シュラの覚悟
エリシアは宴を途中で抜け出し、リッタとシュラが住まう家までやってきた。
雑多な梯子を登り、扉を開けようとした時だった。
エリシアが取手に手をかける前に、扉が開いたのだ。
そこにいたのは、シュラだった。
目元が赤く、頬と目の縁にさっき泣いた痕跡がまだ残っていた。
「あの、その……体調にお変わりはありませんか?」
エリシアはかける言葉が見つからず、変な事を言ってしまう。
「身体は元気かな。おかげさまで翼も復活したし」
シュラはそう言った。
何処か落ち込んでいる口調で、精神的には元気とは言えないだろう。
「エリシアってエストリア帝国の冒険者なんだよね?」
「えぇ、そうですが……」
「少し話があるんだけど」
シュラはそう言い、部屋の奥へと視線を向ける。
そこには、此方を心配そうに見ているリッタの姿があった。
リッタは此方へ、駆け寄ってくる。
「お姉ちゃ……」
「大丈夫。私はエリシアと少し話してくるだけだから……リッタはみんなのところに行ってて」
「ほ、ほんと?」
「うん、ほんとだよ。エリシアと少し話があるだけ、ほんの少しだけ、それだけだから、皆んなのところでまってて」
「うん……」
シュラはそう言い聞かせ、リッタは渋々宴が行われている方へと向かった。
「リッタも家から出てってくれてし、家の中で話をしても良い?」
「構いませんよ」
シュラは一体何を話したいのだろうか。エリシアには全くの想像がつかない。
若干の緊張と息が詰まった感覚と共に、エリシアは扉をくぐって家の中に入る。
「それで話というのは?」
エリシアがといかけると、シュラはより一層真剣な眼差しを向けてくる。
「私を人間の国に一緒に連れてって」
シュラはそう言った。
「何故、人間の国へ?」
「私は今回で自分の矮小さを知った……確かにこの小さな国の中では有数の戦士かもしれない。それでも、貴方みたいに上には上がいる」
エリシア的には、私は例外では? と思ったが、口には出さなかった。
「私は大切なものを誰にも奪われない様に、もっと、もっと強くなりたい! 父よりも母よりも……その為にはこの国じゃ足りない。人間の国に――エストリア帝国で経験を積みたい。だから、お願い……」
シュラはそう言い、頭を深く下げてくる。
特段断る理由もないが、どうしたものだろうか。
「いいですが、リッタは置いていくつもりですか?」
「まだ決めてない……でも私の勝手に付き合わせるわけにも行かない。それにあの子は私がいなくても生きていける、馴染みのない人間の国に行かせるよりはずっといいと思う」
「……ん、まぁ、私的には構いませんがリッタとそこはよく相談してください」
その時だった。
扉を開けて、リッタが入ってくる。
「宴の方に行ったはずじゃ?」
シュラはリッタに問いかけた。
「ごめん。お姉ちゃんの事が気になって扉の外でこっそり聞いてた」
「……なら、話は早い。私は人間の国に行く」
「私も行く」
リッタは返答に間髪入れずに言い切った。




