旅立ち
エリシア達はそれから数日の間、翼人の国で過ごした。
最初のお祭り騒ぎの様な喧騒も、今やすっかりとおちついてしまった。
激戦が繰り広げられた国の外と内側を隔てる外壁も、死体が綺麗に片付けられ、残るのは無惨に半壊した外壁のみだ。
ズディル曰く、これから少しずつ修繕していくそうだ。
ともあれ、旅立ちは今日だ。
エリシア、アラストル、レーマ。
そしてシュラとリッタは、翼人の国の外――外壁を越えた先にいた。
「随分と、お世話になりました」
エリシアが背後を振り向くと、ズディルを筆頭に翼人達が、見送ってくれていた。
「世話になったのは、こっちの方だ。またいつでも来てくれ、できる限りのもてなしはするよ、救世主様っ」
ズディルはそう言い、微笑を浮かべ、手を振る。
「えぇ、またいつか来ます」
エリシアはそれに応える様に、手を振りかえした。
「それと、シュラ、リッタ、あんた達もたまには顔出しに戻ってこいよ!」
ズディルはそういい、親指を立てる。
「分かってる……また必ず帰ってくる。次は大切な人を守れるくらいに強くなってからっ!」
バルサの様な大切な人――いや、誰しもを守れる様な強者になりたい。
そして、いつかこの地に帰ってくる。
「また、絶対帰ってくるね! みんな!」
リッタは無邪気に、手を大きく振り続けた。
「そろそろ、行きましょうか」
エリシアはリッタとシュラに問いかける。
「……うん」
こうして彼女達は、別れを惜しまれながらも帰路へとついた。
予想にもしていなかったが、シュラとリッタと言う新しい仲間が増えてしまった。
これから、また賑やかになりそうだ。
いつかは、リアも帰ってくると信じている。
この楽しい時間が、皆んなと一緒に居られる時間がずっと続けばいい。
エリシアはそう思ってしまう。
無力で、孤独で、虐げられていたかつての自分はもうそこには居なかった。




