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帝都に



エストリア帝国、帝都バル・アレ。




エリシア達は、帝都まで帰還していた。





「ここが人間の国……すごいっ」



「ひ、人がたくさん……」





リッタとシュラは、そのあまりにもの広大さに驚愕して、硬直してしまっていた。




それはそうだ。




名前もない翼人の国とエストリア帝国は、天と地程の差がある。




石造りの街並みが、何処までも途方となく延々と続いている。



しかもその建物の全ては、複雑かつ精巧な設計の元建築されており、翼人の建造技術ではまず建てられない。



それ以上に驚くのが、芋洗いの様にごった返している人間の数だ。



一救いで、翼人の国の総人口に相当してしまうのではないのだろうか、と言うほどの規模感だ。



リッタとシュラは、両国の間に絶望的な国力差がある事を悟る。




「シュラ達は、翼人の国の外に出るのは初めてなのですか?」



エリシアは問いかけた。



「うん、両親から話だけは聞いた事あったけど……まさかこんな栄えているなんて」


「お姉ちゃん凄いよっ、人が沢山っ」




唖然とする二人に、エリシアは再び問いかけた。





「せっかくここまで一緒に来た仲です。良かったら私の家に住みませんか?」



「いいの? 嬉しいけど、迷惑じゃない?」




シュラにとってはかなり有難い話だ。


住居を提供してくれるなら、これ以上嬉しい事はない。


正直、この帝都に行く宛は無かった。



「いいんですよ。それに、3人で住むには広すぎんです、来てくれると賑やかになって私も嬉しいです」




シュラは、伸ばされたエリシアの手をそっと取る。




「うん、ありがとっ。そうさせてもらう」



「同居するのはいいけどさぁ」




その時だった。




エリシアの身体にアラストルが抱きついてくる。



「な、なんですか!? は、離してくださいよぉ」



「エリシアはボクのものだからねぇ?」



「誤解させますからっ、それ!?」

 


「誤解もくそもないんだけどねぇ」




「大丈夫、その心配ない。同性に興味はないから」




「シュ、シュラ! ちょ、ちょっと!!」




どうやら、シュラには完全に誤解されてしまった様だ。



実際エリシア的にはその手の趣味が無い――と言ったら嘘になる。



なるのだが、だとしてもだ。




「エリシアお姉ちゃん達仲良しなんだね!」




それを見ていたリッタが純粋に問いかけてくる。



「そうだよー。ボク達はかけがえのない関係だから」



そう言ってより一層身体を寄せてくる。




「わ、我もそういう事したい……」



その光景を悶々として表情で見つめてくるレーマ。



もはや混沌とした光景と化した。




そして何より問題なのが、ここは人通りが多い帝都の大通り。




「あれ見て」

「あらら」

「あら〜」




この光景は衆人環視の元に晒されているのだ。



微笑ましいものを見る目線が一斉に向けられている。



他人目線から見れば生温かい視線なのだろうが、エリシアにとって、もはやズキズキと痛い視線に思えてくる。




「は、恥ずかしいですからっ、は、離してくださいよ!」



「えー、このままかえろー」



アラストルは、腕を離してくる気配はない。



「うぐぐっ」



アラストルを物理で吹き飛ばしてもいいが、流石にそれをやっては気が引ける。




「わ、わかりました。家に着いたら、いくらでも相手してあげますからっ、今離してください!」


「えぇ、それよりボクは恥ずかしがるエリシアの事見てたいかもなぁ」


「なんですかそれ!?」



結局、このままの状態で家に向かう羽目になりそうだ。

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