表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/134

人と悪魔-2



(ま、まずいです……本当にっ……)



本当にこのままでは、死んでしまう。だんだんと意識が遠のいていく。


首を絞めるアラストルの力は更に強くなっていく。



「アラス、離っ……!」



その瞬間だった。


なんと、アラストルが手を離したのだった。



「げほっ……げっほ……!」



エリシアはむせ返し、その場に倒れ込む。



「なんで、人一人殺すのに戸惑っているんだろうねぇ」



アラストルはそう言い、エリシアの前に座り込む。



「情けないよ。ボクはエリシアを殺せなかった」



アラストルは何処かへ立ち去ろうとする。



「アラ……ス、どこへ、いくつもりですか?」



エリシアは掠れた声で、それを引き止めようと、アラストルの腕を掴む。



「ボクはもう君と関わりたくない。もう2度と姿は見せないよ」


「待ってください! アラスは私から長期間離れられないはずじゃないですか!?」


「もういいよ。地獄に帰る」



アラストルはそう言い、エリシアを振り払おうとしてくる。



「なに勝手にいなくなろうとしてるんですか!?」


「なにって……君を殺そうとしたんだよ。もう一緒には」


「別にそんくらい気にしません。私はアラスが居なくなる方が嫌です」


「なに言ってるの? 君を殺そうとした奴に……」


「アラスがどういう考えで私を殺そうと思い立ったかなんて、完全に理解は出来ません。それでも、そうしたワケは理解できました。でも、そこまで過去に囚われなくてもいいじゃないんですか?」


「は? なに勝手なこといってるのさ? そんなことできるわけないのに」


「出来ますよ。私だって復讐のことなんて考えてませんし」


「それとこれでは、話が……」


「違いません。なに自分が可哀想みたいなアピールしてるんですか? 自分が辛かったみたいな事言ってるんですか? 五百年も前のこと延々と引っ張ってなにがしたいんですか? アラスがこんなめんどくさい女だなんて初めて知りましたよ! いいですか、ごめんなさいしたら許してあげます」


「急に強気だね」



エリシアは引き気味のアラストルに言葉をこうつづける。



「私は人生で今が一番楽しいんです。だから、その……アラスもそこに居て欲しいんですよ。アラスのことは好きですからね」




その時だった。


アラストルがエリシアに急に抱きついてくる。




「エリ……シア……ごめんね……」

……


ふと、アラストルの表情を見てみると、涙を浮かべているのが見えた。



「いいんですよ」


「うっ……ボクもなにがしたかったのか分からなくて……ごめんなさい……」



次の瞬間、アラストルがぽろぽろと大きい雨粒のような涙を流し出す。


もう涙が止まらない様子で、エリシアをより強く抱きしめてくる。



エリシアはそれに応えるように、抱きしめ返した。




(いつですかね。私もこうして、アラスに泣きついた事がありましたっけ)




少し前、都市国家群に攻め入っていたモンスターの軍勢を討伐しに行った時、この様にアラストルに泣きついた事があった。


まさか、逆の立場になるとは思っても居なかった。





その時だった。


部屋の扉を開けて、レーマが入ってくる。



「今帰っ……なにごと!?」



絶対無敵であり、唯一にして最高の主人が人間に抱きついて、わんわんと泣き喚いている光景を見て理解が追いつかないのか、レーマはその場で凍りついて動けなくなってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ