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戦姫アリシア物語  作者: mery/長門圭祐
女王アリシア
76/116

指導者とわたし

わっふるをたくさん頂いたため、初夜のシーンについて頑張ってみました。


明日、月光に投稿する予定です。

題名:えっちなアリシア物語

投稿日時:11月29日 19:00

作者名:eromery

となっております。


あわせて、明日は本編の更新をお休みするよていです。

次は11月30日に投稿の予定です。

以上です。よろしくお願いいします。

「アデルちゃんてさ、おじさん趣味なの? 」


私の質問に、アデルは、一瞬きょとんとした表情を浮かべた。

それから、気がついたように破顔する。

私は、真顔を取り繕おうと頑張った。

ちょっとぷるぷるして、やっぱり我慢できずに吹き出してしまう。


いや、実は私が、友達の趣味を、知らないだけかもしれないじゃん?

当然、そんなことは無かったのだけれど。


「違うわよ。多分、アリシアとそう変わらないわ」


「ふーん、なら理想のお相手は、二十五歳だね」


「そうなの。随分、具体的ねぇ……」


アデルの唇が、からかうように弧を描く。

私は、人差し指で頬を掻いた。


うん。

察してくれたまえ。


私にとって、理想のお相手の年齢は二十五歳。

来月には、二十六歳に更新される予定である。


アデルは、ひとしきり笑った後、ゆっくりと冷たいお茶を一口含んだ。


「三十九歳と二十五歳のラベル様なら、若いラベル様に交際を申込んだと思う。でも三十九歳のラベル様と、その他の候補者なら、ラベル様がいい。そういうことよ」


「つまり、私のお父様がいいのね」


アデルはこっくりと首肯する。

それから、アデルは、真剣な面持ちで私を見返した。


「バールモンド家は、私が継がなければならない。侵略者達から、民と国を守るのが私の役目。でも私は戦えないわ。だから私と、私の領地を守ってくれる、強い伴侶が必要なの」


「でも、アデルより戦える男の人なんて、そうそういないわよ。アデルを守るって相当ハードル高くない?」


「もぅ、意地悪言わないでよ!」


私が一つの事実を指摘すると、アデルが拗ねたように口をとがらせた。


ごめんごめん。

私は、彼女に謝罪しながらも、ついつい笑ってしまった。

なにしろ、アデルは、バールモンド辺境伯の陣代として、既に武勲を挙げているのだ。

しかも馬鹿でかい武勲を、である。


その彼女を助けられるお相手となると、ハードルが跳ね上がる。

アデル自身も、つまらぬ相手は、お断りだろう。


それで、我が父に結婚を申し込んだわけだ。

なるほど、私は得心する思いだった。


アデルの初陣は、二年前だ。

蛮族を王国から叩き出した、次の年の戦役である。


王国の領主連合軍による北伐に、アデルは、前年の戦いで負傷した、バールモンド辺境伯の名代として出征することになった。


お飾りとはいえ、敵地への侵攻作戦だ。

アデルのお父様は、猛反対したらしいが、彼女は、私アリシアを引き合いにだして一歩も譲らず、最終的には、彼女の意思を通したのである。


北部領主諸侯の総大将は、陣代のアデル嬢、南部ランズデールの指揮官は私アリシアだ。

私達の父親二人は、面目無さで涙を流していたと、風のうわさに伝え聞いた。


この北伐では、最終的に、私たちは大規模な会戦で、敵軍を撃破することになる。

この時、領主連合軍の中央本陣を守っていたのがアデルだった。


彼女が指揮した兵力は、約一万。


ちなみに全軍の兵力は、は私の部隊も含めて、一万五千の陣容である。

全体の三分の二を指揮するのだ。

彼女は、紛れもない総大将であった。


敵軍と対陣した時、兵力的には、私達の領主連合軍が若干不利であった。

味方、約一万五千に対して、敵、約二万。


この兵力差は、大きかった。

戦闘開始からしばらくの間、アデルが率いる本隊は、二倍近い兵力の蛮族軍から力攻めを受けることになる。

数は力だ。

連合軍は一時的に、盛大に押し込まれた。

その時私は、右翼にいて、敵の側面を突くために迂回行動中だった。


一時的に崩されても、アリシアの側面攻撃が決まれば、その時点で勝利は確定する。

アデルを危険から遠ざけるため、将校たちは本陣の一時後退を進言した。


しかし、アデルはその提案を一蹴した。


「馬鹿を言わないでちょうだい」


そんなことより、正面を突破されれば、私の身も危ないのです。

主君を守る気があるのなら、こんなところにいないで、貴方達も前に出て戦いなさい。


そして、アデルは、強権を発動させて、本陣に詰めている部隊を全て、前線に投入した。

直属の護衛も全てだ。

細かい部隊の采配は、各部隊の指揮官に丸投げしつつも、最終的には、彼女の身辺警護がすっからかんになるまで兵力を供出したらしい。


あまり周囲を手薄にしては、御身が危険だと諫言されて、アデルはこう答えたそうだ。


「どの道、私は戦えないのです。万が一、私が討ち取られたら、死体を馬にでもくくりつけておきなさい。お飾りの役目ならそれで十分です」


それに、一度死んでいれば、もう絶対に死なないでしょう?

それからは、だれもアデルに逆らわなかった。


兵士たちは力戦した。

アデルのやり方に感動したというわけでは、もちろん無い。

彼らは、安心したのだ。


本隊が後退する場合は、自分も退かなければ敵中に孤立してしまう。

自分に逃げる気はなくても、指揮官が後退を指示する可能性はあるのだ。

押され続ければ、そのまま崩される恐れもある。


だが、総大将のアデルは、陣を死守せよと厳命した。

本人も一歩も下がらない。

であれば、その場にとどまって戦っても、置いていかれる心配はない。

要は前を向いて、戦えばよいのである。


ここ持ちこたえれば、アリシア率いる騎馬隊が、敵を撃破してくれるはずだった。

彼ら兵士は、槍先揃えて突き返し、乱戦でもみくちゃになりながらも、一歩も退かなかった。


結局、蛮族達は、アデルの守る本陣を攻めきれなかった。

戦況が膠着する。

そこに側面よりランズデール騎兵隊が突撃を加え、戦いの趨勢は決まった。


左翼を粉砕され、アデルと私の部隊に挟撃された蛮族軍は、指揮官を討ち取られて潰走した。


蓋を開けてみれば、完璧なまでの鉄床戦術だ。

鉄床戦術とは囮の部隊が敵を部隊の攻勢を引き受けている間に、側面、あるいは背後に回った部隊が敵を一撃して、トドメを刺す戦法の事である。


囮役の盾と、攻撃役の矛、両者の信頼関係があって初めて成立する作戦だ。


特に困難なのは囮役だ。

自軍にまさる敵部隊の攻撃を、一定時間、支え続けなければならない。


これを為したアデルは、戦後、勲功一等であるとして称揚された。

もちろん、私も彼女を推した。


「たまたまそうなっただけよ」

この評価を受けて、アデルはこともなげに言い放った。


笑わせてくれる。


私は内心で、彼女のあからさま謙遜を笑った。

たまたまな訳がない。

アデルは絶対にこうなると予測していたはずだ。

彼女は、初陣であることを理由に、かまととぶってみせただけである。


戦争に先立って、私はアデルに、軍を動かす方法や、兵隊の心理について、知る限りの情報を吐かされいていた。

状況を熟知したアデルは、一時的な劣勢と、敗勢とを区別した上で、部下にやるべきことをやらせたのである。


以上が、アデルちゃんの武勇伝だ。

デビュー戦の華々しさは、私などの比ではない。

まさに女傑である。


アデルは、我が家以上に過保護なバールモンド辺境伯をして、深窓の中に閉じ込めて置くことができなかった女なのだ。


そして、そんな彼女が、お婿さんに望むことは「私と皆を守ってくれる男の人」ということらしい。


なんという難易度の高さであろうか。

これはお婿さん大変である。


「他の若い人じゃだめなのかしら。こう、一緒になってから、二人で学んでいく、みたいな関係もありじゃないの? 」


「この間、お見合いで会ってきたわ。でもそのうち、私と言い合いになってしまって……」


そのお相手は、非力な小娘に、戦い方を云々されるのが勘に触ったらしい。


アデルは、自身では戦えない。

彼女の腕力は、見た目通りだ。

見た目詐欺の私とは違う。

故に、剣を振るっても、まともな戦いにはならない。


一応、魔力は強いのだが、使える魔法は「腐食」。

腐葉土を作ったりできるので、農家には重宝される。

アデルは「いらないわよ!」と叫んでいた。


私も、アデルの立場だと、ちょっとまっとうな使いみちが思い浮かばない。

悪くした牛乳を飲ませて、相手を困らせるぐらいだ。


アデルも、お相手探しは難航しているようだった。

彼女は、憤懣とやるせなさを混ぜたような表情でため息を吐く。

それから、表情を真剣なものに改めた。


「ラベル様なら、そんなことはないでしょう? それに、あの方の言葉なら、私も信じられるし、素直に従える」


アデルは続けた。

家を背負って立つことになる彼女の声音は、切実だ。


「ラベル様は、素敵な方だと思うわ。私みたいな小娘には、興味が無いかもしれないけれど、私は公の人柄と手腕をお慕いしています」


アデルが第一に考えるのは、彼女の家のことなのだろう。


父にとって、アデルが、どういう存在となるのかはわからない。

でも理解者という点に関して言えば、彼女以上の存在は、王国中探してもいないのではないかと思う。

男女の情愛とは違うけれど、これも一つの夫婦の形だろう。


父とアデルが結婚した場合は、お婿さんやお嫁さんいうより、共同統治者になりそうだけどね。


「わかったわ。お父様にそう伝えておきます」


私が請け負えば、アデルは胸をなでおろした。

安心したように微笑んで、それから私を上目遣いで見つめてくる。


やだ。

その媚びる目線はずるくない? アデルはおねだり気味に、口を開く。


「……ところで、私を応援とかはしてくれないの」


「えぇー」


私は曖昧に微笑んだ。

もちろん心情的には、アデルちゃんを応援したい。


でも、余計な手出しをして、やらかしてしまうと、とんでもなく恨まれそうなのだ。


あと、同級生を「お義母さん」と呼ぶのは、やっぱり心理的に抵抗があります。


父やアデルは、指導者として優れた見本であると私は思う。

私は父のことを尊敬しているし、アデルの考え方も見習わなくてはと思うのだ。



父とアデルは優れた指導者の見本だ。


では、その反対の見本もあるのだろうか。

答えはイエスだ。

しかもすぐ近くにいる。


それは、王都の連中である。


間もなく私たちは、その、上に立つものとしての悪い見本を、いくつも目のあたりにすることになる。


最初の悪い見本は、王都の騎士団長一家であった。



私は、父の執務室で、アデルの気持ちを彼に伝えた。


「そうか」

父は、言葉少なに、考え込んでいるようだった。


それからすぐ、ジークが幕僚を招集する。

王都を見張っていた斥候から、騎士団が、私達の囮部隊に食いついたと、連絡があったらしい。


作戦開始である。


会議室に詰めた私は、ジーク他、数人の幕僚たちとともに地図を囲んだ。

アデルも顔を出していた。

バールモンド家の陣代として、戦闘に参加するとのこと。

彼女の戦意の高さがうかがえる。


ジークが、王都の場所に、敵軍のシンボルを置く。


「騎士団が動いた。数は五千」


「予想より多いですね。どういうことなのかしら」


「アランとか言ったか、騎士団長の倅が、わざわざ兵力を増やしたらしい」


私は目を見張り、ジークは蔑むように唇を歪めた。

周りを見回せば、全員が同じ気持ちであるようだ。


やつら、本当の馬鹿だな。


いや、前から思っていたけれど、これほどまでとは思わなかった。


今回の作戦は、王都の兵糧を吐き出させるのが、戦略上の目標である。

ゆえに私達としては、出てくる兵力が多ければ多いほどありがたい。


おそらく限界いっぱいまで振り絞って、三千程度の見積もりだった。

その限界を自分たちから超えてきたのだ。


非戦闘員を含む輸送部隊を襲うのに、その五倍もの兵力を動員する。

まっとうな感覚の指揮官ではあり得なかった。


「この敵失について、経緯を説明したほうが良いか」


「はい、聞かせてください」


そして、報告書の写しが配られる。

この敵の愚行は、腐敗した政治力学の結果であった。

この期に及んで、未だに彼らは、戦争に勝つことより、宮廷の中での権力争いを重要視していたのだ。


今まで、王都の騎士団は、一度として、領主連合に勝利していない。

そもそも、まともな軍事訓練を施されていない騎士団は、王都から出撃できないでいるのだ。

戦闘にすらなっていない。


しかし、ここへ来て、弱兵揃いの騎士団でも、ようやく勝てそうな相手が現れた。

囮である、帝国軍の輸送部隊だ。


武装も貧弱で、数も少ない輜重隊は、彼らには恰好の獲物に見えたらしい。

王都の騎士団は、敵の罠を警戒する前に、手柄の奪い合いを開始した。

戦う前から勝った気になり、指揮官の地位を奪い合った結果、騎士団長の息子であるアランが、親の権力でその立場を勝ち取った。


ちなみにアランって、王太子の取り巻きの一人ね。

実は私もすっかり忘れていた。


「あのバカをぶん殴ったときに近くにいたじゃない」


と、アデルちゃんが教えてくれた。


すまん。

でも多分また忘れるから、そのときは教えてくれ。


このアランであるが、彼の父に似た男だ。


そしてこれより、私は騎士団長の紹介を始めたいと思う。

ただ、私と騎士団長とは敵同士だ。

故に私の評価は厳しくならざるを得ない。

公平を期すために、少し割り引いて聞いてもらいたい。


それぐらい、酷い。


アランの父である騎士団長は、宰相におもねって、その地位を手に入れた男である。

得意なことは、宮廷工作。

自分より有能な人間を蹴落とす技術に長け、国王と宰相のご機嫌取りが上手い。

粗野な男で、よく威張り散らしているが、実力の無さにも自覚があるらしく、自分の地位を守るため、逆らうものには容赦しない。


保身の技術はピカイチだ。


一応、剣術はおさめており、彼個人に関してはそれなりに戦える。

そして、剣以外の武器は扱えないため、それらの武器は、劣っていると言い立てて、騎士団員には剣技を訓練ばかりをさせている。


そのほうが、自分が威張れるからね。


特に弓などの飛び道具は、卑怯者の武器であるとして、下手に訓練などすると、いじめの対象になる。

故に王都の騎士団は、原則的に飛び道具は使わない。

というか、使えない。


騎士団長は、宰相の手先だ。

宰相からすれば、このぐらいの俗物のほうが、扱いやすかったのだろう。

実力から言えば、軍のトップはランズデール公だ。

騎士団長は、その父を追い落とすための手駒であった。


父が宮廷闘争で地位を追われてからも、宰相は、ランズデール公を排除しておく必要があった。

故にこの騎士団長は、戦争に出ることもなく、自身の地位を守りながら、宰相から与えられた職務を忠実にこなしてきたのである。


そして、そのミニチュア版みたいなのが、今回の敵指揮官のアランだ。

彼は、この騎士団長の嫡男である。


声ばかり大きく、上役に取り入るのが上手で、自分より強い人間や有能な人間へのやっかみがひどい。

逆に弱い者いじめが好きだ。


これだけ聞くと、嫌な上司のようであるな。

意外と世の中にいそうな気もする。


アランは父親譲りの小心者だ。

保身も上手い。

保身の技術に長けるということは、自身の能力も把握している。


いざ今回の作戦指揮官に抜擢されて、実戦経験の無い彼は不安になったのだろう。

アランは、出撃する部隊に、できるだけ多くの兵力を望んだ。


そして、限界を超えて、五千の兵力が動員されることになったわけだ。


ここまでで、お分かりいただけると思うが、王都の連中は、戦争を前提とした教育を受けていない。

王国の騎士団は、戦争のことなど、一度たりとも考えてこなかったのだ。


あの中で地位を得るには、如何に周りを蹴落とし、自分の力を大きくみせるかが、一番重要なのである。


私たちは、そんな連中と今から戦争という舞台で勝負する。

今までの戦場は宮廷で、ランズデールは負けっぱなしだ。

ある意味、復讐戦であるといえよう。


私はうーん、と考えた。


敵は弱い。

だから楽勝だ。

もちろん、そんなことはわかっている。


だが、私は、こんな相手のために、大切な部下を損ないたくないなと考えたのだ。

敵が、自分の匂いで自滅する、カメムシみたいな輩であろうとも、目標を高く定めることはできるのである。


理想は、高く大きく持たなくては! そして、私は、ジークに提案することにした。

指で自軍の駒を弄び、地図上の戦闘予定地に配置する。


「ジーク、今回の作戦、戦死者ゼロを目指しませんか? 」


「ほう、可能か? 」


ジークが片眉を動かした。


私はにまりと笑み返す。

やってできないことはない! そして私達の挑戦が始まったのである。


クラリッサ「一応、説明しますと、キルレシオとは(敵の戦死者)÷(自軍戦死者)で戦力を数値化したものです。ここで自軍の戦死者がゼロになると、分子をゼロで割ることになるため、この数値が無限大に発散するのです」

ステイシー「要は、『敵が弱すぎて計測不能』って状態にしてやろうぜってことですわ」


◇◇◇


書籍版、二巻をリリースしました。


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おまけは今回も四本です。

・おしのび夫妻と皇子:アリシアと皇后カートレーゼがいちゃこらする話

・白薔薇騎士団とわたし:のっぽな女の子を、アリシアがプロデュースする話

・ステイシー日記:アリシアの日常

・パジャマのアリシア:アリシアとジークハルトのちょっとえっちな話

こちら、お手にとって頂けると幸いです。


注意

・分量が1.5倍ぐらいになったため、10円値上がりしております。

・初夜回の「アリシアと皇子」はわっふるしていないお話になります。エロの詳細は明日投稿予定のWeb版のみとなりますのでご注意ください。

・話し合いの結果、第60話は「書籍として出すと、どうでもいい議論になりそうじゃね?」と結論が出たため外しております。こちらはWeb版のみとなります。書籍には載せていませんが漏れではないです。


◇◇◇


P.S.

カメムシの表現は私のオリジナルではありません

なんで更新止めてしまったんや…

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是非、お手にとって頂けると嬉しいです。
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