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戦姫アリシア物語  作者: mery/長門圭祐
女王アリシア
88/116

青汁とわたし

王都には、当然だが人が住んでいる。

私達の戦争で、一番の影響を受けたのは、そんな王都に住む市民達であった。

とくに兵糧攻めは、市民の生活を酷く圧迫した。


その長らく続いた苦しい生活は、連合軍による外壁制圧をもって、終わりを告げる。

ようやく、包囲が解けたのだ。


当時、まだ健在であった僭主ジョンの一党は、王城に立て籠もっていた。

だが、市民生活の回復は、彼らの降伏を待たずに始まった。

たとえ国が内戦のさなかであろうとも、食べなければ、人は生きられない。

私達連合軍も、戦争終結より、王国の復興を優先させたのだ。


最初は、商魂たくましい商人たちが動き出した。

先んずれば、人を制す。

競争相手が少ないほど、よく売れるのだ。

彼らは、危険と利益を秤にかけ、度胸を頼りに活動を開始した。


その動きに、市民達も続く。

私達が、ジョン一党を閉じ込めるためのバリケードを築いてから三日後、最初の市が中央広場に立った。

私達も警備に繰り出したのであるが、市場は、大盛況であった。


もちろん、ジョン達を閉じ込めたといっても、王国軍の脅威がなくなったわけではない。

彼らの、一万の軍は健在だった。

しかし、敵軍の動向は、連合軍の哨兵がばっちり監視しているし、いざとなったらアリシアが、救援に駆けつける手はずになっていた。


アリシア様の、立体的な市街戦強襲戦術については、定評がある。

王国軍が身の程知らずな戦いを挑めば、その無謀は、血の代償を持って払われることになったであろう。


結局、敵軍は内壁から出てこなかった。


だから、私の必殺剣を披露する機会もなかった。


市井の人々の、心理的な切り替えは、私達、連合軍首脳部の希望的な観測よりも、さらに早かった。


より良い生活を保障してくれる王様が、良い王様。

ジョンとアリシアどっちか選べ。


そして、ほとんどの市民達が、私アリシアを選択したのである。

もっともなことだ。

私が、市井の小娘であったとしても、同じようにアリシア女王を支持しただろう。


「とは言え、アリシア様の変わり身の早さは、定評がございますしね。周囲の人間が、みなアリシア様のように、鮮やかに切り替えられるとは限りません。市民の支持を、過信してはいけませんよ」


この台詞はメアリだ。


でも、彼女の言いようだと、私が移り気なコウモリ女みたいに聞こえてしまう。

私は、確固たる信念に従って、帝国軍に移籍したのである。

決して、ちやほや歓待されて、ころんと寝返ったわけではないので、その点は覚えておいてもらいたい。


アリシアに対する支持は、厚く盤石になっていく。

日々上昇する自分たちの支持率に、メアリとアデルは、二人で気味の悪い笑みを浮かべていた。


支持率上昇を喜ぶのは結構だけど、できれば、普通に応援しておくれ。


「お前たちは、アリシアにされたことを忘れたのか!? 」


アリシアに恨みを持ち、こう叫ぶ人間も居た。

しかし、対する王都住人の反応は、とても冷淡であった。


「じゃあ、お前は、死ぬまでジョンを支持してろよ」

怨恨を抱えた彼が、どうなったかはわからない。

王国を離れたかもしれないし、悔しい思いを抱えたまま、王都で生きることを選んだのかもしれない。

ここは天の国ではないのだ。

私達が、全ての人を救えないように、私達が全ての市民から受け入れてもらえるとも、考えていなかった。


私達、連合軍の占領下における治安は、とても良かった。

また、乱暴狼藉も許さない。


よそ者の武装集団なんて、歓迎されるはずがない。

そういう状況下で、一度信用を失くしてしまうと、これを回復するのにかかる手間は、凄まじいものになる。


強盗とかやるなよ、やるなら本営にねだりにこいよ。


私は口を酸っぱくして、連合軍の男どもに言い聞かせておいた。

その甲斐もあって、進駐軍は大変にお行儀が良かった。


市民達は、噂した。


大丈夫かしら。

大丈夫そうだね。


そして商店や、職人街も、活動を再開し、王都の経済は動きはじめたのだ。


王都は、大変な物不足であった。

特に食料品の類は、備蓄からなにから、すっからかんである。

王都の皆さんは、冬眠明けの熊みたいな有様で、食べられるものを手当たり次第に買い求めた。


売れば売っただけ、儲けになる。

利に聡い商人達が、これを黙っているはずはなかった。


そして、もちろん、金にうるさい貴族たちも。


「さぁ、がっぽり儲けるわよ! 」


「ええ、ガンガン稼ぎますわ! 」


最初の台詞は私のもので、続く台詞はエリスであった。


我ら二人は、銭ゲバ娘。

金の亡者アリシアと、守銭奴エリスである。


鉄剣よりも、金貨が好きです。


軍の進駐に先んじて、父と私はランズデールから、地元の穀物商人を引っ張っていた。

この状況を見越しての事だ。

小麦粉やイモ類は、備蓄物資として優秀だ。

今の王都では、飛ぶように売れていく。


お値段は、良心価格でご提供である。

流通が回復すれば、すぐに、価格は落ち着くのだ。

末永くご贔屓にしてもらうために、良い品を、早く、そこそこのお値段で提供して、顧客のハートを掴むのである。


一方のエリスは、帝国から、彼女の実家が出資している商会を呼んできた。

彼女は、利幅が大きく、輸送が楽な加工品の類を、せっせと王都に運び込んだ。


市民の中には、お金が足りない人たちも、もちろんいた。


そんな彼らのために、私は生活資金を低利で貸し出す、金融機関を設立した。


国民銀行である。


いや、一度やってみたかったんだよね、金融業。

戦争を通じて、そこそこお金を溜め込んでいた私は、大口の出資者だ。

実務は、地元の金貸しの人達に、担当してもらう予定であった。


既得権益の塊である王都の高利貸し共は、殆どが旧市街に本拠地がある。

故に、奴らは、今、まともに動けない。

連中の仕事を、全部かっさらうつもりで、私はガンガンと、お金を貸し出した。


突然、金融の話が出てきてびっくりされた方もいるかも知れない。

ここで改めて宣言しておこう。


私は、王都の金貸し共が大嫌いだ。


なぜなら、私達が戦争で苦労している時に、酷い金利をふっかけられたからだ。


私は、宰相達よりも、連中のほうが嫌いだった。


だから全部、叩き潰してやるのだ。

金融など国の手で管理するに限るのである。(※決して、真似してはいけません)


「奴ら全員、北方送りだ! 」


「共産主義かな? 」


私が高らかに宣言すると、報告に来ていたコンラートからツッコミをもらった。

チガウヨ。

単なる経済戦争ダヨ。


担保なんて取れないぐらい、困窮している人もいたけれど、私は彼らにも気前よくお金を貸した。

今後の復興需要で、お仕事は沢山ある。

最悪でも、体一つあれば、貸し倒れの心配も無いご時世だ。

支払いに詰まったら、鍬持って、北の国まで、肉体労働に出かけてもらえば良いのである。


私は、とても楽しく金勘定にはげんでいた。


そんな私に、ジークが心配そうな視線を向ける。


「権力者が、経済に口をはさむのは、危険ではないか? 」


「えぇー、良いじゃありませんかぁ 」


私はジークにわがまま特権を発動した。

ジークは吃驚してから、頭を掻いた。


「アリシアの趣味は、よくわからんなぁ」


そう言ってジークは譲ってくれた。


離宮を建てたり、ドレスを作らせたりするよりも、私は商売に興味があった。

この復興景気の雰囲気で、我慢していることができなかったのだ。


多分、私は、内政型の君主だと思う。


軍事よりも、経済のほうが好きなのだ。

私にとって、戦争は義務で、商売は趣味なのである。



さて、私アリシアが好き勝手を始めた王都でも、特に精力的に活動する人たちがいた。

お子さんを抱えるお母さんたちだ。


彼女たちは、長引く不自由な籠城生活に、大層、心を痛めていた。

なにしろ、子ども達の食糧事情が、大変に悪くなってしまったからだ。


肉や穀物も大事であるが、特に野菜の不足が深刻だった。

閉ざされた王都の中では、まともに採れるお野菜が、芋類を始めとした、根菜ばかりだったからである。


食べ盛りの子どもを抱えた奥さんたちは、奮起した。


緑のお野菜が足りない。

野菜を、葉物野菜を置いていけ!

彼女たちは、葉っぱがついてる新鮮野菜を求め、商店をめぐった。

だが、とてもではないが、品数が足りない。


生鮮食品は、市場で買い付けるのが一番だ。

バイタリティ溢れる彼女たちは、市外にまで足を伸ばすことにした。


一方で、この王都の活況ぶりに目をつけたのは、商人だけではなかった。

農家の人たちも、地場の収穫物を集めて、王都の近くまで売りに来ていた。


産地直送の、新鮮野菜だ。


農家の人たちは、まとまって、王都外壁のすぐ側で、臨時の野菜市を立てた。


そして、王都のお母さんと、農家のおばちゃんが、この市場で出会ったのである。



生鮮市場は、大盛況だった。

お客は大入りだ。


「キャベツを二玉頂けるかしら」

「あいよ」

「こちらまとめて包んでくださる? あとトマトも頂きたいわ」

「あいよ」

ずんどこ売れていく商品に、農家のおばちゃんはごきげんだ。


やっぱり、直売が一番だわね。

おばちゃんは確信した。


そんな中、お母さんの一人がぼそりと口に出した言葉が、おばちゃんの耳に止まった。

懐事情を気にしながら、そのお母さんは、こう言ったのだ。


「とにかく栄養があるお野菜が欲しいのだけど、何か無いかしら。できるだけ、お安くて、たくさん買えるといいのだけど……」


「あるよ」


おばちゃんは即答した。

栄養があって、しかも安い、そんな都合の良いお野菜。


そんなものがあると聞いて、お母さん達は目を丸くした。

熱い視線をおくられて、おばちゃんは、こうも付け加えた。


「でもあんまり美味かない。持ってきても売れないから、今日は、持ってきてないよ」


「それ、頂きたいわ」


「そうかい。じゃあ次来る時に、持ってくるよ。ケールっていうんだけどね。栄養はある。でも何度も言うけど、あんまり美味かないよ。うちじゃあ食べるんだけどね」


こうして、ケールなるお野菜が、王都に進出を果たすことになる。


さて、唐突に出てきたケールなる野菜について説明しよう。

ケールは、農家の片隅で自家消費用に育てられていた、お野菜だ。

キャベツの仲間で葉っぱを食べる。


だがこれは、商品用の作物ではなかった。

とにかく、クソ不味いのだ。


味は、キャベツに、ほうれん草の風味を加えて、青臭ささをしこたま増強したような感じである。

私も田舎出身なので、食べたことがある。

生でかじると、道端の葉っぱ喰ってるような気分になれる。


キャベツのほうが絶対美味しい。


しかし、「味なんか二の次よ。とにかく栄養がなくっちゃ!」という気分になっていたお母さま方は、この野菜を歓迎した。


次の野菜市で、約束通り店頭にならんだケールを、奥様方は、しこたま買い込んだのだ。

噂を聞きつけたご婦人も、大挙して押し寄せたため、あっという間に売り切れた。

青々ともっさり茂ったケールの葉っぱを見て、「食べでがありそうね」と彼女らは嬉しく思った。


お母さんたちは、戦利品を手に意気揚々と帰還した。


「生で食えるよ。茹でて食べたりもする」


というおばちゃんの言葉を信じて。


じゃあ、とりあえず生で。


その日の食卓に載せられたサラダには、謎の葉っぱが供されていた。

知る人がいれば、漂う香りが、庭仕事したときの、シャツに染み込んだ、芝生の匂いと同じだということに気がついただろう。


どれ一口。

フォークで突き刺しむしゃりとかじる。

そして子どもたちの悲鳴が、ご家庭の食卓にこだました。


「まずーい! 」


ほうれん草さえ、嫌がるお子さんが多いのだ。

それを遥かに凌駕する、野菜臭である。


加えて、ろくに品種改良もしていない。

美味しい訳がなかった。


地方民でさえ、好き好んで食べる人間はいない。

悪食と評判のアリシアでさえ、火を通さないとしんどいのである。

生でかじった日には、門前を守る、ガーゴイルの石像みたいな顔になってしまう。


不味すぎて、「イーッ」って顔になるのだ。


イーッ。


ちなみに、メアリは、酒が入るとなんでも美味しく食べられるらしい。

サラダの生ケールもバリバリとかじっていた。


強い。

生存能力が高い女だ。

元気な赤ちゃんを産むだろう。


お母さんたちが、折角調達してきたケールであるが、かなりの数の子どもたちが、拒否反応を示した。

好き嫌いが無い健康優良児達も、「もう次はいらないかな」とやんわりとダメ出しをする。

この新種のお野菜は、王都の少年少女たちに、概ね、不評であった。


ケールの味は、都会の人たちには受け入れられなかった。

この青物は、田舎民だけが口にする、くそまずマイナー野菜のまま、終わってしまうのか。


結論から言うと、そうはならなかった。


なんと一部のご家庭では、このケールが受け入れられたのである。


そのご家庭の皆さんの味覚が、狂っていたわけではない。

彼らも、ケールをかじって、あまりの不味さに「イーッ」って顔をした。

だが、彼らはそれで終わらなかったのだ。


不味い。

こんな不味い野菜は、今まで食べたことがない。

新鮮なはずなのに、庭で引っこ抜いた雑草みたいな味がする。


そんな彼らに天啓が閃いた。


こんなに不味いのなら、その分、体に良いのではないだろうか?

いわゆるバランス理論である。

欠点があるなら、そのぶん利点も多いはずという錯覚だ。

不味い分、栄養多いのだろうと、彼らは思い込んだ。


世の中には、不味いうえに、栄養が無い草のほうが多いのだけれど、彼らはそうは考えなかった。

そして、ケールに関してだけは、この思い込みが正しかったのである。


この葉っぱ、健康には、たしかに良かった。

お通じによく、肌艶はよくなり、プラシーボ効果も手伝って、ケールを食べていると身体の調子がよくなったように感じたのだ。


頑張って食べ続けてみよう。

ケールを受け入れた人々の大半は、このお野菜を、どうしたら美味しく頂けるかについて研究した。

とりあえず、加熱調理すれば、多少はましな味になることを、彼らは発見する。

こうして、野菜炒めなどの、簡単家庭料理の材料に、ケールが仲間入りを果たすことになった。


だが、さらに一握りの、健康エリートたちは、まったく別のアプローチをした。

ケールの長所である、栄養面を伸ばそうとしたのである。


いかにして、ケールの栄養を圧縮し、効率よく取り込むかについて、彼らは研究を重ねた。

当然、味なんか無視である。

数年に渡る試行錯誤の末、彼らは禁断の摂取方法にたどり着く。


ケールを濃縮還元した後、ジュースにして、一気に飲み干す。

単純で、かつ効果的な摂取方法であった。


しかも、一部の馬鹿が出資して、ワイン製造用の圧搾機に改良を加え、ケール専用の圧搾機など開発したせいで、奴らはこの飲料の量産化に成功する。


ケールの粉末化にまで成功した彼らは、これを商品として大々的に売り出した。


これが、王国特産の健康飲料、青汁の始まりである。



街の人たちの変なブームであれば、何の問題も無かっただろう。

だが、巡り巡って、このヘンテコ飲料の洗礼が、私達、皇室の人間にも襲いかかったのだ。


開発より数年間を経て、この青汁は王国でよくわからないブームを引き起こした。

そして、それが、帝国に上陸したのである。

世界一まずい飲料とまで言われた青汁は、最初、パーティーグッズとして話題を呼んだ。


王国出身者である、私アリシアの元にも、献上品として最高級の青汁が提供された。

最高級とはすなわち、もっとも体に良いという意味である。

味は知らぬと、提供者は笑っていた。


「これは、飲んでも良いものなのか? 」


ジークの言葉に、担当の文官達は、揃って視線を泳がせた。

物知りコンラートは、これを飲んで一言。


「俺が知ってる青汁のほうが、百倍マシだった」


そのぐらいのまずさであったそうだ。

大の男が、えぐみとにがみと青臭さで涙目になる。


スカした態度が多いコンラートでさえ、取り繕うことができずに、ヴェロオエェっとかいう、形容し難いげっぷを吐きだしていた。


わりとのりが良いことで有名な、皇帝ジークハルトは「俺はいらぬ」と、真顔で試飲を拒否した。


だが、ジークも私も、この飲料から逃げることはできなかった。

いかに不味かろうとも、効用さえ伴うのなら、それを求める組織が存在したからだ。

そして、その組織に私達二人は所属していた。


そう軍隊である。


携行しやすく、不足しがちな栄養素を確保できるこの食品は、健康維持に必死な軍人にとって、画期的な存在であった。

数日に一度、ぬるま湯に溶かして飲むだけで、各種の栄養不足から来る疾患を、予防できるのである。


でかい密閉容器に封入された、粉末状の「青汁のもと」が、帝国軍の補給物資として納入されるようになるのに、大して時間はかからなかった。

結果、軍人皇帝として名を馳せたジークも、その伴侶である私も、この健康飲料の洗礼を受けることになる。

遠征時は、二人して、不味い不味いと言いながら、こいつを飲むことになったのだ。


戦場では、敵なしであった私達夫婦も、この青汁には、何度となく泣かされた。

将兵一同、涙目になりながら、この緑の汁をあおったのである。


軍の士気に、深刻な悪影響を及ぼしつつも、帝国軍人の精神力を育てた青汁は、間違いなく帝国軍のソウルドリンクであった。

同じ釜の飯ならぬ、同じ青汁を啜った戦友である。

帝国軍の結束は、とても固くなった。


これを平然と一気飲みできて、初めて、一人前の帝国軍人と認められる。

そんな素敵な存在として、青汁は定着することになる。


医局のトップが、すごい健康マニアで、皇帝夫妻の権限を持っても押し切られてしまったのだ。

本当に大変であった。



そして軍人とは別に、これを愛飲する人種が生まれた。


「まずい!もう一杯!」


酒飲みだ。


この意味不明な叫びは、メアリである。


青汁は二日酔いによく効いた。

しかもカロリーの摂取を抑えつつ、不足しがちな栄養素を補える。

刹那の快楽に生きるドランカー達にとって、青汁は、理想的な補助飲料であった。


メアリは、気持ちよくお酒を呑むためには、手段を選ばない女だった。

健康に良いという研究の結果を信じたメアリは、この緑の液体の愛飲者になってしまう。


そして彼女は、この不味い飲料を、一緒に飲む道連れを欲しがった。

結果、メアリは、主君であるアリシアにも、こいつを飲ませようとゴリ押ししたのである。


いい迷惑だ!

自分一人で飲んでろよぉ!

私は、抵抗したのだが、「皇后は健康管理も大事でしょ?」と詰め寄られて、逃げ切ることができなかった。

結局、私もメアリのご相伴に預かって、青汁を常飲することになる。


帝国には、美味しいものが沢山ある。

なのになぜ、こんなゲテモノを好き好んで飲まなきゃならんのだ。


戦場に行っても、帰っても、私は青汁に責め続けられた。


わたしは、あまりの不味さに、産卵中のウミガメみたいに涙を流しながら、メアリに強いられて青汁を飲んだ。

ジークは優しい旦那さんであったけれど、これには付き合ってくれなかった。


これは、だいぶ、先の話になる。

私アリシアは、ご長寿で大記録を期待される程、長生きをすることになった。

メアリと二人、余裕で三桁の大台を突破してしまい、晩年はちょっとした化物扱いまでされてしまう。


その健康の秘訣を問われたとき、私には、これしか思い浮かばなかった。


「青汁、かしらね」

目から光を消しながら、太皇太后アリシアが称揚した健康飲料、青汁。

そのモンスタードリンクは、内戦からの復興を目指す王国が生み出した、奇跡の飲料であった。


「いや、奇跡じゃなくて、悪魔の飲料じゃないかな」

ケールの葉っぱをかじりながら、私は、ひとり呟いた。


その野菜は、いつどこで食べても、道端に生えてる草みたいな酷い味であった。

当作品は、青汁の飲用を勧めるものではありません。

また、その健康面における効用についても、実際の効果を保障するものではない点、予めご了承ください。

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