険者が攻め込んでくるのは面倒だ。
ウェレスに頼んだらどうにかしてくれるかもしれないので、今度お願いするべきだろう。
「そいや、エリシアって領主になったんだっけ?」
「まぁ、一応そうですけど」
「多分だけどさ、エリシアの領地にボクの眷属が封印されてるんだよねー」
「はぁ……」
アラストルの話曰く、百年前に帝都を襲撃した時に、共に連れてきた眷属の一体が領地内で封印されているかもしれないらしい。
なので、折角ならアラストル的には復活させたい様だ。
「えー。嫌ですよ」
「なんでだよー。優秀な奴なんだけどー」
正直アラストルみたいなのがもう一人増えるのは流石にきついものがある。
現にアラストル一人でもこんなに大変なのだ。もう一人など考えたくもない。
「ボクとは違って真面目な奴なんだよー。いいじゃんかぁー」
「悪魔の真面目なんて信用なりません」
「いいじゃんかー。ボクの眷属だし、迷惑はかけないからさ?」
「そう言って迷惑かけまくってますが⁈」
最初、契約結んだ時も迷惑はかけないと言い張っていたが、現にかなりの迷惑を被っている。
「復活するしないにもさー。自分の領地を見てみるべきだと思うんだけど?」
「まぁ、確かにそうですね」
経営は他人任せとは言え、自分の領地だ。
一応どの様なところなのか実際に見にいくべきだろう。
「それなら、今度見に行きましょうか」
「そうだねぇ。それが良いよー」
「アラスの眷属は復活させるかどうかは、知りませんよ?」
「まぁ、兎に角行こうよー。そしたら気が変わるかもだしねー?」
エリシアは一応念を押しておく。
アラストルの眷属を復活させるのは気が向かない。一人でも制御が効かないのだ。
同じような悪魔が二体もいるのは精神衛生上よろしくない。
兎も角、近いうちには領地を見に行くべきだろう。




