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翼人の長-2



世界樹の欠片(レッサーユグドラシル)の中は、完全にくり抜かれており、様々な部屋が造られていた。



応接室の様な役割果たしているだろう部屋、図書室、食糧庫、武器庫など。


下層には、食糧や武器などの倉庫として、上層は政治的な事を行う場となっている印象だ。


どうやら、翼人の国の運営を行なっているのは、この木の中らしい。


つまりここが、国の中心地と言える。




まぁ、そもそも国家と言える規模感でもないだろうが。



「ここだよ」



エリシア達は、リッタの案内で螺旋状に続く木内を暫く歩いていた時だった。



リッタが、一つの扉も前で止まる。



「この先が、長の職務室? って場所だよ」




リッタに案内され、部屋の中に入る。



そこには、木を削って作られたテーブルが置かれた雑多や空間だった。


その奥手に、1人の翼人の姿があった。


初老の男で、筋骨隆々の大男だ。翼もそれに見合ってかなり大きい。



「すまんな。こんなところにまで呼び出して、なんせ、俺のここを動かなくてな、がははっ!」



男はそう高らかに笑う。


実のところ、シュラが苦手な理由が、声が大きく煩い、その上面倒くさいところだ。



「先ずは、名を名乗ろう。俺は、翼人の長――ズディルだ」


「私はエストリア帝国のSランク冒険者のエリシアです、こっちはアラストルとレーマと言います」



アラストルは「よろしくねー」と手を振る。


レーマは軽く頭を下げた程度で、言葉は発さない。



「ふむ」



そう言うと、ズディルはエリシア達をまじまじと見つめる。



「どうしたのでしょうか? 私達に何か付いてますか?」


「そんなに、まじまじと見られると恥ずかしいなぁ」


「多少、不愉快だな」



暫くすると、ズディルは笑い声が部屋に響き渡った。



「がははっ! すまんすまん、俺はスキル持ちでな。《暴く者》の効果で、実力を測らせて貰った」




《暴く者》



対象の大まかな実力や、正体を暴くスキルだ。


実力がわかると言っても、自分より弱いor自分より強いの二択しか分からない。


正体を暴く方も、分かるのは種族程度で特殊個体かどうなのか、名前などまでは分からない。




「少なくとも、3人とも俺より強いな。この三戦士筆頭の俺より……まぁ人口の多い帝国では、稀有でも無かろう。それより、後ろの2人は――まぁいいか、どうせ滅びゆく国だ。悪魔だろうと、なんだろうと助けてくれるなら歓迎以外あるまい」




どうやら、ズディルのスキルでアラストル達の正体がバレてしまった様だ。


しかし、特にその辺りについて詮索してくる様なマネはしなかった。




「それでだ。リッタから詳しい話は聞いている。んだが、本当にやってくれるのか? 相手はハイ・ドラゴンの群れだぜ?」


「勿論です。私の冒険者としての通り名は竜殺しですよ?」



そう、エリシアは帝国最強の竜殺しの冒険者だ。あの竜女帝を下し、大罪の悪魔を従え、都市国家を襲った何万ものモンスターを蹴散らした存在。


他者目線では、そうなっている。



「がはははっ! そいつはありがたい。だが報酬で渡せるものなどこれくらいだぞ?」



ズディルはそう言うと、テーブルの下から、複雑な刻印が刻まれた黄金のペンダントを出す。



「これは、三十種の魔法が込められている秘宝だ。魔力さえ込めれば、無限に魔法を使える。まぁ、500年前の大王国の時代のものらしいが……」



大王国――。



エリシアの記憶が正しければ、500年前、ダロル高原全域及びその周辺を支配していた翼人の国家だ。



人口は100万人程度と所詮は小国だが、現在の2000人の極小国と比べれば、かなり大規模な翼人国家だろう。



500年前の人間と魔族との戦争に巻き込まれ、滅亡したらしいが、一部では暴走した転移勇者によって滅ぼされたと言われている。


後者の説は、神聖リベスタ教国では、異端の考えとされているそうだが。





エリシアは、少しそのペンダントに興味が湧く。


膨大な魔力を持つエリシアがこのペンダントを使えば、ほぼ無限に魔法を使用可能という事になる。


後は、込められている魔法次第だが。



「どう言った魔法が込められているのですか?」


火球ファイアーボールなどの攻撃魔法7種、回復ヒールなどの支援魔法20種、召喚サモンなどの特殊魔法3種だ。言い忘れたが、もう一つ特性があってな。込められた魔力の分だけ威力が上がる、残念ながら、今この国にこれを使いこなせる程の魔力の持ち主はいないんだが」



込められている魔法の種類は中々だ。


それに、エリシアの持つ量の魔力を込めれば、威力は絶大になるだろう。


なんなら、このペンダントが欲しいまである。



「是非、それを報酬としてお願いします」


「どうせ俺らが持ってても価値を使いこなせないものだしな。全部終わった時は持ってけ」



ズディルは、やたら大きな笑い声を上げた。




そのタイミングでだ。


一人の翼人が部屋の扉を開けて入ってくる。


その翼人は息も絶え絶えで、相当急いできた様子だった。




「ドラゴンです! 門壁にドラゴンが襲来しました!」

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