指導者とわたし
わっふるをたくさん頂いたため、初夜のシーンについて頑張ってみました。
明日、月光に投稿する予定です。
題名:えっちなアリシア物語
投稿日時:11月29日 19:00
作者名:eromery
となっております。
あわせて、明日は本編の更新をお休みするよていです。
次は11月30日に投稿の予定です。
以上です。よろしくお願いいします。
「アデルちゃんてさ、おじさん趣味なの? 」
私の質問に、アデルは、一瞬きょとんとした表情を浮かべた。
それから、気がついたように破顔する。
私は、真顔を取り繕おうと頑張った。
ちょっとぷるぷるして、やっぱり我慢できずに吹き出してしまう。
いや、実は私が、友達の趣味を、知らないだけかもしれないじゃん?
当然、そんなことは無かったのだけれど。
「違うわよ。多分、アリシアとそう変わらないわ」
「ふーん、なら理想のお相手は、二十五歳だね」
「そうなの。随分、具体的ねぇ……」
アデルの唇が、からかうように弧を描く。
私は、人差し指で頬を掻いた。
うん。
察してくれたまえ。
私にとって、理想のお相手の年齢は二十五歳。
来月には、二十六歳に更新される予定である。
アデルは、ひとしきり笑った後、ゆっくりと冷たいお茶を一口含んだ。
「三十九歳と二十五歳のラベル様なら、若いラベル様に交際を申込んだと思う。でも三十九歳のラベル様と、その他の候補者なら、ラベル様がいい。そういうことよ」
「つまり、私のお父様がいいのね」
アデルはこっくりと首肯する。
それから、アデルは、真剣な面持ちで私を見返した。
「バールモンド家は、私が継がなければならない。侵略者達から、民と国を守るのが私の役目。でも私は戦えないわ。だから私と、私の領地を守ってくれる、強い伴侶が必要なの」
「でも、アデルより戦える男の人なんて、そうそういないわよ。アデルを守るって相当ハードル高くない?」
「もぅ、意地悪言わないでよ!」
私が一つの事実を指摘すると、アデルが拗ねたように口をとがらせた。
ごめんごめん。
私は、彼女に謝罪しながらも、ついつい笑ってしまった。
なにしろ、アデルは、バールモンド辺境伯の陣代として、既に武勲を挙げているのだ。
しかも馬鹿でかい武勲を、である。
その彼女を助けられるお相手となると、ハードルが跳ね上がる。
アデル自身も、つまらぬ相手は、お断りだろう。
それで、我が父に結婚を申し込んだわけだ。
なるほど、私は得心する思いだった。
アデルの初陣は、二年前だ。
蛮族を王国から叩き出した、次の年の戦役である。
王国の領主連合軍による北伐に、アデルは、前年の戦いで負傷した、バールモンド辺境伯の名代として出征することになった。
お飾りとはいえ、敵地への侵攻作戦だ。
アデルのお父様は、猛反対したらしいが、彼女は、私アリシアを引き合いにだして一歩も譲らず、最終的には、彼女の意思を通したのである。
北部領主諸侯の総大将は、陣代のアデル嬢、南部ランズデールの指揮官は私アリシアだ。
私達の父親二人は、面目無さで涙を流していたと、風のうわさに伝え聞いた。
この北伐では、最終的に、私たちは大規模な会戦で、敵軍を撃破することになる。
この時、領主連合軍の中央本陣を守っていたのがアデルだった。
彼女が指揮した兵力は、約一万。
ちなみに全軍の兵力は、は私の部隊も含めて、一万五千の陣容である。
全体の三分の二を指揮するのだ。
彼女は、紛れもない総大将であった。
敵軍と対陣した時、兵力的には、私達の領主連合軍が若干不利であった。
味方、約一万五千に対して、敵、約二万。
この兵力差は、大きかった。
戦闘開始からしばらくの間、アデルが率いる本隊は、二倍近い兵力の蛮族軍から力攻めを受けることになる。
数は力だ。
連合軍は一時的に、盛大に押し込まれた。
その時私は、右翼にいて、敵の側面を突くために迂回行動中だった。
一時的に崩されても、アリシアの側面攻撃が決まれば、その時点で勝利は確定する。
アデルを危険から遠ざけるため、将校たちは本陣の一時後退を進言した。
しかし、アデルはその提案を一蹴した。
「馬鹿を言わないでちょうだい」
そんなことより、正面を突破されれば、私の身も危ないのです。
主君を守る気があるのなら、こんなところにいないで、貴方達も前に出て戦いなさい。
そして、アデルは、強権を発動させて、本陣に詰めている部隊を全て、前線に投入した。
直属の護衛も全てだ。
細かい部隊の采配は、各部隊の指揮官に丸投げしつつも、最終的には、彼女の身辺警護がすっからかんになるまで兵力を供出したらしい。
あまり周囲を手薄にしては、御身が危険だと諫言されて、アデルはこう答えたそうだ。
「どの道、私は戦えないのです。万が一、私が討ち取られたら、死体を馬にでもくくりつけておきなさい。お飾りの役目ならそれで十分です」
それに、一度死んでいれば、もう絶対に死なないでしょう?
それからは、だれもアデルに逆らわなかった。
兵士たちは力戦した。
アデルのやり方に感動したというわけでは、もちろん無い。
彼らは、安心したのだ。
本隊が後退する場合は、自分も退かなければ敵中に孤立してしまう。
自分に逃げる気はなくても、指揮官が後退を指示する可能性はあるのだ。
押され続ければ、そのまま崩される恐れもある。
だが、総大将のアデルは、陣を死守せよと厳命した。
本人も一歩も下がらない。
であれば、その場にとどまって戦っても、置いていかれる心配はない。
要は前を向いて、戦えばよいのである。
ここ持ちこたえれば、アリシア率いる騎馬隊が、敵を撃破してくれるはずだった。
彼ら兵士は、槍先揃えて突き返し、乱戦でもみくちゃになりながらも、一歩も退かなかった。
結局、蛮族達は、アデルの守る本陣を攻めきれなかった。
戦況が膠着する。
そこに側面よりランズデール騎兵隊が突撃を加え、戦いの趨勢は決まった。
左翼を粉砕され、アデルと私の部隊に挟撃された蛮族軍は、指揮官を討ち取られて潰走した。
蓋を開けてみれば、完璧なまでの鉄床戦術だ。
鉄床戦術とは囮の部隊が敵を部隊の攻勢を引き受けている間に、側面、あるいは背後に回った部隊が敵を一撃して、トドメを刺す戦法の事である。
囮役の盾と、攻撃役の矛、両者の信頼関係があって初めて成立する作戦だ。
特に困難なのは囮役だ。
自軍にまさる敵部隊の攻撃を、一定時間、支え続けなければならない。
これを為したアデルは、戦後、勲功一等であるとして称揚された。
もちろん、私も彼女を推した。
「たまたまそうなっただけよ」
この評価を受けて、アデルはこともなげに言い放った。
笑わせてくれる。
私は内心で、彼女のあからさま謙遜を笑った。
たまたまな訳がない。
アデルは絶対にこうなると予測していたはずだ。
彼女は、初陣であることを理由に、かまととぶってみせただけである。
戦争に先立って、私はアデルに、軍を動かす方法や、兵隊の心理について、知る限りの情報を吐かされいていた。
状況を熟知したアデルは、一時的な劣勢と、敗勢とを区別した上で、部下にやるべきことをやらせたのである。
以上が、アデルちゃんの武勇伝だ。
デビュー戦の華々しさは、私などの比ではない。
まさに女傑である。
アデルは、我が家以上に過保護なバールモンド辺境伯をして、深窓の中に閉じ込めて置くことができなかった女なのだ。
そして、そんな彼女が、お婿さんに望むことは「私と皆を守ってくれる男の人」ということらしい。
なんという難易度の高さであろうか。
これはお婿さん大変である。
「他の若い人じゃだめなのかしら。こう、一緒になってから、二人で学んでいく、みたいな関係もありじゃないの? 」
「この間、お見合いで会ってきたわ。でもそのうち、私と言い合いになってしまって……」
そのお相手は、非力な小娘に、戦い方を云々されるのが勘に触ったらしい。
アデルは、自身では戦えない。
彼女の腕力は、見た目通りだ。
見た目詐欺の私とは違う。
故に、剣を振るっても、まともな戦いにはならない。
一応、魔力は強いのだが、使える魔法は「腐食」。
腐葉土を作ったりできるので、農家には重宝される。
アデルは「いらないわよ!」と叫んでいた。
私も、アデルの立場だと、ちょっとまっとうな使いみちが思い浮かばない。
悪くした牛乳を飲ませて、相手を困らせるぐらいだ。
アデルも、お相手探しは難航しているようだった。
彼女は、憤懣とやるせなさを混ぜたような表情でため息を吐く。
それから、表情を真剣なものに改めた。
「ラベル様なら、そんなことはないでしょう? それに、あの方の言葉なら、私も信じられるし、素直に従える」
アデルは続けた。
家を背負って立つことになる彼女の声音は、切実だ。
「ラベル様は、素敵な方だと思うわ。私みたいな小娘には、興味が無いかもしれないけれど、私は公の人柄と手腕をお慕いしています」
アデルが第一に考えるのは、彼女の家のことなのだろう。
父にとって、アデルが、どういう存在となるのかはわからない。
でも理解者という点に関して言えば、彼女以上の存在は、王国中探してもいないのではないかと思う。
男女の情愛とは違うけれど、これも一つの夫婦の形だろう。
父とアデルが結婚した場合は、お婿さんやお嫁さんいうより、共同統治者になりそうだけどね。
「わかったわ。お父様にそう伝えておきます」
私が請け負えば、アデルは胸をなでおろした。
安心したように微笑んで、それから私を上目遣いで見つめてくる。
やだ。
その媚びる目線はずるくない? アデルはおねだり気味に、口を開く。
「……ところで、私を応援とかはしてくれないの」
「えぇー」
私は曖昧に微笑んだ。
もちろん心情的には、アデルちゃんを応援したい。
でも、余計な手出しをして、やらかしてしまうと、とんでもなく恨まれそうなのだ。
あと、同級生を「お義母さん」と呼ぶのは、やっぱり心理的に抵抗があります。
父やアデルは、指導者として優れた見本であると私は思う。
私は父のことを尊敬しているし、アデルの考え方も見習わなくてはと思うのだ。
父とアデルは優れた指導者の見本だ。
では、その反対の見本もあるのだろうか。
答えはイエスだ。
しかもすぐ近くにいる。
それは、王都の連中である。
間もなく私たちは、その、上に立つものとしての悪い見本を、いくつも目のあたりにすることになる。
最初の悪い見本は、王都の騎士団長一家であった。
私は、父の執務室で、アデルの気持ちを彼に伝えた。
「そうか」
父は、言葉少なに、考え込んでいるようだった。
それからすぐ、ジークが幕僚を招集する。
王都を見張っていた斥候から、騎士団が、私達の囮部隊に食いついたと、連絡があったらしい。
作戦開始である。
会議室に詰めた私は、ジーク他、数人の幕僚たちとともに地図を囲んだ。
アデルも顔を出していた。
バールモンド家の陣代として、戦闘に参加するとのこと。
彼女の戦意の高さがうかがえる。
ジークが、王都の場所に、敵軍のシンボルを置く。
「騎士団が動いた。数は五千」
「予想より多いですね。どういうことなのかしら」
「アランとか言ったか、騎士団長の倅が、わざわざ兵力を増やしたらしい」
私は目を見張り、ジークは蔑むように唇を歪めた。
周りを見回せば、全員が同じ気持ちであるようだ。
やつら、本当の馬鹿だな。
いや、前から思っていたけれど、これほどまでとは思わなかった。
今回の作戦は、王都の兵糧を吐き出させるのが、戦略上の目標である。
ゆえに私達としては、出てくる兵力が多ければ多いほどありがたい。
おそらく限界いっぱいまで振り絞って、三千程度の見積もりだった。
その限界を自分たちから超えてきたのだ。
非戦闘員を含む輸送部隊を襲うのに、その五倍もの兵力を動員する。
まっとうな感覚の指揮官ではあり得なかった。
「この敵失について、経緯を説明したほうが良いか」
「はい、聞かせてください」
そして、報告書の写しが配られる。
この敵の愚行は、腐敗した政治力学の結果であった。
この期に及んで、未だに彼らは、戦争に勝つことより、宮廷の中での権力争いを重要視していたのだ。
今まで、王都の騎士団は、一度として、領主連合に勝利していない。
そもそも、まともな軍事訓練を施されていない騎士団は、王都から出撃できないでいるのだ。
戦闘にすらなっていない。
しかし、ここへ来て、弱兵揃いの騎士団でも、ようやく勝てそうな相手が現れた。
囮である、帝国軍の輸送部隊だ。
武装も貧弱で、数も少ない輜重隊は、彼らには恰好の獲物に見えたらしい。
王都の騎士団は、敵の罠を警戒する前に、手柄の奪い合いを開始した。
戦う前から勝った気になり、指揮官の地位を奪い合った結果、騎士団長の息子であるアランが、親の権力でその立場を勝ち取った。
ちなみにアランって、王太子の取り巻きの一人ね。
実は私もすっかり忘れていた。
「あのバカをぶん殴ったときに近くにいたじゃない」
と、アデルちゃんが教えてくれた。
すまん。
でも多分また忘れるから、そのときは教えてくれ。
このアランであるが、彼の父に似た男だ。
そしてこれより、私は騎士団長の紹介を始めたいと思う。
ただ、私と騎士団長とは敵同士だ。
故に私の評価は厳しくならざるを得ない。
公平を期すために、少し割り引いて聞いてもらいたい。
それぐらい、酷い。
アランの父である騎士団長は、宰相におもねって、その地位を手に入れた男である。
得意なことは、宮廷工作。
自分より有能な人間を蹴落とす技術に長け、国王と宰相のご機嫌取りが上手い。
粗野な男で、よく威張り散らしているが、実力の無さにも自覚があるらしく、自分の地位を守るため、逆らうものには容赦しない。
保身の技術はピカイチだ。
一応、剣術はおさめており、彼個人に関してはそれなりに戦える。
そして、剣以外の武器は扱えないため、それらの武器は、劣っていると言い立てて、騎士団員には剣技を訓練ばかりをさせている。
そのほうが、自分が威張れるからね。
特に弓などの飛び道具は、卑怯者の武器であるとして、下手に訓練などすると、いじめの対象になる。
故に王都の騎士団は、原則的に飛び道具は使わない。
というか、使えない。
騎士団長は、宰相の手先だ。
宰相からすれば、このぐらいの俗物のほうが、扱いやすかったのだろう。
実力から言えば、軍のトップはランズデール公だ。
騎士団長は、その父を追い落とすための手駒であった。
父が宮廷闘争で地位を追われてからも、宰相は、ランズデール公を排除しておく必要があった。
故にこの騎士団長は、戦争に出ることもなく、自身の地位を守りながら、宰相から与えられた職務を忠実にこなしてきたのである。
そして、そのミニチュア版みたいなのが、今回の敵指揮官のアランだ。
彼は、この騎士団長の嫡男である。
声ばかり大きく、上役に取り入るのが上手で、自分より強い人間や有能な人間へのやっかみがひどい。
逆に弱い者いじめが好きだ。
これだけ聞くと、嫌な上司のようであるな。
意外と世の中にいそうな気もする。
アランは父親譲りの小心者だ。
保身も上手い。
保身の技術に長けるということは、自身の能力も把握している。
いざ今回の作戦指揮官に抜擢されて、実戦経験の無い彼は不安になったのだろう。
アランは、出撃する部隊に、できるだけ多くの兵力を望んだ。
そして、限界を超えて、五千の兵力が動員されることになったわけだ。
ここまでで、お分かりいただけると思うが、王都の連中は、戦争を前提とした教育を受けていない。
王国の騎士団は、戦争のことなど、一度たりとも考えてこなかったのだ。
あの中で地位を得るには、如何に周りを蹴落とし、自分の力を大きくみせるかが、一番重要なのである。
私たちは、そんな連中と今から戦争という舞台で勝負する。
今までの戦場は宮廷で、ランズデールは負けっぱなしだ。
ある意味、復讐戦であるといえよう。
私はうーん、と考えた。
敵は弱い。
だから楽勝だ。
もちろん、そんなことはわかっている。
だが、私は、こんな相手のために、大切な部下を損ないたくないなと考えたのだ。
敵が、自分の匂いで自滅する、カメムシみたいな輩であろうとも、目標を高く定めることはできるのである。
理想は、高く大きく持たなくては! そして、私は、ジークに提案することにした。
指で自軍の駒を弄び、地図上の戦闘予定地に配置する。
「ジーク、今回の作戦、戦死者ゼロを目指しませんか? 」
「ほう、可能か? 」
ジークが片眉を動かした。
私はにまりと笑み返す。
やってできないことはない! そして私達の挑戦が始まったのである。
クラリッサ「一応、説明しますと、キルレシオとは(敵の戦死者)÷(自軍戦死者)で戦力を数値化したものです。ここで自軍の戦死者がゼロになると、分子をゼロで割ることになるため、この数値が無限大に発散するのです」
ステイシー「要は、『敵が弱すぎて計測不能』って状態にしてやろうぜってことですわ」
◇◇◇
書籍版、二巻をリリースしました。
機動強襲型令嬢アリシア物語2 ~始まりは渾身の右ストレート~
https://www.amazon.co.jp/dp/B077S1DPLV/
おまけは今回も四本です。
・おしのび夫妻と皇子:アリシアと皇后カートレーゼがいちゃこらする話
・白薔薇騎士団とわたし:のっぽな女の子を、アリシアがプロデュースする話
・ステイシー日記:アリシアの日常
・パジャマのアリシア:アリシアとジークハルトのちょっとえっちな話
こちら、お手にとって頂けると幸いです。
注意
・分量が1.5倍ぐらいになったため、10円値上がりしております。
・初夜回の「アリシアと皇子」はわっふるしていないお話になります。エロの詳細は明日投稿予定のWeb版のみとなりますのでご注意ください。
・話し合いの結果、第60話は「書籍として出すと、どうでもいい議論になりそうじゃね?」と結論が出たため外しております。こちらはWeb版のみとなります。書籍には載せていませんが漏れではないです。
◇◇◇
P.S.
カメムシの表現は私のオリジナルではありません
なんで更新止めてしまったんや…




