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宴の表




✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎




宴の中心には、エリシア達の姿があった。



それの周りで、翼人達が酒や食事を堪能している。





最初エリシアがドラゴンを倒したと信じる者は居なかった。しかし、ドラゴンの死体を見させられてしまえば、信じる他ない。





「エリシア様! 遠慮せずにどうぞお好きなだけ食べてください!」



一人の翼人の女が、エリシアに更に山盛りに乗せられた猪肉の蒸し焼きを差し出した。




「あ、ありがとうございます……」




エリシアは渋々、それを受け取る。



(正直、もうお腹いっぱいで食べれないのですが……どうしましょうか)



先程から、様々な食事をあれもこれもと食べさせようとしてくる。



勿論、善意からなのだろうが、正直そこまで食べられないし、そもそもあんまり美味しくもない。



この国ではご馳走の部類なのだろうが、帝都の食事に比べれば味は何段か落ちる。





それと、エリシア"様"と呼ばれるようになった。すっかり救国の英雄扱いだ。




エリシアの隣では、アラストルとレーマが酒を飲み続けている。



その周りでは、翼人の男連中が飲み潰れて倒れ込んでいる。



悪魔は酔わないこと知らずに、飲み比べを挑まれ、敗北したようだ。




「ふふっ、楽しいねぇ」


「やはり、他者を嘲笑うのは面白いな」




潰れ倒れる翼人達を見て、楽しげな表情を浮かべる二人。


やはり、悪魔はロクでもない。性根が腐ってるとしか言いようがない。


 



それを横目に、エリシアは猪肉を口に運ぶ。




(獣臭い……味自体は普通なんですがっ)



別に食べれないというわけではない。少し臭いだけ、そうほんのちょっとだけ。




エリシアは近くに盛られた果物の山に手をつける。



此方は大自然の森の中で育った天然物という事もあり、水々しく甘みも強い。



正直、この中の料理ではこれが一番美味しい。




(果物は美味しいですね。帝都で食べる物より鮮度も良さそうです)




他に目がつくのは、酒だろうか。



様々な果物から作られた果実種で、独特な風味があってこれもこれで美味しい。



エリシアは基本的に飲酒はしないのだが、せっかくなので、少し頂いた。





「楽しんでくれてるか」





その時だった。



遠くで、酒を飲んでいたズディルがエリシアの眼前に立っていた。




「えぇ、お陰様で楽しくやらせてもらってます」



「がははっ!! そりゃ、結構。あんたみたいな猛者にはこの国にずっといてほしいくらいだ!!」




ズディルは、そう笑った。


恐らく、この言葉は本心なのだろう。少なくとも、エリシア程の強者を味方として、国に置きたくはなる筈だ。



だが、正直言ってこんな田舎の辺境で暮らすつもりは甚だない。




「すみません。私は帝都に帰らなければ、行けません……そこで帰りを待たなければ行けない人がいるんです」



エリシアの返答に、ズディルは再び笑みを浮かべる。




「まぁ、んだろうなっ。ダメもとで言っただけだし、当然の返答よな」



ズディルはそういうが、何処か残念そうな表情が見て取れる。やはり内心、ワンチャンあるかも――と期待していたのかもしれない。




「あぁ、そう言えば、例の報酬を渡すのを忘れていたな」




ズディルはそういうと、黄金のペンダントを渡してくる。



例の成功報酬だ。



これがあれば、理論的にはエリシアも魔法を使用できる筈だ。




「ありがとうございます。大切にさせて貰いますね」




エリシアは受け取ったペンダントを懐にしまう。




後で、ペンダントに込められた魔法を発動できるか試してみよう。






ともかくだ。



正直言って、翼人と言う種族にはとても興味があったが、彼らが住まう国自体は非常に面白味のない物だった。



ここにこれ以上居ても、やる事もないだろうし、もう少し居座ったら帝都へ帰ろう。




一つ心残りがあるとしたら、シュラの事だ。それだけ、それだけだ。




今、シュラにはリッタが付きっきりではいるのが。



少し様子でも見に行ってみるべきだろう。

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