冒険者になろうー2
エリシアとリアは冒険者ギルドの中に入る。
冒険者ギルドの中は、当然ながら冒険者達で溢れかえっていた。
ギルドは酒場としても機能しており、あちこちから賑やかな声が聞こえてくる。
「冒険者登録をしたいのですが......」
エリシアはカウンターに居た受付嬢に話しかける。
「構いませんよ。ではステータスを鑑定させてもらいます」
受付嬢はそう言うと、カウンターの下から水晶玉を取り出す。
「見た感じお二人方は非力そうですし、魔法系ですか?」
「えぇ、そうですね」
受付嬢はそう問いかけてくる。
本当は物理特化なのだが、それも説明が面倒くさいので、そう言うことにしておこう。
「リアが先にやっていいですよ」
「なら、そうさせてもらいます......」
リアはそう言うと、水晶玉に手をかざす。
「凄いですね。魔力は平均値の2倍以上、更にはスキル《魔法の極み》を持ってるなんて......Sランク冒険者を目指せるレベルですよ!」
受付嬢の反応曰く、リアは相当優秀な部類らしい。
周りの水準が高すぎて感覚が麻痺していたが、リアも常人の2倍以上の魔力量があり、《魔法の極み》という如何にも強そうなスキルも持っているのだ。
当然と言えば、当然の反応だろう。
「では、私の番ですね」
エリシアは、水晶玉に手をかざす。
「其方のお方は......」
受付嬢は、水晶玉に映し出されたステータスを確認する。
「は? ......え、水晶が壊れてるみたいですね。別のものを持ってきます」
そこには、魔力:10800と映し出されていた。どうやら、昨日の戦闘で知らないうちにレベルが上がっていたようで、魔力が9900から10800にまで向上していた。
「すみません。此方でもう一度お願いします」
エリシアは受付嬢が新しく持ってきた水晶玉に手をかける。
しかし、そこに映し出されたのは相変わらず異常な程の魔力量だった。
「は? このステータス......マジ⁈」
受付嬢は酷く驚いている様子だった。
それもそうだ。魔力量1万越えなど規格外すぎる。
最高峰の魔術師であるミリスでさえ、5000も無いはずだ。
「し、しかもユニークスキル《聖女》⁈」
受付嬢は自分の頬をつねってみる。
それにより夢でない事を自覚したようで、目を丸くしていた。
「す、凄いです! なんですか、このステータスとスキル。一千年に一度、いえ...万年に一度の天才ですよっ!」
受付嬢は興奮気味にカウンターを思いっきり叩く。
受付嬢が騒いだ事で、辺りの注目がエリシアに集まっているのを感じる。
「それで、当ギルドに登録してくださるのですよね?」
「まぁ、その為に来た訳ですし......」
「本当ですか⁈ ありがとうございます‼︎」
受付嬢は、エリシアの手を掴んでぶんぶんと縦に振る。
「兎も角、私のような下っ端では話になりませんのでギルドマスターを呼んできます!」
受付嬢はバックヤードの方へと駆け抜けていった。
「なんか、大事になってません?」
「少しまずいかもしれませんね......」
エリシアとリアが不安を詰まらせる中、受付嬢に連れられて一人の初老の男が姿を見せる。
この男がギルドマスターなのだろうか。
「俺がこのギルドの長......リハク・ハルマァタクだ」
リハクと名乗った男は、エリシアのステータスを映し出された水晶玉を覗き込む。
「このステータスは本当か? ありえないな......」
リハクはエリシアのステータスを見て驚愕する。
「何かの間違いではないのか?」
「別の水晶でも、同じ数値だったので間違いはありません」
「そ、そうか......」
それを聞いたリハクは顔つきが変わる。
「エリシアさんよぉ、うちの冒険者になってくれるんだよな?」
「ええ、もとよりそのつもりですが......」
「なら、成り立てで申し訳ないが早速依頼を受けてくれないか? 勿論、報酬は弾む」
リハクの表情は至って真面目で、深刻な表情だった。
何かしら裏があるかもしれない。
(アラスも居ますし、何とかなりますかね......)
今のエリシアは強い。
更には、それと同格のアラストルもいるのだ。問題はない筈だ。
「とりあえず、お話だけでも聞かせてくださいますか?」
「わかった。とりあえず、応接室で話そう」
リハクはエリシアとリアに、ギルドの奥へと向かった。




